鬼獣妖塔 ~破壊という名の創造主~


 始めまして、あめブロ第二弾です。


12/6、連載開始致します。お楽しみに。ままん ご飯        


                    


ネコ

好評のうちに終了いたしました。

たまに過去記事を投稿していく予定です。


新作はまた、他サイトにて・・・。 

                              

                              


では、プロローグからご覧ください。

http://ameblo.jp/ootora8/entry-10174423334.html




                          ’09年1月13日

                               巳蔵風治




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終章、  生命 <いのち> (つわものどもが夢のあと)


               鳴り響く目覚まし時計。


               場面は職員室。ハッと目を覚ますさゆり。


校長    「お目覚めですか、桑原先生」


さゆり   「お父さん」


校長    「お、お父さん?オホン」

星      「サーピー、まだ夢ん中かい?」


藤井    「星先生、サーピーはまずいっすよ。校長の前で・・・」 


さゆり    「……ゼルム」


藤井    「?」


源八    「さゆりちゃんさゆりちゃん、大丈夫?」


さゆり   「え?え!?やだ……、私……」


ユキ    「コーヒーでも入れましょうね? 」


               皆の笑い―‐ ― 。


校長    「そうしてください。前田先生」


さゆり   「やだ、え―、じゃ全部、ゆめ?……うそ」


源八    「ハハ……、相変わらずだな、さゆりちゃんは」

星     「ちょうど一時間、寝てたよサーピー」


藤井    「徹夜でぺタ回り、土日だけにしましょうね」


               いっそうの笑い。


ユキ    「はい、夢見る夢子さん。濃いいですよ」


さゆり   「ありがとうございます」 



ユキ    「さ、先生たちも・・(と、皆に・・・)どうぞ」


               戸が開き、メグと律子―― ‐ 。


メグ    「源八、ちょっと来てよ、五十嵐と古屋が又揉めてんのよ」


律子   「もう、手つけらんなくて…… 」


源八   「う、うん」


星     「わしも行くかあ!」


               源八、星、律子、去る。メグ行きかけると、


さゆり   「メグ、お腹、大丈夫?」


メグ    「快食快便。只今妊娠三ヶ月…・、って、何言わすんのよさゆりちゃん、

       また寝ぼけてんの?漫才付き合ってる場合じゃないの。オジャマさん。

       (去る)」


校長    「やれやれ……。先生、顔、洗ってきなさい」


さゆり   「はい。(立って舞台中央へ)と、いうことでどうやら幕が下りそうです。


       良かった、旭川が無事で……。でも皆さん、いいですか。

       もしもあなたの学校にゼルムが来たらお姉さんを呼んでね。



       エイヤッーって退治してあげる。

       ウフ、キレイなお姉さんは好きですか?なんてね」


校長    「何やってんの、早く行きなさ―い!」


さゆり   「は―い。では、さらみ」


星     「(現れ)こら、わしのネタ、取るな」

源八    「先輩。(引っ張って)」

さゆり   「んじゃ、サバラまこと虫・・・。あ、オイラも行く(去る)」


ユキ    「(立って) 一応私も、救意箱必要かもしれませんので……。(退場)」



               残る校長と藤井。いや、クラッシュとゼルム。

               イミありに……。


クラッシュ 「では皆さん」


ゼルム   「ごきげんよう、ギッギッ…… 」


さゆり    「(来て)何?」


校長・藤井 「ウッソピョーン」


さゆり    「やっちめ―!」



                の号令で、生徒ら全員登場。ドタバタ。
                星もどさくさにまぎれて……。


源八     「せ、先輩……、あ痛……」


さゆり    「正義は必ず勝つ、以上!」




                音楽高まる中、幕――――。





                       一九九五年(平成七年) 十月 十日、

                                  高橋純悦、巳蔵企画プロ



あとがき


 今回の掲載にあたり、若干の加筆修正を致しましたが、

基本的には、13年前に書いたものです。


本日を持ちまして、戯曲「鬼獣妖塔」は完結です。

ありがとうございました。


では、少し早いですが、メリークリスマス。 HO! HO! HO!

                            タカハシ ヽ(゚◇゚ )ノ



十五、 トゥルーラブ


               恵、新たに購入したナイフをチェックしている。


               そこへ五十嵐のグループ見参!


伊達      「呼び出しくらわしてくれるとは上等じゃん」


五十嵐     「‥・ 」

牧野       「いい度胸してるよ」

五十嵐     「お前らは手出すな.。女に番張られていつまでも黙ってたんじゃな。

          俺様が最強を証明してやるぜい」


メグ       「・・・・」


五十嵐     「タイマンだ」


メグ       「ふ……、格好つけてくれてありがとよ、デブ。 お望み通り、刻んであ
          げるよ」


               メグのひと刺しをかわす身軽なデブ。


五十嵐    「(メグの腕をつかみ)グフフ……、チューしちゃお―かな―ハート)」


               メグ、決死の金蹴り!拾ったナイフを五十嵐のノド元に……。


五十嵐     「やっ、やめ……て」


メグ       「お前の一生終わらせてやるか、ああ―ん?」


五十嵐     「お、おいお前ら、何かギャグやれ」

伊達       「ようし。俺の名前は伊達! 」


牧野       「俺は牧野!」


伊達・牧野   「二人合わせてダテマキ!!(シャキーン)」


               シラ~。

五十嵐     「……後で殺す」


メグ       「その前に、お前の人生終わってんだよ」


声        「待ちな」


メグ       「?・・・ 」


                古屋、登場。


メグ       「フン、助けはいらないよ」
  


                古屋、メグのナイフを持つ手をねじる。


メグ       「!?な、何すん……、(!)」


                そのまま腹に一発くらい倒れるメグ。


古屋      「だらしねえぞ、五十嵐」

五十嵐     「スマン」

伊達       「さ―て、んじゃ、やっちまうか」

五十嵐     「おう、この間みたいにヤキソバンが来ねえよう、お前ら見張っておけ」


                牧野他二名、散る。苦しむメグ。


古屋     「……最初は俺にやらせてくんねえか」

メグ     「・・・くっ・・・」

五十嵐   「あん?…ホの字か、このチビに……」

古屋     「そんなんじゃねえ。只、もう一週間オナッてなくてな、たまってるだけだ」

五十嵐   「そりゃ体に毒だ。早くやんな一」

古屋     「フッ、10秒もありゃな」

五十嵐    「自慢になってねえっつうの」

古屋     「じゃ、行くぜい― (ズボンを下ろす)」

メグ      「げ、ゲンパチー!!」


                そこヘフラフラと源八現れる。


源八     「や、やめろ、やめるんだ」

五十嵐   「あんだこのお、死にぞこないが! (ケリ)早くくたばっちまえよ。

        (牧野らに)おらお前ら!どこ警備してんだ。ヤキソバン来ちまっただろ
        うが」


源八     「げ、 …・月光、仮面だ……」

五十嵐   「ふざけた先公だ。(踏み潰す)」


メグ     「!!や、やめ……、足、どけろよ、デブ……」


                星、ユキ―一。


ユキ    「どうしたの?」


星      「何事だ―!」

ユキ    「ふ、古屋君、何ですその格好は。早くブリーフも下ろしなさい」

古屋    「はあ―い。(!)」



                古屋、倒れる。さゆり、参上!


