厭魅の如き憑くもの:感想 | しのぶーのブログ

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あらすじ

神々櫛村。谺呀治家と神櫛家、二つの旧家が微妙な関係で並び立ち、神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた場所である。戦争からそう遠くない昭和の年、ある怪奇幻想作家がこの地を訪れてまもなく、最初の怪死事件が起こる。

(byアマゾンのページ)



前評判を知らなければ、ただの怪奇小説もしくは民俗学の本だと思い、放り出していたと思う。

それほどまでに、ミステリに関係のない重く苦しい怪奇話が延々続く。(もちろん、その怪奇部分がミステリ部分にも大きく影響するのだが)


怪奇&ミステリ小説として印象に残ったのは、最後の謎解きシーン。

主人公:刀城は、最後の謎解きという一番の見せ場のシーンで「犯人はお前だ!」

…とはやらず、犯人を指しては間違い、次の犯人を指しては間違う…ということを繰り返す。

名探偵としての質に疑問も感じるが「刀城が知っている情報から導き出される最も合理的な結論」がその都度変わっているから、結論も変わっていったに過ぎない。

本来であれば、全てのデータ収集を行い「さて皆さん…」とやるのが名探偵の仕事?だが、刀城はあくまで怪奇幻想作家である。

ミステリでは起こりえない謎解きのシーンも、通常のミステリでは味わえないものでとても新鮮だった。


もちろん、全ての情報を知っている読者である自分は全ての謎を解き明かし、真犯人を名指しすることが出来るはずなのだが、全く真相には思い至らなかった。



常識的に考えたら単純に分かりそうなことでも、因習に囚われた村人たちが感じている怪奇が圧倒的な文章力で読者に迫ってくるため、なかなか真相が見えてこない。


怪奇にも隙がなく、その怪奇の中にミステリ要素がふんだんにちりばめられている。

怪奇小説してもミステリとしても十分に読み応えのある一冊だった。



読んでよかった度 :☆☆☆☆☆

もう一回読みたい度:☆☆☆

怪奇部分が怖すぎて、夜一人でトイレに行くのが怖かった度:☆☆☆☆☆