『ボードレール』 テオフィル・ゴーチエ
ボードレール/国書刊行会¥2,592Amazon.co.jpゴーチエはボードレールより10歳年長。既に文壇の重鎮だったゴーチエに、ボードレールを尊敬し、裁判沙汰になった時には庇護を求めたりした関係。でも、『悪の華』なんて書きながらも、ボードレールはいつまでたってもゴーチエに対しては頭が上がらなかったのか、他人行儀だったのか、という関係みたいだ。そんなボードレールが若くして死んでしまい、彼に対する追悼文としての「ボードレール評」をゴーチエが書いたのが、この本の前半に収められている文章。ボードレールという詩人をざっくりと説明するものである以上に、ゴーチエの詩人としての、芸術家としての姿が浮き彫りになるとても興味深いもの。 例えば、ボードレールがいかほどに、デカダンスの詩人であるかという説明を、読んでいると、はっとする。このデカダンス文学、言語についての説明、1884年くらいに、誰かがぱくってるな絶対。つまり、ボードレールはデカダンス作家だったなあ、と振り返る文章が、デカダンス文学の定義を作っている感がある。とはいえ、一読しただけでは十分に分からない。この本の後半は、膨大かつ丁寧な訳注。19世紀の文学に関心のあるものにとっては一つ一つの注がすごく面白い。たんなる訳注の領分を越えて、主観を強 く押し出した注になっていて、そこが特に読み応えがある。 ゴーチエもボードレールに匹敵するほどの猫好きだったらしい。やはり、19世紀のフランスの詩人で出来る奴はみんな猫が好きだ。 ともかく、訳注がどんな文学史よりも勉強になる。