『『失われた時を求めて』交響する小説』 牛場暁夫
『失われた時を求めて』交響する小説/慶應義塾大学出版会¥2,592Amazon.co.jpそんなに肩肘張らずに読める本。プルーストの『失われた時を求めて』はなが~い、から密かに全体を貫くテーマとかが見えにくい。この本は、「響き続ける声」「恋人アルベルチーヌ スワン夫人」「料理女フランソワーズ」「芸術作品が促すもの」などといったテーマごとに、小説全体を貫く縦糸を見せてくれるものだろう。 そんなに深く突っ込まずに、さらっと次の話に移る文章が多く、研究書というよりも、「失われた時」の中級入門書みたいな位置づけにも思うが、その分、もうちょっと詳しく考えてみたいなって思えるポイントをたくさん見つけることが出来そうだ。 料理女フランソワーズは、とっても粗野で召使いの癖に態度でかいし・・・で、困ったおばさんってイメージだったんだけれども、「料理」という点に注目すると、まさかのまさか、語り手の芸術創造へのヒントを出し続ける存在であったそうな。(結果としてということだと思う。) 語り手は象牙の塔に籠って芸術作品を書いた、のではなく、フランソワーズの作る天才的な料理、恋人の文学的目覚め、母親が改変しながら読み聞かせるサンドの小説などによって、いわば周りに「作家」にさせられたとも読める のだな。