Chapter2 「お隣さまは、放課後プリンス」 | *.・・Another Sky・・.*

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よろしくでーす☆

・・・・・・音楽が聞こえる。


なんだっけ、この曲。あ、携帯のアラームだ。


あぁでも、もう少しだけ。このまま目をつむっていたい。


・・・・・・・心地いい夢。大空にかかる、七色の――・・・・・。



「泉穂!いいかげん目覚まし止めなさい!」



お母さんの怒鳴り声で、虹は泡のように消えていった。


パチン。



「まったくもう。若い娘がせっかくの日曜に、なさけない」



あたしはヌボーッとした動作で体をおこす。


携帯のアラームをとめて、習慣的にメールをチェックすると、新着が一件あった。


【ごめーん。昨日の夜から熱でちゃって。今日キャンセルいい?】



送り主は、一緒に遊ぶ予定だったモカだ。


あたしはすぐに返事を打ち始める。


【そっかぁ~~(汗) 大丈夫?心配だぁ。お大事にね♪】



「・・・・よく言うよ」



低くぼやきながら、送信。


メールってウソがつきやすくて便利だよなぁ、お互いに。


布団の上に投げるように携帯をおいて、ベッドをおりた。


そしてあくびをしながら、カーテンを少しだけめくり、お隣をのぞいてみた。


昨日、あの男の子がいた窓。


・・・・今日は閉じてるんだ。


実はあれは夢でした。って言われれば納得できちゃう気がする。


夢オチ。しょーもないあたしの人生にピッタリじゃん。はは。


あたしはカーテンを閉めて、部屋をでた。


一階に下りると、リビングからお母さんと弟の声が聞こえてきた。


「ノゾム~。これ、お隣さんにもってってくれない?」


「え~。今ゲームやってんのにぃ」


「ちょっとはお手伝いしなさいよぉ。――あ、泉穂」


ドアを閉めたあたしに、お母さんの目キラッと光る。



「ちょうどよかった。あんたにお願いするわ」


「・・・・は?」



隣の家を訪れるなんて、何年ぶりだろう。


おすそわけのチーズタルトを持ったあたしは、ドキドキしながらチャイムをおした。


いや、ちょっと待て、あたし。ドキドキする必要とかなくね?全然なくね?うん、ない。


つーか、さっきからチャイム鳴らしてんのに、おっそいなぁ。もしかして留守なのかなぁ。


いっこうに開かないドアとにらめっこしながら、あたしはさっきのお母さんとの会話を回想した。


『あの、さぁ。お隣さんといえば、昨日、知らない男の子を見たんだけど・・・・』



家をでる直前、しらじらしくそう尋ねたあたしに、お母さんは口をあんぐりとあけた。



『知らないって、あんたねぇ。お隣の長谷川さんち、この春から娘さん夫婦が同居始めたのは知ってるでしょ?』


『え、うん』


『その子供も一緒に越してきたこと、前に言ったじゃない』


『・・・・そうだっけ』


『あきれた』


あたしも自分であきれた。


言われてみればたしかに、そんな話を聞いた・・・・きもするけど。


でも、ご近所さんのことなんか、ほとんど気にしてなかったもんなぁ。


『――アキ君よ』


唐突に、お母さんが言った。


『え?』


『あんたが見た男の子の名前。娘さん夫婦の一人息子の、橘 アキ君』


初めて耳にしたその響きが、すとんと胸に落ちた。


たちばな、あき。


開かずの窓から突然現れた男の子。あたしに、とびきりキレイな虹を見せてくれた――・・・。




――ガチャン、といきなり目の前でドアが開き、あたしはハッとわれに返った。


「あ・・・・・っ」


ドア板のむこうから現れたのは、橘 アキ本人だった。


「こっこんにちは!隣の、南ですけど・・・っ」


うわぁ、大失敗っ。思いっきり声うらがえったし。


「はい?」


舞い上がるあたしとは裏腹に、彼は無表情で小首をかしげる。


その顔があまりに美しすぎて、危うくブッ倒れるとこだった。


なにこの破壊力バツグンの美貌。新手のテロか?普通のイケメンなら今まで見たことあるけど、キレイすぎてビビるレベルなんて初めてだ。


磨きぬかれたガラス細工みたいな目鼻立ち。


うらやましいくらい華奢な体。


片手でつかめちゃいそうな小さい頭を、薄茶色のネコっ毛がふわっと包んで・・・。


って。見惚れてる場合じゃねーし!


「あのこれっ、チーズタルトなんだけど」


「・・・」


「もし、よかったら・・・・・」


「・・・」


「食べ、て・・・ください」




続く