葉桜の静謐幹を昇る苔
不安定な天気でしたが、午後には晴れました。
二階屋の窓辺を覆ふ薔薇真紅
エスカレーター昇りしところ燕の巣
昼顔のまづ一輪の垣根かな
街路樹の緑陰直ぐに伸びゆけり
夏雲を突き切るやうにモノレール
新緑や手をつなぎゆく園児たち
座りては動かぬ園児夏の雲
噴水の水面を叩く音弾む
噴水の交響楽を奏でをり
噴水にひかりと音の和してをり
屋上の新緑ことに新しき
屋上の新緑風に弾みをり
屋上の紫陽花の色淡かりぬ
屋上に馴染みてをりぬ山紫陽花
雨後の庭園薔薇を引き立たす
下向きに直向きなりぬ花空木
卯の花やこころの扉解くごとく
卯の花や青空遠ざかりゆけり
卯の花や屋上をゆく風重し
卯の花に雲の断片取り付きぬ
紫陽花や木椅子に残る雨の跡
額紫陽花集合体として命
濃く淡く額紫陽花の宇宙かな
子が座りぐにやりと岩や夕薄暑
夏帽子こつちを見てはくれぬ吾子
木道の濡れたるままや山紫陽花
ガマズミの花や深山幽谷が
アヤメ咲く頭上過ぎゆくモノレール
一輪のアヤメの前に椅子のあり
屋上の庭とは知らず雨蛙
白といふ眩しきものや夏旺ん
水面に星のごとくに浅沙咲く