既に妻が書いたとおり、月曜日から胃ろう造設のための入院が決まった。診察前後のことなど、最近のこぼれ話をいくつか書いておこうと思う。

■胃ろうに関する先生との温度差
ALSに関する情報に日々接していると、胃ろう造設は、比較的「軽い」手術と錯覚してしまう節がある。

・胃ろうはたいていのALS患者が行うもので、早期に行っておいた方が安全
・胃ろうを作っても以前どおり口から食べられるし、保険のようなもの
・手術に要する時間は10分から20分くらいで簡易
・気管切開に比べれば、悩む必要はあまりない

そういう感覚でいるものだから、入院も、さっとすませたいなどと考えてしまう。ところが消化器内科の先生は、

「胃に穴をあけるわけですから、消化器系の手術の中でもかなりリスクが高い部類に入ります。」

とおっしゃった。そうなのか。

「出血、腹膜炎などの恐れもありますし、多くは内視鏡治療で対処できますが、場合によっては開腹手術が必要な場合もあります。
手術中に他の臓器を傷つける恐れもあります。少ないですが死亡例もあります。」

と言って渡された説明書には、死亡例9件(0.01%)と書かれていた。なるほど言われてみればそうか。

ところで、もう一つ気になることがありますと言って、手術中の呼吸のことを尋ねてみた。バイパップをしながら手術を行う場合もあるそうですが、妻の場合は大丈夫でしょうか?

「奥さんは鼻と口を覆うマスクを使っているので、装着しての手術は行えません。呼吸器なしで手術を行います。しかしもし呼吸が十分でない場合には、挿管して送気する場合があります。」

挿管!!?
気管切開ですか!!?

「一時的に管を入れますが、術後に取り外します。」

切開でなく、鼻から管を入れるという意味の挿管のようだ。焦った。

またその後、看護士さんから説明があり、胃ろう造設後の経管栄養の注入は、段階を追って丁寧に行うときいた。そのため入院も一週間くらいはかかるのだそうだ。

胃ろうから食物を注入すると、下痢などを起こしやすいらしい。通常、口で咀嚼して唾液が混ざった状態で届くべき食物が、ダイレクトに胃に注入されるから、びっくりするのだろう。まず白湯を入れ、受け付ければ次へ…といった形で一週間かけて注入を慣らしていくらしい。

少々胃ろうのことを軽く考え過ぎていたようで、考えを改めさせられた。

■吸引ジプシー
最近の妻は1~2時間ごとに1回、吸引器で痰を取っている。そのため長い時間外出すると痰がたまって辛そうだ。

今週は、胃ろう手術を控え、月曜日と金曜日に市民病院で検査や診察を受けたので、あらかじめ時間がかかると踏み、吸引器をカバンに入れて持ち込んだ。

検査の合間の待ち時間に、病院の中でコンセントを借り、痰を吸引する。最初は、受付の人に事情を話してコンセントを借りていたが、検査室や診察室をあちこち移動し、その度に別の場所でコンセントを探しているうちに、いちいち断るのが面倒になり、次第に勝手にコンセントを借りるようになった。

問われたら答えればいいし、病院という場所柄、痰の吸引をしていても咎める空気はない。また、待合付近のあちこちにコンセントがあって尋ねるより目で探した方が早い。

結果、吸引器をカバンで担いで車椅子を押し、コンセントを探して移動する吸引ジプシーになっていた。とはいえ、若干気が咎める。ジプシーでなく定住したい。

月曜日の経験のあと、カー電源をACコンセントに変換する機器を通販で買った。試してみたら吸引器は問題なく動作し、車の中で痰が取れるようになった。

外出時の吸引問題がやや解決した。

■神経内科と消化器内科の連携
ALSの診察は、神経内科で受けている。しかし胃ろうの手術は、消化器内科の範疇だ。

主治医は神経内科なので、今回の入院は神経内科の病棟で行うことになった。手術にも神経内科の先生が立ち会ってくださるそうだ。

ちなみに胃ろう造設後、経管栄養摂取をどの程度までできるようにするかなども、神経内科の主治医が指示する形らしい。なかなか複雑だがまあそれは良いとして。

診察を終えて会計をしているときに、ハタと気づいた。いつも、入院前には入院申込書などを書き、説明を受けるのだが、今回はその手続きをしていない。

妻を車で休ませ、吸引器をセットしておいて窓口に尋ねに行くと、案の定、入院するための事務処理が行われていなかったようだ。神経内科で入院するのに、消化器内科で診察を受けるというややこしい手順であったために連絡が漏れたのだろう。事情を話し、手術の説明書を見せて、なんとか手続きしてもらった。

連絡調整の漏れについては、僕自身しばしばしており、そうなってしまう気持ちもわかる。事前に気付いたから良しとしよう。


ごたごたとこぼれ話を書いたが、妻の身体に手術が加えられる心配が、最大の関心事だ。本人の不安が気になる。

手術の無事と今後の病状安定を、心底から祈る。