一穴の開き艶めく山の栗 昼酒や土産としたる栗おこわ なんとなくなにか急かるる暮の秋 鶏頭の燃へ移らむとする力 親友と異なる記憶古酒の酔 老媼にもありし華やぎ秋桜 秋海棠後を向ひてアツカンベー 笠雲の架かりし深山木の実降る 四本足歩行のむかしましら酒 実石榴や座敷で練習フラメンコ 猪垣の他は荒野でありにけり 粘力のありし雨降る黄落期 縄文の土器の欠片や秋耕す 悪友に説教されて新生姜 大木戸のありし新宿新松子 信置けぬものに根と幹黄落す