星      「さ―ピー、シャレんならんよ。ん?どうしてくれんの? (回し蹴り) 」


                さゆり、軽くかわして星に一撃!



メグ     「せ、先生」

さゆり    「・…。(五十嵐をにらみつける)」

五十嵐   「あ、ああ……。(源八から足をどかす)」


                さゆり、恵、源八の三人、いつにまにか囲まれている。


さゆり    「先生、大丈夫ですか」

源八     「!う、うわあ、(さゆりにおびえる) 」

さゆり    「先生!?」

メグ     「源八!」

源八     「くるな!来ないでくれ、う、う……。〈と、ユキの背後に隠れてしまう)」

メグ      「どうしちゃったんだよ。源八!」



声       「あ―あ、泣かしちゃった」


                両手に花状態のゼルム、登場―一。

                花はもちろん圭子と律子。斉藤もいる。


メグ     「圭子!律…・、斉藤、!あんた、あの時の」


藤井     「藤井です。君だけ、呪文唱えてくれなかったんだよね。いけない子だよ」



さゆり    「・・・・・」


メグ     「あなたが皆を……、あんたのせいね。戻してよ!早く皆を元に戻せよ、
        魔術師!」


藤井     「魔術師?う―ん、まあいいか。じゃ、君もその魔術で……」


               さゅり、メグの前に立つ。さゆりVSゼルム。(1分くらい立ち回り)



メグ     「(あまりの迫力に絶句)」


藤井     「ふん。ここまできて、そんな小娘一人食らう必要もないか。人質はもう

        十分いるしな」


さゆり    「(源八を見て)彼に何をしたの?」


藤井    「へ?」

さゆり    「あの人だけおかしい。何をしたの、ゼルム」


メグ    「ゼルム?」


藤井    「藤井です。お間違えのないよう」

さゆり   「ゼルム、教えて。どうすれば皆を助けてもらえるの」


藤井    「藤井」


さゆり    「……藤井、さん」


ゼルム   「フア、ハハーー、これが大魔覇極の力。人の魂を、人の記憶を自由自
        在に操る。全ての行動は、彼らそのものの人格として永久に残る。

        覚めない悪夢……」


さゆり    「そんな……」


ゼルム   「さゆり、人間って残忍な生き物だね」


さゆり    「?・・・・・」


ゼルム   「その男も、この子供たちも、皆、喜んで昔の仲間たちを痛めつけている。

        魂を操っても性格はあらわれるんだ。人間っていやらしい生き物だよ。


        

        理性っていうのかな?表面では皆、善人ぶっているけれど、心の中
        なんてこんなもんさ。……その男、戸崎とかいったっけ、彼には、

        君に対する恐怖の記憶を与えたんだよ。


        

        君は彼にとっては、この世で最も怖しい存在としてしか映らない。



        戸崎は本当に優しい性格だったんだね。

        どんなに怒りの心を植えつけても暴力はふるわないんだ。



        ……君があの時、特別なおまじないをしたせいかな……」


さゆり    「‥‥‥」


メグ     「??・‥」


ゼルム   「ま、どうでもいいや。こういう人間もいたんだね。理解できないけれど。

        ま、優しいっていうよりも、単なる弱虫なだけなのかな、ギッギッ・・・・・・」


メグ     「……違う。ちが―う!源八は、源八先生は、弱虫なんかじゃない!!」


さゆり    「メグ」


メグ     「源八は、源八はいつも、どんな時だって正面から私たちにぶつかって
        きてくれたんだ。



        どうしようもない不良で、年少まで行った私のことだって真剣に見ていて

        くれたんだ。だから、だから私、源八だけには素直になれたんだっ。



        こんな、こんな素敵な先生が弱虫なはずないわ。

        悪魔め、あなたのせいよ。源八の、友達たちの術を早く解いてよ―!



        (源八の方へ行き)先生、源八!どうしちゃったんだよ!いつもの源八に

        戻ってよ!


        もっともらしいことを堂々と、又私たちに説教してみせてよ!何だって
        源八の言葉だったら受け止めてやるよ!……」


さゆり    「メグ、あなた彼のこと……」


メグ     「好きなんだよ!私、源八のこと好きなんだよ」


ゼルム   「好き?そういう感情って、あまりよく理解できないや。やれ」


               星、五十嵐、メグを引き離す。



メグ     「放せ、放せよバカ‐― 一」


ゼルム   「アハハ……、愉快々々、あらエッサッサーッと」


さゆり    「やめて―!」


                しーン。


さゆり   「もう、もう終わりにしてゼルム、あなたの望み通りにするから……」


ゼルム  「本当?」


さゆり   「(うなずく)」

ゼルム  「じゃ、僕にキスして」


さゆり   「,・・・・」


              ゼルム、律子らを解放する。


ゼルム   「さ。さゆり早く。僕たちは夫婦なんだ。人間って夫婦でなくてもキス
        くらいやるんだよね」



              メグ、ナイフを腹に!


