あらすじ
梵貝荘(ぼんばいそう)と呼ばれる法螺貝(ほらがい)様の異形の館。マラルメを研究する館の主・瑞門龍司郎(ずいもんりゅうしろう)が主催する「火曜会」の夜、奇妙な殺人事件が発生する。事件は、名探偵の活躍により解決するが、年を経た後、再調査が現代の名探偵・石動戯作に持ち込まれる。時間を超え交錯する謎。まさに完璧な本格ミステリ。
(byアマゾンのページ)
以下ネタばれあり。
作中作の動機が「被害者の職業が弁護士だから」
遺体の周囲に1万円札が15枚まかれていたのは「フランス語の韻を踏んでいたから」
……????
これはどう見てもどう考えてもおかしい。
そんな理由で人を殺す人はいない(コナンに出てくる加害者達以外は)
事件の加害者が真犯人をかばっているに違いない!
真犯人はフランス語に堪能で、倉多がかばうべき人物!
というところから考えていったのだが、それについては全くスルー。
そういう動機があってもいいのだが、それには「倉多が完璧にフランス語を習得している」という描写がなければいけない。
倉多が捕まった後、
魔王「倉田がいなければ、何もできないからね。昨日が最後の火曜会だ……。」
という発言があるが、この発言から倉多がフランス語に堪能であるということを結びつけるのは無理があるだろう。(火曜会の皆がフランス語に精通していたわけではないし、実際の火曜会においても倉多はサービスが主な仕事だった)
その描写がない以上、倉多=犯人説は疑問が残る。
ここで疑問を残すことで、犯人=古田川である、という含みを持たせたかったのかもしれないが、「古田川が犯人ではない=倉多が犯人である」という図式は成立しない。(何故なら倉多がフランス語を習得しているか不明だから)
倉多が犯人である理由は、水城名探偵曰く
・生きている野波さんに最後に会ったのは倉多さん
→各部屋に外から鍵がかかってるわけでもないので、誰でも可能。
・テラスにロープを結びつけておくことができたのは倉多さん
→梵貝荘の住人、もしくは梵貝荘に何度か足を運んでいる火曜会メンバーなら可能。
・勝手口から回廊に戻ることができたのも倉多さん
→倉多犯人説だからそのようにも見えるが、篤典・誠伸共犯説だって十分可能。
(田嶋の視点からは、倉多を見つけた後に篤典・誠伸に会っているため、倉多よりも2階から下りてくる時間的余裕はある)
「フランス語の見立て」を行っていることを考えれば、篤典・誠伸共犯説の方がより現実的である。
何故このような暴力的な推理を行ったのだろうか?
ここでの水城名探偵の推理に、水城名探偵認知症説を疑ったほどである。
一番頭を悩ませたのが、
第一章と第二章の
「……そういうわけで、十四年前の梵貝荘事件を再調査してるんです。名探偵水城優臣がみごとに解決した事件をもう一度洗い直すなんて、不遜な行為ですね。しかし……」
という発言。
第二章で石動名探偵がこの発言をする際、誰かに指定されていた言葉を言っているわけではない以上、第一章の発言は石動名探偵のものとしか考えられない。しかし、風景描写が少し違う…。第一章は現代のさらに十四年後の事件か!?と余計なことまで考えてしまったが、蓋を開けてみればそこに説明はなく、それは単なる「偶然」だったようだ。
本格ミステリ作者が仕掛ける「偶然」を持ち出すならば、もうなんでもありである。
地の文だろうが何だろうが、全ては「偶然」の名のもとにひれ伏さなければならない。謎解きも何もあったものではない。
偶然に関しては全くもって許し難いが、性別誤認の描写はまんまと騙された。
が、
こんなとこに細かいヒントがあったんだよ!それ以外の細かいことには目をつぶって!
ほーら、大どんでん返し!!
…とやられても、納得がいかない。
読んでよかった度 :☆☆☆☆
もう一回読みたい度:☆☆☆
裏表紙の「隙なく完璧な本格ミステリ」は言いすぎ度:☆☆☆☆☆