NHKの「映像の世紀バタフライエフェクト」という番組で「マンハッタン計画 オッペンハイマーの栄光と罪」という放送回があって、結果的にこの番組が彼の担った役割を予習する役割を果たして観賞に臨んだ本作。

 

先の大戦の命運を握る一大国家プロジェクトとして、かつてない威力を持つ新兵器開発競争の先頭に立った物理学者オッペンハイマー。その壮大な計画の内幕と完成までのプロセスをスリリングに描きつつ、“原爆の父”ともてはやされた彼の栄光と挫折を、大戦の前後の時代を行き来しながら振り返る。

 

これまで数多の歴史上の事実が映画と言う娯楽作品の“原案”として採用され、幾つもの名作も生まれてきましたが、クリストファー・ノーラン監督はある意味物凄く正攻法でオッペンハイマーの人生を描いてみせた。錚々たる俳優陣が、まるで歴史上の写真館から抜け出てきたかのように実物と相似している様は、監督と俳優達による登場人物への徹底したアナリーゼの賜物に違いない。

マンハッタン計画の成功に対して、戦後の赤狩りにより彼が裁きを受けるプロセスは登場人物の多さが災いし、状況把握に苦労(特にシュヴァリエ事件に関するエピソード)しましたが、彼の政治信条の系譜と人間関係が、彼の“政敵”に巧みに利用されていく様子もまた緊迫のフィクション劇であるかのよう。
 

通常のシネコン劇場で観賞しましたが、爆音が腹に響く。かつて「センサラウンド方式」と銘打って上映された「大地震」を思い起こした。IMAXでの観賞はおススメするに値すると確かに感じます。そもそもIMAXの申し子みたいな監督さんなので、できればフルスペックの劇場で観るべきなんでしょうかね?

インターミッションなしの上映時間3時間と知って劇場への足取りが重くなりましたが、3時間必要でした。再見したいです、IMAXで。

 

公開までの道のりが随分と長いものになってしまった本作。この点に関しては一映画ファンとしてとても残念だし遺憾でもあり、特に観終えた今はその念が更に強まった。当初配給会社が公開を尻込みしなければならなかった理由は、何処にも見当たらなかった。

オスカー受賞も納得です(R・ダウニー・Jr.の不遜な態度のみ喝!)。

 

日付:2024/4/7
タイトル:オッペンハイマー | OPPENHEIMER
監督・脚本:Christopher Nolan
劇場名:シネプレックス平塚 screen8
評価:6