さゆり    「!!メグ!!バ……、何てことを!!!……」


メグ     「だめ、だよ、さゆりちゃん。いったじゃん先生、妥協するなって、

       負けちゃダメだよ。こんな奴に……、源八が、源八が可愛そうだよ……」


さゆり    「もうしゃべらないでメグ、血が、止まらな…‥」


              ユキ、スカーフを破き応急手当て、……。



さゆり    「・・・前田先生…… 」

ユキ     「・・・  」


ゼルム   「バカな、何の真似?(ユキに)君々、そんなこと僕願ってないでしょ、やめなさい」


さゆり    「本能よ、人間にはね、何者にも屈することのない強い本能があるのよ。

        意識なんかなくったってそれは働く。愛するものがあれば・・・」


ゼルム   「愛?わからない。人間界には分からないことが多すぎる」


さゆり    「ゼルム、それはあなたが愛を受けたことがないから」


ゼルム   「痛い、頭が割れちゃうよ、助けて」


さゆり    「楽になりましょう、もう……(キス)」


ゼルム   「……。 」




               皆の術が解ける。



星      「こ、これは……。!長谷川!どうした」


ユキ     「先生、シャツ脱いで。(男子らに)君たちも、早く!包帯つくって」

星      「源コロ」

源八     「はい、先輩。長谷川、しっかりしろ」


圭子     「メグー、どうしちゃったのよ―」


斉藤     「いや―一」

律子     「しっかり!長谷川さん」


さゆり    「あなたたちを守るためにメグは……。メグ、ガンバレ、皆、術が解けたわ。

        あなたのおかげで・・・」


ゼルム   「そんな、そんな……、これが……、こんな……」


さゆり    「藤井さん」


ゼルム   「え!?」


さゆり    「私、あなたと共に生きてもいいわ」


ゼルム   「な、何?・…‥何で・…」

さゆり    「さあ、・・・。

        でも、あなたに対する憎しみとか恨みとか、引き受けてみたくなったのかな」
        
ゼルム   「・。・・・・」


さゆり    「許すわ、何もかも」


ゼルム   「許、す?……。なんだか胸のあたりが熱い……」



声      「そこまでだ!」



               さゅり、ゼルム以外の人間止まる―一。


               Drクラッシュ‐― ― ― 。


Drクラッシュ 「さゅり、全てはこれにて終わった」


さゆり     「……お、父さん」



                和子―一。


さゆ     「お母さん!生きて……」


和子     「(ほほえみ)」


                ガイヅマ‐― ― ― 。


Drクラッシュ 「ゼルム! 」


ゼルム    「ギー ッ」


Drクラッシュ 「いや、ジーザス……」


ゼルム    「はい。主よ」

さゆり     「!?」



Drクラッシュ 「この役、よくぞ全うしてくれた」


ジーザス   「いえ、

         ……二千年前、私は人々に約束したのです。必ずまた来る(再臨)と。



        人類始祖の過ちによって始まってしまった、この人間の歴史。

        その節々に、歴史を正す使命をおびて生を受けてきた偉人聖人たち。



        だが、この二千年という壁はあまりにも厚く、一歩間違えれば取り返しの

        つかないところまで来てしまっていました。そう、破滅という……。



        そんな時、選ばれた人間がもし道を誤れば、それは歴史の終焉を意味する

        ことになります。正直にいえば、このわたくしにも重い荷でありました」


さゆり    「・・・・・・」


ジーザス  「しかし、どうやら峠は越えたようです。もう私の役目は終わりましたね」


Drクラッシュ「うむ御苦労だった」


ジーザス  「はい。では、これにて……」


さゆり    「!藤井さん」


ジーザス  「(振り向き)ありがとう、さゆり。君のような人間に出会えたこと、
        僕は誇りに思っている。(去る)」


さゆり    「・・・ジーザス……クライスト、・・・」


Drクラッシュ「…… マリア、では我々も……」


さゆり    「マリア?お母さん、いったい……」


マリア    「私はあなたの母親です。いつまでも……」


さゆり    「(去りかける二人に)お父さん!」


Drクラッシュ「心配するな。全てはお前の心の中で起こった出来事」



               いつのまにか、メグや源八たちの姿はない。


Drクラッシュ「お前の心が正しいことを願うとき、それはきっと、必ず成就される」

さゆり    「お母さん!」


マリア    「またね、さゆり。さようなら・・・、」


               二人、去る。



ガイヅマ   「・・・・・・」


さゆり    「あなたは… … 」


ガイヅマ   「・・・・一」


さゆり    「……サタン……、いえ、堕天使、ルシファー‐・・・。あなたを元の天使
        に、天上に送り届けるるまで、人間は頑張らなければならないのですね」


               ガイヅマ、後ろを向く。


さゆり    「あまりにも長い、気の遠くなるような年月を……。もうじきです。

        もうすぐ新しい時代が始まります。だからあなたも、もう少しの間……」



               ガイヅマ、去る。暗転―――― 。




      

十四、 母 の 愛


         「たすけて,」「苦しいよ―」「熱い……」「寒い、寒いよ 」
         「えーん、ママ、どこにいるの?サッちゃん怖い」


                ・・・等々の響き。

                スポット、さゆり――。

                その姿は十歳当時、セーラー、おさげ、・・・。


さゆり    「えみ、よっちゃん、木場君、どこ、どこなの?皆、どこにいるの 」


                ズゴゴ……、という爆音――。


        「皆― !!」



                静寂――。


ゼルム   「さゆり、待っていたよ」

さゆり    「!よくも……よくも!!イヤ――!!」


                響音!!


ゼルム   「今の僕には、君の能力はもう通じないよ」

さゆり    「なぜ、何のために……、何でこんなことするの」

ゼルム   「時代は変わるんだよ。悪魔の時代が来るんだ。

        今までのはほんのお遊び。本番はこれからなんだよ。


        さ、君も僕たちと一緒にやろうよ。仲間なんだから・・・」


さゆり    「ふざけるな!私は悪魔なんかじゃないわ!

        (念波砲の構え)消えなさい、ゼルム」


長谷川   「悪魔」

さゆり    「え?」

古屋     「悪魔」

さゆり    「古屋君……」

源八     「・・・・・・」

さゆり    「源八、信じて。私は……」

源八     「アクマー‥ 」

さゆり    「!……フフ……、そう。私はサタンの娘・・・。この世の支配者よ!

        アハハ…―。なんでよ、何でこんなことに、私が何をしたっていうのよ。

        お父さん、私ずっと、いい子だったじゃない。

        何でこんな意地悪するの、教えてよ―」


和子     「さゅり…… 」

さゆり    「!お母…・、あ―ん」

和子     「さゆり、泣かないの。お前は強い子だったてしょ」

さゆり    「何で、何で死んじゃったの、お母さん」

和子     「見守るためよ」


さゆり    「えっ」

和子     「お母さんの魂は、いつでもあなたのことを見守っているわ。だから負
        けちゃダメ」


さゆり    「もう疲れたよ。戦いたくない。勝てっこないよ、お父さんなんかに」

和子     「・・・・・」

さゆり    「旭川、故郷、皆……何であんなこと……、よっちゃんも木場君も、…
        …なんで……」

和子     「甘えんぼさんね」

さゆり    「だって… 」


和子     「人間界の秩序がこんなにも狂ってしまったのは私たちのせいじゃない
        のよ。全て人間のせいなの。だからお父さんは涙をのんで……、

        

        仕方なしにやっていることなのよ。ノアの時と同じ……、

        お前にだって分かるでしょ」


さゆり    「……本当に悪魔の時代を創るつもりなの、お父さんは……」

和子     「(首を振って)本当の、真の人間の時代を創るのよ……」

さゆり    「(離れて)お母さんも、今の時代が滅びればいいと思っているのね」

和子     「さゆり……」

さゆり    「今の時代が滅びるのなら、私もこの時代と共に滅びます」

和子     「(ビシッ) 」

さゆり    「!‥‥‥・?」


和子     「よく、もう一度よく考えて、この時代が大切なのなら」

さゆり    「え?」

和子     「お母さんが何故、身を賭してお前に力を貸しているのか」

さゆり    「お母さん」


和子     「死ななければ、死ぬことによってでしか、お母さんはお前に力を貸し
        てあげることはできない。そしてそれは、この時代を続けて欲しかった
        から・・・」

さゆり    「・・・・・。」


和子     「私の肉体に触れることはもうできない。けれど心は……。さゆり、

        あなたの心に真実に生きて……、

        私の叫びはあなたの叫び。あなたのせつなさは私の……」(消える)


