人斬り与太 狂犬三兄弟(1972年東映) | 映画バカ一代~観らずに死ねるか~

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東映ヤクザ映画の金字塔『仁義なき戦い』

シリーズの直前の深作欣二監督、菅原文太主演の

『現代やくざ』シリーズの最終作とされている作品。

この作品の評価で深作は『仁義なき戦い』の監督に

なったと言われる重要作とのこと。

狂犬三兄弟がタイトルだが実の兄弟ではなく、

義兄弟のようなもので、実際は三人目の三谷昇は

賭場で知り合っていて、早めに退場する。

菅原文太と田中邦衛の義兄弟は『仁義シリーズ』

の役柄を原点。

 

 

 

 

あらすじ

権藤(菅原文太)は組のため敵対する新政会の組長を刺殺する。

6年後出所した権藤を待っていたのは兄弟分の大野(田中邦衛)

だけだった。組長の村井(内田朝雄)に不満を漏らす権藤だったが

『時勢が変わった辛抱しろ』と言われて腐る権藤と大野。

やがて二人ははぐれヤクザの谷を巻き込んで売春宿を

立ち上げるが荒っぽいやり方に新政会、そして村井組からも

目をつけられることになる。やがて八方ふさがりになった権藤は

新政会のシマを荒らしたことにより、次第に追い詰めされていく。

 

重要な点

①内田朝雄:仁義なき戦いの金子信雄よりもまともな思考、性格の持ち主の組長。

②室田日出男:権藤の兄貴分で組の代貸し、何かと権藤と対立する。度胸はない。

③今井健司:敵対する新政会の武闘派で昔気質のヤクザ、権藤と張り合う。

 

良かった点

あまりにも壮絶な展開に主人公同様に観ているこちらも追い詰められて

いく臨場感は凄い。手カメラの撮影など仁義シリーズでも駆使された深作監督の

リアルな演出がとんでもない緊張感を作り上げている。

また前作『現代やくざ人斬り与太』で体を張っていた渚まゆみが今作では

セリフのない田舎娘を好演していて、前作と全く違う役柄には驚嘆させられた。

 

悪かった点

『竜二』『チ・ン・ピ・ラ』といった80年代のネオやくざ路線と

180度逆のギラギラした映像であり、深作監督が行き着いた

実録やくざ路線の一つのピークではないだろうか?

個人的には正直お腹いっぱいで、

しばらくやくざ映画は観なくてよいかも。