ウェブスター・ヤング / フォー・レディ | Whistle Stop Cafe Ⅱ

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Les Aventuriers Deuxième étape



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Webster Young / For lady
ladyとは淑女一般を指すものでなく、
ここではあのビリー・ホリデイを指している。

ピアノがビリーと最後まで共演したマル・ウォルドロンである以上、
ビリーゆかりの曲と表題曲のヤングによるオリジンが含まれている。
気に入っているのは中身以前にこのジャケットで、優秀ジャケット大賞の
常連になりそうな秀逸なるアート・ワーク。
こういうジャケットの楽しさもジャズの魅力の一つで、
何の芸もないクラシックのジャケットデザインはもう少し何とか
ならないのかといつも思うし、J-popというかこちらも
あざとく目を惹くだけの、使い捨て厚化粧ジャケットにも困ったものだ。

で、この傑作ジャケットであるが、一説によると塀の前に佇んでいる女性の前にもう一人写っていたという事らしいのだが、もう一人が誰かも分からない。
まあ、普通に考えれば男だろうとは思う。
塀の前に2人いたとすれば、この写真の女性の立ち位置の不自然さにも納得がいく。しかし、最初のスチールが未発表である以上、真相は誰にも分からない。

ウェブスター・ヤングのリーダーアルバムは本邦1枚のみである。
デニー・ザイトリン同様ジャズ専門ミュージシャンでもなく、学究肌のトランぺッターという位置にある彼は、もともと脇役が似合うタイプなのであろう。
本邦はコルネット(トランペットを無理やり縮めたラッパのほう)で全トラックを歌い上げている。

ここでのメンバーは、
ウェブスター・ヤング(COR) ポール・クィニシェット(TS) マル・ウォルドロン(P)
 ジョー・ピューマ(G) アール・メイ(B) エド・シグペン(DS)
と、そこそこの著名ミュージシャンが揃っている。

ビリー・ホリデイのヒット・パレードであるのだが、
このメンバーなら火を噴くような過激なプレイは間違っても出来ない。
ビリーの内に籠った黒く熱い情念を太いタッチで描くこともない。
このジャケット写真のような灰色のコンクリートの塀のように
アクリル絵の具を使って淡々と、さらりと、キャンバスにコルネットの音を
乗せて行くという感じなのだ。

これはトニーフラセッラと似た表現手法なのだが、
両者共にリーダーアルバムが1枚しかないという事の理由も
分かるような、けっして「わし掴み」しない植物的な人なんだろうと思う。

ジャケットに目がいくが、せっかちな人にとっては地味でメリハリが効かないが、
そこはそれ、じっくり腰を落ち着けて聴きたい。
コーヒー豆をミルから挽きドリップする頃にはレコードの片面が終わる。
そうしたら、再度1曲目の「The lady」から聴きなおす。
その位のペース配分で聴くのがよろしい。

マイルスの同じくプレステージ作品「クッキンetc.」の
一連のミュートプレイの作品と比較してみると面白いと思う。