さゆり    「・・・お母さん」


                 優しい光り、しばらく・・・。


                 暗転―― 。


十三、 さゆり 25 (ヴァンサンカン)


                教室にひとり、さゆり―――。

                そこヘメグ―――。


さゆり     「長谷川さん……」


メグ      「… … フン」

さゆり     「……無事だったのね、よかった」

メグ      「スカシてんじゃえよ。私のことキライなんだろ。それよか、

         何であんたここにいるんだよ、3Bだろここ。・・・あ、そうか、

         五時限目数学だったんだ」

さゆり     「・・」

メグ      「ちょうどいいや。

         誰もいないし。ナシつけようぜ。ムシャクシャしてんだよね。今」


                 さゆり、立つ――― 。

                 メグ、 一手二手三手!無抵抗のさゆり。


メグ      「なあんだ、あんたもハンパ者か、がっかりだよ。」

さゆり     「先に手出したの私だからね。・・・」


メグ      「関係ねえよ、今ケンカ売ってんの、こっちなんだからよ」

さゆり     「……そう。じゃ。(!!)」




                  メグ、ふっとぶ―――。


さゆり     「あ、・・・?」

メグ      「いいパンチ持ってんじゃん……」

さゆり     「一応、番張ってたんで、昔」

メグ      「上等!」

さゆり     「(かわす)」

メグ      「・・・不足なし。(オリャ‐―)」


                 暫しやり合って。―――。



さゆり     「まだやる?」

メグ      「。・。・・・」

さゆり     「先生、疲れたんだけど、もう」

メグ      「ヤニ、食ってるからだろ、勘弁してやるよ」

さゆり     「……保健室行く?前田先生たぶんいらっしゃらないだろ
         うけど、先生、薬探してあげるから」


メグ      「平気だよ。あ―、でも強いね。女子プロ並なんじゃねえ、」



さゆり     「ゴルフ?」

メグ      「プロレスだよ。私ももう少しタッパあったら女子プロ行ったんだけれど・・」


さゆり     「へえ、・・・」


メグ      「なに和んでんだ、あたし・・・」


さゆり     「私、若いころの井上貴子に似てるってよく言われんのよねえ」


メグ      「、なんだ、結構詳しいんじゃねえ、意外に・・・」


さゆり     「…でも、喧嘩なんかしたのレディース卒業以来よ……」


メグ      「族、やってたんだ、どうりで・・・」


さゆり     「旭川キュロット、知ってるでしょ」

メグ      「知らない」


さゆり     「……旭川、皆……」


メグ      「?、でも、まだまだ若いね」


さゆり     「さっきババアって言われたけどね、誰かさんに・・」

メグ      「おお怖、執念深いんだ。じゃ……、ババギャルにまけとくよ」



さゆり    「そう、サンクス」


              

               二人、なごやかムード‐――― 。


さゆり     「……ぶっちゃけた話し、あなた、好きな子とかいるの?」

メグ      「な、何だよ急に、いねえよ、んなもん」

さゆり     「本当?」

メグ      「い、いねえって言ってんだろ一」


さゆり     「バラシちゃおうかな、どうしようかな、……」

メグ      「何だよ」

さゆり     「やっぱまずいよね」

メグ      「何だよ」

さゆり     「うちの古屋君どう思う?」

メグ       「?はん、童貞君」

さゆり     「え?」


メグ      「あ、いや何でもない。古屋が何? 」

さゆり     「え、うん、独り言。やっばり言うわけにいかないもの」


メグ      「もう言っちゃってるんですけど・・・」

さゆり     「えー、あ、そう。分かっちゃった」


メグ      「アホらし」


さゆり     「あ、でも私から聞いたなんて言わないでね。古屋君に怒られるから」


メグ      「……別に、いいよ。

         どうせ、今日、告られたし、アウトオブ眼中だし……」



さゆり     「え、そうなの?な―んだ、そうだったんだ。で?ふっちゃったんだ」


メグ      「べ、別にふっちゃいないけどさあ……」

さゆり     「古屋君、可愛そう」


メグ      「何か楽しんでない?」

さゆり     「え、まさか、担任よこれでも。(ムフフ)」


メグ      「鬼」


さゆり     「付き合う気は? 」



メグ      「お、大きなお世話だよ、おせっかいだな案外。だからババアっていわれ
         るんだよ。…あんたは、彼氏とかいるの?」

さゆり     「いないのよね―、これが」



メグ      「源八どう?うちの」


さゆり     「と、戸崎先生? そ、そうね、源八ね。好きかも」


メグ      「え―」

さゆり     「え、でも、そういうアレじゃなくて、その、そう、戦友みたいな、アレね」


メグ      「そっか」

さゆり     「何?」

                   間―――。



メグ      「……先生」


さゆり     「えっ」


メグ      「聞いてもいい?」


さゆり     「?何」


メグ      「うわさなんだけどね、言いたくなかったら別にいいんだけど、

         やっぱ自分で確かめとかないとスッキリしないから」


さゆり     「?」


メグ      「……、昔、子供堕ろしたって……」


さゆり     「・・・・」


メグ      「あ、やっぱいい、ごめん」



さゆり     「・・・・・・本当よ」


メグ      「そうなんだ・・・・」


さゆり     「ゲンメツ?」


メグ      「分かんない」


さゆり     「源八先生、知ったらきらいになるねきっと、私のこと」


メグ      「……さあ、でもショック大きいかもね。嫌いになるかどうかは源八の
         ふところ次第。


         でも源八だってさ、やることはやってんだろうから、     

         女にばっか理想を求めるってのはやっぱムシがよすぎるわよね」

さゆり     「古屋君は求めたの?」


メグ      「は?」

さゆり     「あなた、バージンでしょ?」


メグ      「な!いやだ。古屋なんかと一緒にしないでよ」


さゆり     「体験していれば偉いとか、

         未経験だから恥ずかしいとかっていうのはただの幻想。


         そういう考え、ナンセンスだと思うなあ。別にいいじゃない。 

         一番いけないのは妥協しちゃうことね。


         焦って、どうでもいい男にあげたりなんかしたらダメよ」


メグ      「だから処女じゃないってば。勝手に決め付けて一人盛り上がるの、

         あんたらしいったらそれまでだけど・・・」


さゆり     「違った?そう。ハハ……」


メグ      「ハハ…… って、・・・源八とお似合いかもね」


さゆり     「(背伸びして)あ‐あ、何か食べにでも行こうか?ひとりで授業受け
         ても面白くないでしょ?」


メグ      「あんたでしょ、それは。何食うの?」



                  ガャガヤと二人退場―――。

                  入れかわりにDrクラッシュ―――。


Drクラッシュ 「・・・敵を取り込む。さゆりの奴め、なかなかやりおるな。

         しかし、闘うことによってではなく、

         愛することによって敵を屈伏させることが果たしてできるかな。


         己の最も憎むべきものを許し愛する。

         それ以外に悪魔を倒す方法はない。

         この最終試練、さゆりよ、見事に越えてみろ。それが父の願いだ。…‥」



                   

                   暗転―――。


   

   

十二、  スケ番メグ Ⅱ


                  駆け込んできて、


メグ       「ったく、何で逃げんだよ」

源八      「・・・・・・」

メグ       「五十嵐のヤツ、私、4発もやられたんだよ。ゼッテー殺す!

