『薔薇とハナムグリ シュルレアリスム・風刺短篇集』 モラヴィア
薔薇とハナムグリ シュルレアリスム・風刺短篇集 (光文社古典新訳文庫)/光文社¥1,037Amazon.co.jpこれはかなり読みやすく、誰が読んでも楽しめる本。だからといって、面白くない本だと言いたいわけでもなく、かなり面白い。 シュルレアリスム・風刺というテーマで、イタリアの作家、モラヴィアが1930~40年代に書いた短篇を集めたものみたいだ。といっても、ブルトンやアラゴンみたいな本物のシュルレアリストが書くような文章ではない、荒唐無稽な状景をリアリスティックに描くことでシュールさを出す作風で、意味不明の単語のぶつかりとかはない。 やはり風刺短篇が主体だろう。だが、イタリア、両大戦間、どう考えても作家が自由に物を書ける時代ではない。だから、主人公を薔薇に潜り込む(セクシュアルに)ことを拒絶しキャベツにひそかに突入して恍惚に浸るハナムグリにしたり、釣られた後の「いけす」という世の存在を議論する蛸にしたり、と人間が一歩引いた位置で観察できるような主体に託している。 とはいえ、風刺短篇という、枠に収めるのもどうかとも思えてくる。別に全体主義国家を打倒しようとかいう強い意図を感じさせるわけでもなく、むしろ全体に、大騒ぎしている人間も、どっかからみたら こんなみみっちい存在なんだっていうシニックな見方が根底にあるように思う。というよりも、大戦間という時代がまともな良心を持つ人間で死にたくなければこういう形での社会参加しか出来なかったというべきか、戦後は政治家しているようだし。 とりあえず、ものすごく読みやすい。