オフィスの近くに美味しい洋食屋さんがあってよく行きます。
先日の昼かなり早めに行ったのですが、すでにほぼ満席。一つだけ空いていたカウンターの一番端の席に通されました。
そのカウンターは端2席が内側に向かってゆるいカーブになっていて、私の座った一番端の席からは横一列に座った人たちの様子が見えます。
注文した「カキフライとエビフライ定食」を待つ間、カウンターの人たちの方に見るともなく目を向けた時、一人おいた隣の席の女性が目につきました。
50代くらいでしょうか、着ているもの、お化粧、ヘアースタイルどれもセンスがよく、ひとつの仕事を長くきっちり続けてこられた自信と余裕のようなものも感じられます。
その人はお汁茶碗を持つ時以外、食事中ずっと左手の肘をカウンターについていました。
お箸を持った右手だけを動かし、左手は肘をついたまま。
彼女の外見とその食事風景があまりに合っていなくて、つい何度も目がいってしまいました。
小さい頃「食事中に肘をついてはいけません、ちゃんとお茶碗を持ち上げて食べなさい」と口やかましく親から言われました。
「変な食べ方をすると、自分が恥ずかしいだけじゃなくて、周囲の人を不快にさせる」とも。
そのたびに口には出さずとも「不快になるのは周囲ではなく、そういうルールに縛られた自分では?」と親の価値観の狭さに少しイラっとしていました。
母は実際にお店などで近くの席にあまり美しくない食べ方の人がいたり、ご飯とお汁のお茶碗が左右反対に配置されて出されるといちいち気持ち悪がっていました。
カウンターの女性は「ご飯食べる時は肘つかない方がいいよ」と誰にも教わる機会がなかったかもしれない、もしかすると今日は疲れていてとにかく思いっきり自堕落でいたかったのかもしれない・・
そんなことを思いながら
行儀作法は少し脇において、彼女のその食事風景が私を何か不快にしているかどうかを考えてみました。
まず彼女の食事風景から受ける印象
あまり美味しくなさそう
食事が楽しくなさそう
何か不満がありそう
肘をついた姿勢からはなんとなく気だるく重い空気を感じるので、彼女の隣や向かいで食事するのはあまり気が進みません。
自分がお店の人だったら「美味しくないのかな。何か気に入らないことでもあるのかな」と色々気になってしまいそうです。
私がこの店を気に入っているは、味が口に合うのはもちろん「気のよさ」と感じるからなのです。
「気のよさ」って分かる人にしか分からない表現だと思いますが、雰囲気がサラッとしていて風通し(実際の風ではない)がよい感じ。
店のどの人が相手でも変な対応をされることがない。
新入り君がモタモタしていても、さりげないフォローが入る。
もしくは新入り君がモタモタしつつも必死にやりとげる。
大混雑の昼時前に、たまに大将が声を荒げて誰かを注意している声が奥から聞こえても、その場の空気が永遠に凍りついたりしない。
そんな感じを総じて「気がいい」と私は感じています。
彼女の周りにはほんの小さな範囲ではあるけど、少し重い空気のバリアが感じられて、私にとっては吸い慣れた店の空気に少しだけ肌慣れない粒子が混じった気がしました。
でも、もちろん客がみんな店の雰囲気作りに協力する義務なんて全くありません。ましてやここは私の店でもないし。
また食事中に肘をつかず、行儀のよい食べ方をすればそれで全てOKなのか、というとそういうことでもないような気がします。
彼女と私の間の席の男性(30代前半くらい?)は注文したものを待つ間ずっとスマホのゲームに夢中でした。
彼より私の注文したものの方が先に出てきた時、私はカウンターの彼の席の前に置かれたナプキンスタンドから紙ナプキンを1枚取るために、彼との間に置かれたアクリル板を「ちょっとすみません」と声をかけてから少しずらしました。
するとゲームに夢中になっていると見えた彼はすぐ「あっどうぞ」と自分もアクリル板をずらしてくれようとしました。
最近こういう時も無反応や軽く頭を動かす程度の人が多いので、彼が声を出したことに結構驚きました。
その後、彼の注文したものが出てきた時、彼は割り箸を迷わず口に咥えパリッと二つに勢いよく割って食べはじめました。
割り箸を口で割る人を久々の見たので、これも少し驚きました。
多分お行儀のよい割り方ではないはずですが、彼の食べる姿からは今目の前の食事に全身で向かい合って楽しんでいるのが感じられて、こちらまで「そうだよねぇ美味しいよねぇ〜」と体がほぐれる気がしました。
礼儀作法の一つ一つにはちゃんと意味があり、そうすることが一番合理的でもあることと聞いたことがあるけど、でも守るためのマナーであっては意味がない
何より大切なのは月並みではあるけど
食べ物とそれを提供する人(料理する人、食材を育てる人、運ぶ人、売る人、そしてすべてを育む自然)すべてに感謝する心を持つこと
ひとりの食事の場合でも、周囲とのバリアをほんの少し薄くして食事することではないかな、と思います。
(美味しい食事はそれだけでバリアなど一気にとっぱらってくれるものだと思いますが、仕事中のランチはそこまで完全にはゆるめられないので)
隣で「ポークジンジャー定食」を平らげていく彼の気配を感じながら、肘をついたまま食事している彼女をなんだかんだとジャッジしようとしていることがすごくつまらないことに思えて、そんなことより目の前の美味しい食事に感謝しながらよく噛んで食べよう、と思ったランチタイムでした。
誤って記事「紙袋」(2022/11)を消してしまいました。ただでさえ記事が少ないのに。。😥またコツコツと書いていきます。
主(あるじ)不在の庭に入った庭師さんが主(あるじ)に持って行ってあげてと残しておいてくれた梅の枝