         ナイフ返せ!」

源八      「落ちつけ、長谷川」

メグ       「何でよ!」


源八       「いいから。(抱きとめて)」


メグ       「そんな図体しててよ、ケンカもできねえのかよ。失望したよ」


源八      「……確かに先生は、人を殴ったことなんてない。軟弱者かもしれない
         ・・・・。」

メグ       「浪花節はもう聞き飽きたんだよ。ナイフ返して!

          一人で蹴り付けて来るから・・・」
        
源八       「いいからもう少し聞け!……悔しい気持ちはわかる。しかしな長谷川、

          全ての人間が、お前みたいに強いわけではないんだ」

             

メグ      「説教すんじゃねえよ。聞く耳持ってねえよ」


源八      「多くの子は、いや、子供に限らず人間は、闘うことをあきらめてしまう・・・。 

          ・・・戦いたくても怖くてできない。やり返したいという気持ちはあっても……」


メグ      「泣き寝入りなんてガラじゃないね。やられたら10倍にして返す。

         それが私の信条なんだ」


源八      [・・・・・・」


メグ      「もういいだろう。別に手なんか借りなくたっていいよ。ナイフさえあれば

         あんな連中、私一人で……」


源八      「……先生、前いた学校でな、中学だったんだけれど、……生徒に一人
         死なれてるんだ」


メグ      「!・・・」


源八      「男子、だったんだけれどな。先生、まだ教師なりたてで、張り切って
         はいたんだが、右も左も分からず気持ちだけ空回りしてたんだな。


         その子の本心まで見てあげることができなかった。

         

         いじめなんて先生が子供のころだってあったさ。でも、それで死んで

         しまうほどあいつが悩んでいたなんて……。甘かったんだな。


         でも甘いじゃすまされない。

         彼は、もうどんなことがあったって生き返ることはないんだから」

メグ      「・・・・・・」


源八      「話しは変わるけど、さっきクラスの皆、様子おかしかっただろ。

         あれの原因が分かったんだ。


         やはりお前の言っていたように、ある者によって、いや、はっきり言って

         しまおう。さっき校庭で会った藤井という男によって、

         術をかけられていたんだ。



         つまり五十嵐も伊達も、あれはあいつらの意志じゃないんだ。分かるか。

         みんな犠牲者なんだよ」


メグ      「・・・・・・」


源八     「それでも行くか、・・・」


                  メグ走り去る―― 。


源八      「・・・・・・」


声       [み―つけた一」


                   藤井‐―― ‐。


源八      「!お前は……」


藤井      「さゆりから聞いたみたいだね、僕の正体を……。

         なら、説明する手間も省けたね。(指パチン)」


                   星たち、ゾロゾロ……。


源八      「……畜生、皆を、生徒らをどうする気だ!」


藤井      「大丈夫。殺すことが目的じゃないから。

         君のことも殺したりしないから、怖がらなくてもいいからね。


         あ、それから術にもかけないよ君だけは。

         そのかわり、極限の苦しみを味わって貰うけど。でもなんでかなあ・・・、


         さっき君にも術かけたはずなんだけれど・・・、まっ、いっか」


源八      「なぜ、なんなんだ。何のためにこんなことを。お前の目的はなんだ」


藤井      「いじめ」


源八      「!?」

    
藤井      「な―んて、くだらないことは、人間のやることだよね。

         僕の目的は僕が生きること。こうしなきゃ僕が消されちゃうんだ。


         だから仕方なくやってるんだよ。許してね。

         でもせっかくやるんだったら楽しんだ方が得だもんね。楽しませてよね」


                   星、五十嵐、古屋、 一斉に源八を襲う。


ゼルム     「ギッギッ……、愉快々々、あ‐らエッサッサー…… 」



                   源八、倒れる。


ゼルム     「……さゆり、勝負だよ。ギッギッ……」



                   暗転‐―― ‐。




十一、 スケ番メグ


メグ     「(TEL)……え、……うん、それじゃ二時にポポロの前でね、。 (切
        る)バー カ、誰がいくかよ、スケベジジイが」


               五十嵐、伊達、牧野、その他……


メグ     「(フン)」

五十嵐   「シカトとはごあいさつじゃねえか、長谷川。この人数みてビビッたの
        かよ」

メグ     「ナメんじゃないよデブが。お目覚めか」

五十嵐   「何のことだ、チビ』

メグ     「チ……、てめえ……」


五十嵐   「フン、光リモンがなくちゃ何もできねえのかよチビスケ、さらっちま
       うぞ。 どうすっか、この女」


伊達     「マワしちまうべよ」


五十嵐    「グットアイディア」


                 牧野、逃げようとする恵を捕まえる。



五十嵐    「逃げてんじゃねえよ― (バシッ)」


メグ      「やめろよ、このヤロー一」


伊達     「気のつええチビだぜ」


五十嵐    「こいつの泣く面拝むまでは、気おさまらねえな」


メグ      「誰が泣くかよ、デブ豚あ」


五十嵐    「(バしッ!)


メグ      「いてえな、叩くなよ」


五十嵐    「(ビシ) ・・」


メグ      「やめてよもう」

伊達      「お、やめてよだってよ、こいつ、もうじき落ちるぜ」

五十嵐    「そうだな。(ビシッー) おら、五十嵐様お許し下さいっていってみろ
         よ」

メグ      「・・・・」


                「月光仮面」のイントロ――。


歌・・      「♪どっこの誰かは、知らないけれど―、誰もが皆、知っている……♪
         う―ん、なぜ歌手になれなかったのかが不思議なくらいだぜ」



メグ      「!  おせえよ」


源八      「(登場)五十嵐、感心せんなあ。多勢に無勢いうんはノーグッドだな。             

         男のケンカは常にタイマンであるべきだ。

         それこそが男同士の戦いにおける最高の美学ではないかと、先生は思うぞ」

メグ      「私、女……」

伊達     「ジャマすんのかよ、オッサン」

源八     「オ?オッサン?君々、それはちととばし過ぎでしょぅ、仮にも私は君た
        ちの担任……」

伊達     「うるせー んだよ、カッパヤローがよう」


源八     「(ピキーン)伊達君、それをいったらこの温和な先生も怒っちゃうよ」


五十嵐   「相手するぜ」


源八     「……、あ、UFO仮面ヤキソバンが飛んでるぞ!

