
古道はも胸に抱きて山眠る
山眠ると言う季語もいい季語である。
ちょうど山々は、そんな雰囲気になってきているのではないか。
甲州街道も青梅街道も鎌倉街道もみな、山懐なしには考えられない。
尾根をつなぎ峠をつなぐ道なのである。
鮟鱇や大海原といふ母性
今日の日を過ごす証の息白し
凍滝を登り詰たる男かな
凍滝にやはりカムイの宿りかな
屋根裏の音やむささび帰り来し
炉話の口癖なりし「バチ当り」
品売ればふところ温き懐炉かな
忘れ得ぬ人のごとくに帰り花
尾道の酒と酢牡蠣を愛しめり
角巻や単語ですます会話とも
夜神楽や三本杉の高き鉾
粕汁やシヤキシヤキと京野菜
風邪ははも地球規模では台風か
数え日の貨物列車の長さかな
門松を立てて昔は庄屋様
ひとひらも欠けぬ枯菊なりにけり