夏空を映さぬ都市の運河かな
天王洲アイルへ吟行でした。遅くなりました。
見上ぐれば夏空四方にビルの玻璃
街薄暑運河が区切るビルの群れ
網戸てふ暮しの音のする小路
夏めくや運河に沿へるカフェテラス
桟橋がつなぐ島々白日傘
夏蝶の運河の風に乗り来たる
板張りの歩道の音や夏燕
夏空の開けてウッドデッキかな
ひと雨に若葉の色の殊更に
ひと雨の過ぎて若葉のことさらに
ひと雨に明るくなれる若葉かな
新緑の色の定まる雨上がり
湾岸の歩道広々楠若葉
楠若葉柔らかく風いなしけり
雨上がり梅花空木の白さかな
雨上がりブラシの花の伸び伸びと
薔薇揺れて黒々として運河かな
薔薇白し運河音もなく流れ
白薔薇や運河に家を浮かせをり
薔薇咲かせ運河に浮けるホテルかな
見立て絵の大きな壁画夏空に
若葉風キッチンカーの並ぶ街
鉄柵の大きなゲート若葉風
ビル囲む小公園の若葉風
若葉光ビル一階にある八百屋
若葉光外へ重ねて置く弁当
風の歌奏でてをりぬ楠若葉
楠若葉樹下てふ風の柔らかさ
湾岸をゆく風梅花空木かな
運河ゆく風のままなる白薔薇