        (古すぎてすいません)」


                 男子生徒たち上を見る。


                 そのスキ――。しかし、誰も追おうとはしない。


五十嵐   「・・・・・」


声      「ムー・・・ ルバインガー……」


                 星、ユキ、圭子、律子、斉藤、古屋、そしてゼルム――。


ゼルム   「さゆりをとりまく主だった人間たちはほぼ手中に収めた。しかし、

        あの戸崎という男、どうしたものか……」

星      「殺してしまえばよろしいかと…… 」


ゼルム   「ん? フフ……。君、人間のくせに生意気だね。僕に意見するんじゃな
        いよ。(!!)」

星      「ウギー(ドタッ) 」


ゼルム   「……殺すのは簡単なんだよ。でもね、それじゃ意味がないんだ。そう、
        あの男には、死よりも辛い苦痛と恐怖を与えてやる。そうすればさゆり
        もあの男を救うために、その魂を我に傾けるであろう。ギッギッ……。

        (星に)立ちなさい。君は人形のくせに意志を持ちすぎてムカつくけれ
        ど、まだ使えそうだから働かせてあげるよ」



                  暗転――l。



十、 ク レ イ ジー

                  茶店――。


メグ       「雨、あがったな」

古屋      「うん、出るか?」

メグ       「もうちょっといよう。うち帰ったってどうせやることないし」

古屋       「どっかいくか?」

メグ       「金もないくせに、ナマいってんじゃないよ」

古屋      「……お前、こうして見ると結構イケテルな一」

メグ       「口説いてんじゃないよタコ」

古屋      「案外ラッキーだったな、この事件。オメーとデートできたんだからな」


メグ      「ガキか。中ボーだってお茶位でよろこばねえぞ」


古屋      「俺はプラトニック派だからな。純なんだよ」

メグ      「ひょっとしてあんた、童貞君?」


古屋      「わ、悪いかよ」


メグ       「別に」


古屋      「俺は、 一番好きな女とじゃなきゃヤラねえんだ一」


メグ      「・・・・。」


古屋      「お前は・・・(言いかけるがやめる) 」


メグ      「私はやるよ、誰とだって。金さえくれれば・・・・、」


古屋     「(とっさに) ハゲでもか?」


メグ      「ノープロブレム」


古屋     「そうか……」


メグ      「(立って) あ~あ、ヒマだヒマだ。・・・」


                恵、退場。

                古屋ひとり残って、コーヒーを飲み千す。


                そこへ律子と圭子――― 。


古屋     「……お前らB組の……」


律子     「おごってよ」


古屋     「え?」

圭子     「いいじゃない、ね。メグばっかズルイわよ。ずっと見てたんだから」


古屋     「お前ら、催眠術にかかってたんじゃないのか?」

律子     「催眠?何それ」


圭子     「ちょっとやめてよ、バカバカしい」

古屋     「正気、なのか」


圭子     「スイマセーン、チョコパフェひとつ」


律子     「クリームソーダひとつ」


古屋     「お、おいおい……(財布を見て) そんなに持ってねえぞ」


圭子     「いいでしょ、ね、あとでいいことしてあげるから……」


古屋     「い、いいことって?」

律子     「さあ……」


古屋     「ほ、本当にいいことしてくれんだな。よ、ようし、おごってやろうじ
        ゃん」


圭子     「何だかんだいって、オスなんてこんなもんよ」


律子     「プラトニック?笑わせてくれるよ、昭和とおり越して大正かってんだ」


古屋     「!?ど、どうしたんだ急に」


圭子     「皆さ―ん、こいつ変態です。気をつけて下さあい」


古屋     「!、ちょ、ちょっと待て……」


圭子     「触んなよ、気持ち悪いな、童貞」


古屋     「・・・。・・」

律子     「いやだ、何すんの―ちょっとすみません、 一一0番お願いします」


古屋    「ま、待て待て、どうしちゃったんだよ、俺、何もしてねえじゃん」


               そこへ星――。


星      「どうした!」


圭子     「あ、星先生、古屋君がエッチなんです。童貞のくせに」


古屋     「関係ねえだろ!」


星      「貴様は黙っとれ! (圭子らに)それで?」


律子     「私たちにひどいことしようとしたんです。とても口では言えないよ
        うな・・・・」


圭子     「とにかく、頭のてっぺんから足の先まで全部いやらしいんです。

        何とかして下さい」

古屋     「・・・・・・」


星       「そうかそうか、それはいかんな。古屋、顔がいやらしいのはしょうが
        ないが、気持ちまでいやらしくなってしまっては人間じゃないぞ。

        サルだぞ。うん、サルだなお前は。(ビンタ)

        どうした、何とか言ってみろ。何も言えんのか。そんなにワシが怖いんかい!


        (ヒザ蹴り)ふ……、いいんですよ皆さん、こいつは人間じゃない。

        サルなんですから。いや、ヘビだな、ゴキブリだな。


        こんなものは死のうがどうしようが、
        この世の中にとって何の支障もありませんから。どうぞこの私に任せて
        おいて下さい。オラッ! 」


古屋     「ウウ……、た、す……」


                圭子、律子の笑い声―― 、暗転。



   
     

九、 誤 算


               源八、メグ、古屋、駆け込んできて、



メグ      「……源八、疲れた。もう走れない」


古屋      「俺も…‥ 」


源八      「……とりあえず、ここまでくればもう大丈夫か」


古屋      「源八っつぁん、どういうことなんだよ。説明してくれよ」 


源八      「ん一」


メグ      「催眠術よ」


源八・古屋   「え!」

メグ      「私、本で読んだことがある 皆、集団催眠にかけられているのよ」

源八      「う―ん…… 」


古屋      「うなってばっかいねえてよ、源八っつぁんの意見も聞かせてくれよ」


源八      「先生、こういう分野苦手でなあ……古文なら誰にも負け・・・」


メグ       「古屋、C組で最近何か変わったことなかった? 」


古屋      「別に、思い当たりねえよ」


メグ      「・・・」 


古屋      「何か解決方法ねえのかよ」


声        「私に一案あるのですが…・・・」



                  藤井――。

源八       「あ、先生……」


メグ       「誰」


源八      「産休の藤井先生だ。でもどうして先生こんなところへ……」


藤井       「ええ、私もちょっと校内の異変に驚きましてね。とにかく外へ出た方
          が無難かと思ったんですよ」

源八       「それじゃ他の……、二年棟も…… 」


藤井       「ええ。二年塔はおろか、 一年、職員室までも……。たぶん、ここにい
          る我々四人だけではないのでしょうか。この難から免れた人間は……」

