「・・・・あれ?」
ふと、いつもとちがう光景に気づき、あたしは立ち止まった。
・・・・お隣さんちの、2階。
ちょうどあたしの部屋の向かいに位置するその窓は、365日カーテンで覆われ、死んだみたいに静まり返っている開かずの窓だ。
それが、開いていた。
誰かいる・・・・・。
知らない男の子が、窓の縁に手をついて遠くのほうを眺めている。
サァサァと雨音だけが響く中、あたしは魅入られたように彼に見惚れた。
誰・・・・?
てゆうか、なんてキレイな子なんだろう。‘ビモクシュウレイ‘って、あぁいうのを言うんだきっと。
顔のパーツ全部、怖いくらい整ってて。ちょっとでも手荒に扱えば、すべて壊れちゃうんじゃないかってくらい繊細で。
・・・・・・なに、見てんのかな。
あたしは彼の視線を追って、傘をさしたまま体ごと後ろを振り返ってみた。
「・・・・・うわ・・・・・・」
瞳に飛び込んだのは、光と色彩。
遠くの空で雨が止み、金色の陽がさしていた。
「・・・・キレー・・・・・」
そして、その光の中。くっきりと弧をかく――七色の虹。
あぁ・・・・いいな。なんかいいな、こういう景色。
美しいものを見たのなんて、いつぶりだっけ。
あたしの世界も、こんな色に塗り替えられたら最高だろうなぁ・・・。
瞬きもわすれて見惚れていると、少しずつ雨音が小さくなり、やがて止んだ。
開いたままの傘をおろす。まぶしい光が顔に降りそそぎ、キラキラの水たまりにあたしが映った。
あたしはもう一度、お隣の2階を見上げた。
そこにはもう彼の姿はなくて。
空色のカーテンだけが、静かに微笑むように揺れていた。