メグ       「‥・・・・」


古屋       「そんな……、でも何で俺は、……そうか、三時限日、屋上でふけって
          たんだ。それで助かったんだ。たぶん」


                  ゲンコツ。


源八      「で、先生、何かいい案がおありとおっしゃいましたが……」


藤井      「ええ、実は私、実家がお寺でしてね。真言密教なんですけれども、

         小さい頃からいやいやながらも修行を受けてきまして、

         ある力を身につけたのですが……。


         今からその力を皆さんにも分けますので、四人で東西南北の方から、

         集中的に念を唱えるのです」


古屋      「そんなこと、俺らにできるっつうの?」


藤井      「うん、僕がいればね」


メグ      「・・‥・・」


源八      「それで、何と唱えるのです」


藤井      「ムールバイガーズンボロガンザ・・・」


古屋      「ム、ムール……」


藤井      「ムールバイガー……」


源八      「ムールバイガー……」


藤井      「さ、君たちも。ムールバイ・・・・、ちょっと急用を思い出しましたので
         失礼」


                藤井、去る。  さゆり――。


メグ      「(ガン見)」


源八     「桑原先生」


古屋     「さゆりちゃん」


さゆり     「今ここに、皮ジャンの男、いませんでした?」


源八     「藤井先生のことですか?」


さゆり     「藤井?……ええ。藤井先生どちらへ行かれました?」


古屋     「あっちへ、急用だって……」


さゆり    「オウケイ。(去る)」


源八     「……ムールバイガー、な、なんだ、ややこしくて忘れちまったよ」


メグ     「アホらし。源八、私、家帰るね。いいでしょ」


源八     「あ?ああ、そうだな。気いつけて帰れよ」


古屋     「俺も」


源八     「そ、そうか。じゃ古屋、長谷川のこと途中まで送ってってくれんか」



メグ     「いいよ。ガキじゃあるまいし」


                 雷――。


メグ     「私が送ってってやるよ、フルチンマン」


古屋    「あ、ああ。わりいな(二人退場)」


源八    「ふるちんか、旨いな」



                 雷!雨……。 ユキ、傘を持って、


源八    「あ、すみません前田先生」


ユキ    「先生、おひとりでどうなさったんです」


源八    「え?いや……」


ユキ    「桑原先生のこと考えていらしたんじゃありません?」


源八    「え!?どっ、どうしてそれを……。ハッ、先輩のおしゃべリヤローめ・・・・・・」

ユキ    「ウフフ… … 」


源八    「先生、言わんで下さいね、皆に・・。・・と、ところで先生、何ともないんですか」


ユキ    「何?」


源八    「え、校内で集団催眠が蔓延していると聞いたのですが……」


ユキ    「催眠?何ともありませんよ。見てのとおり。そんなとぼけたことおっしゃって、
       こんなところでよろしいんですの。授業さばったりしていて」


源八    「そ、そういわれると……。あれ、あ―っ、そうか。あいつら俺のこと

       ハメやがったのか。催眠術とか何とかいって、ただフケる口実として、…
       …五十嵐らもグルだったんだな…… 」


ユキ    「・・・・・・」


源八    「いや、先生スイマセン。すぐ戻りますので……」


              そこへ星‐‐―― 。いきなリバンチ!


源八    「な!?何すか、先輩」


星     「俺の女と何いちゃついてんだ、こヽら」


ユキ    「(突然、泣きだし)先生、私、無理矢理、……」


源八    「!?}


星     「てめえ! 」


               源八、ボコボコ――。



源八    「せ、先輩、ち、ちが……。(倒れる)」


星      「……女王様、では・・・」


ユキ    「フフ… … 」


               星、ユキの傘を持って、二人退場。源八、立ち上がり、


源八     「な、なんで、こんな……」


               さゆり― ―‐。


さゆり    「……。(発見)!先生、どうしたの」

源八     「く・・・、  ハ ハ ・・ ・・・、ちょっと、何でもないから」


さゆり    「ひどい。すぐ手当てを……」


源八     「大丈夫大丈夫、こんなもん、学生時代は日常茶飯事だったから……」


さゆり    「まさか、うちの古屋?」


源八     「違う違う、……先輩とちょっと」

さゆり    「!(術か・・・) こんな雨の中で、空手の稽古ですか」


源八     「チッチッ・・‥、空手ノーね。バーリトゥードあるよ」


さゆり    「おかしな人」


源八    「・・・くッ・・」


さゆり    「(応急を終え)よし、とりあえず完璧」


源八    「さゆりちゃん、俺……」


さゆり    「え?」

源八    「いや、それより藤井先生は?」


さゆり    「逃げられたわ。……そのことでひとつ、先生に話しておきたい事
        があるの」


源八     「何? 」


さゆり    「あの男は、藤井と名乗っている男は、・・・どうしたの? 」


源八     「フッフッー…、ムールバイガー……」


さゆり    「源八、まさか‥‥」


源八     「ギエー 。(さゆりの首を締める)」


                うすれる意識の中、その手を払い、腹に一発!

                倒れた源八に口づけ・・・。



源八     「ウ、ウーン。ど、どうしたんだ」



さゆり    「・・・・」


源八     「!?さ、……桑原先生、どうしてここに……。あれ?俺、何で……。

        そうか、先輩に・・・。あ、そういえば先生、藤井さんのこと‥…。知り合い?」


さゆり    「源八、さん・・‥」


源八     「・・・・」

  
さゆり    「歩ける?肩かそうか?」


源八     「何のこれしき。(立つ)あ、でもゃっばし、かりちゃおうかな~」

さゆり    「ハイハイ、ょっこらしょっと」


                 さゆり、源八、退場。 藤井――。



藤井     「・・・誤算だ。戸崎を襲わせたことは誤算だった。さゆりの心があの男に・・・。

        何とかせねば・・・。所詮、世界を手中に収めようとも、さゆりひとり物にできなくば、


        私は消されてしまうのだから・・・。

        何としても、どんな手を使ってでも、さゆりの心を我に・・・」


                 暗転――。



八、 怒りの標的


                 静まり返った3B―― 。そこへいつものように源八――。


源八       「キーン、ドッカーン。ウホホーイーアラレちゃんだ。(お面かぶって
          いる)」


                 しーン~。



源八       「(面をはずして)……俺としたことが、恥ずかしすぎるぞ‥…。まあ
          ここは何事もなかったことにして平然といくか。


          え―、では万葉集ページフィフティーワーン。ハハ……」


                 源八、半回転。と、背に『51』のアップリケ。

                 バッティングポーズも空しく・‥―。振り子打法のサービス。


                 シーん~。


源八       「しまった……。もう取り返しが……」


                 ガラッと戸か開きメグ。


メグ       「ヤツホー 。(『セーラームーン』のコスチュームで)・・・授業さぼる
         とおしおきよ」


源八「      おお。(感激)天は我を見離せじ…… 」


メグ       「(席につき回りに)いや―、さっきは私もさ、ちょっとどうかしてた
         のよね。アレだったのよアレ。デブ、お前の考えてることだよ。・・・?

          アレ?何か暗いねあんた。ジョーク通じなくなっちゃった?ジョークル

          ―カス、なんちゃって、ね、圭・・、皆・・・、源八!皆、変」


                  古屋、駆け込んできて、


古屋      「源八っつぁん、ちょっと来てくれ。うちのクラスが、皆おかしいんだ! 」


源八      「古屋、長谷川、来い!」



                   三人退場。


                   保健室のベットに鎖でつながれているさゆり。



さゆり      「う、う~ ん、(目が覚め) !!こ、これはどういうことですか。星先生、
          悪い冗談はやめて下さい」


星        「ムールバイガ ー‥一」


さゆり      「―その呪文、まさか……」


                  ユキ、注射器を持って‐―‐ 。さゆり、ビンチ、そこヘ!


ガイツマ     「ヒョヒョ――」 


さゆり      「!!」


ガイツマ    「恐るべしゼールム。滅びてもなおその術は解けぬか。いやはや大魔覇
         極とはよくいったものだ」


                 ガイツマ、ユキと星を眠らせる。


さゆり     「誰、お前」


ガイツマ    「サタンの娘、お前の父から、お前を消すようとの意志を受けた。我が
         名はガイヅマ。宇宙最強生命大魔覇極ガイツマ」


さゆり     「・・・ 」 

ガイツマ    「女、貴様がいかなる能力を持とうと、この俺は倒せまい。なぜなら俺
         は大魔覇極……」


さゆり     「アハハ・・・」


ガイツマ    「何を笑う」


さゆり     「ちゃんちゃらおかしいのよヒヨッ子が。・・・サタンの、大魔王の名に
         おき命ずる。このクサリを断ち切りなさい」


ガイツマ    「女、誰に向かって……、?何!手が……」


                 ガイツマ、鎖を断ち切る.


さゆり      「(立って)さーて、次はどうして欲しい?」


ガイツマ    「ヒュー‥ ・・」


さゆり      「念波砲で百の肉片にしてあげましょうか‥‥」


ガイツマ    「ま、待って… 」

さゆり      「いや」

ガイツマ    「こ、交換条件といこうじゃないか。お、俺は只、命令を受けただけな
         んだ」

さゆり      「だれに?私の父さん?」

ガイツマ     「いや…… 」

さゆり      「じゃ、誰なのよ。(きつく) 」

ガイツマ    「あ、あ・・・」


星        「僕だよ」


                  星、ユキ、立つ.


さゆり      「星、先生」


                  ゼルム「僕だよ。さゆり」


ガイツマ    「まさか・・・」



                  星の背後からゼルム――。



ガイツマ    「カーッ、い、生きていやかったのか……」

さゆり     「?」


ガイツマ    「な、何で生きてるんだ、不死身なのかお前」


ゼルム     「(無視して)さゆり、 一緒になろう。僕の子供、産んでくれるね」


さゆり     「気安いはね。あんた随分。なれなれしいのよ」

ガイツマ   「こいつだ、女、こいつがな、北海道を沈めたんだ」

さゆり     「!!」

ゼルム    「・・・・」    

さゆり     「お前が・・・・・」


ゼルム     「又会おう。(去る)」


ガイツマ    「女、俺と組まねえか。な、役に立つだろう。奴のことなら俺あ何でも
         知ってるんだ。弱点だって何だって な、だから俺を‥‥ 」


さゆり     「(笑み)破!」


                 苦しみ消えるガイツマ。


                 さゆり、星とユキに軽く一発ずつ――。


さゆり     「……逃がさない。あの男、絶対に・‥」



                  ――暗転。



七、 教職


メグ      「ほっとけよ。関係ないだろ!どうせ源八だっであの女の味方だろう。

         ・・・いつだって一人でやってきたんだ。 いい格好すんなよ」


源八     「・・・長谷川、話したことあったかな。俺昔、こうみえて漫画描いていたんだ。

        すぐあきらめちゃったけどな。


        通信教育ってやつ、教材買ったり。家貧乏だったけど、買ってくれてナア。

        子供心にも、無駄金使わせちまったこと、後悔した。


        友達にすごい絵のうまい奴がいてサ、その影響かな」


メグ     「・・・」



源八     「・・・そいつも結局プロにはなれなかった。

        まあさ、何でもかんでも思い通りにはいかないよなあ。


        でも、可能性はあるんだよ。


        子供のどこにどんな可能性があるのか、それを見つけるのが生きがいだから

        って、・・・、おふくろよく言ってた」


メグ      「・・・」


源八     「一人モンの俺が言っても説得力ないかも知んないけど、

        でも、3B、18人そういう風に俺は見ているぞ」



メグ      「うん。・・・お母さん、死んだの?」



源八     「いや、ぴんぴんしているぞ。 東北の山奥で事業が成功して

        長者番付にも毎年出てるんだよこれが・・・、ハハハ・・・」



メグ      「電池代、仕送りしてもらいナ」



源八     「ハハ・・、ただ、気がかりなのは例の放射能・・・。それに、次は青森が標的、・・

        あ、すまんすまん、ハセ坊にする話じゃなかったな」


メグ      「17はもう子供じゃないよ」



源八      「そうか、そうだな」



メグ      「……何か調子狂う。 でも、あの女何が気にくわないのか知らないけど

        ぶたれたんだ。絶対許さない。源八がいくらフォロー したってだめ。

        私、執念深いんだ」



源八     「俺は別に桑原先生の肩かつぐつもりはない。ケンカ大いにけっこう。

        けどヤッパはやっばまずいな。没収だ」


メグ      「(出して)つまらないシャレ」


源八     「ハハー‥、それからひとつ言っとくぞ。今のシャレでも分かるとおり、
        教師といえど頭の中身なんてお前らと大差ない。


        17は確かにこどもじゃないかもしれない。けど、20になっても、30過ぎても、

        大人じゃない人間もたくさんいる。だから、多少のことは多めに見てやってくれ」



メグ      「ホウラ、やっぱり肩もってんじゃん」


源八     「ノンノン。・・・誰だって間違いは起こす。そして自分に非があると気づいたならば、

        たとえ大人でも子供に頭をさげなければならない。


        が、しかしだ。悲しいかな頭では分かっていても、

        やっぱ見栄とか何とかちゅうもんがあってな……」


メグ     「いいよ,分かってるよ理屈なんか。自分で決着つけるよ。ガキじゃないんだ」


源八     「ガキに見えるけどな」

メグ     「なにい―」

源八     「スンマセ ン」


メグ     「バーカ、立ちなよ。みっともない。大の男が」


源八     「先生のチンチンはいつも立ってるぞ」


メグ      「さよなら。(去る)」


源八      「あ、すまんすまん。ジョークルーカスだ。あれ?先輩のギャグがうつ
         ったかな」


               退場。


               さゆり、現れ  。


さゆり      「・・・・・・」


星        「(現われ)桑原君」


さゆり      「あ、主任」


星        「ちょっと来てくれたまえ」


さゆり      「‥‥‥」


                二人退場。


                ガイヅマ      。




ガイヅマ    「今の女が、サタンの娘‥―。フン、勝てる、勝てるぞ。

         ゼールムを倒した俺だ。サタンだろうと神だろうと恐るるに足らん。フフ……、


         これほどとはな。大魔覇極の力恐るべし。フィアもオードルもいらん。

         世界制覇などこのガイヅマ様だけで十分よ。ヒョーヒョー。


         念のため、サタンの娘サュ‐りだけ消しておくか。ヒ、ヒ、ヒヒョーイ」



                 暗転   。