突然の大地震で、ファーストフード店にいた6人が逃げ込んだ先は、人格を入れ替える実験施設だった。法則に沿って6人の人格が入れ替わり、脱出不能の隔絶された空間で連続殺人事件が起こる。犯人は誰の人格で、凶行の目的は何なのか?人格と論理が輪舞する奇想天外西沢マジック。寝不足覚悟の面白さ。
(byアマゾンのページ)
「七回死んだ男」がとても面白かったので、同じ作者が書いた本も読んでみた。
物語の一番大きなトリックについては、過去に西澤保彦の作品を読んでいる人なら見当がつくと思う。
自分は紙に「マスカレード」がどのような順番で起こったのかを書いているうちにトリックの真相に気付いた。(超自然的現象に起因しているため、『トリック』という単語を使うのは誤りかもしれない)
作品の導入部、『この物語の法則はこのようなものですよ!』という説明文章は長いが、内容に飽きることなくするすると頭に入ってくるのは、キャラ設定の巧みさと文章力によるものだと思われる。
以下ネタばれあり。
ボビイのセリフ
「とにかくフォルムは間違いなく女だったし、長いアッシュブロンドの影もはっきり見えた。」
最後の謎解き
「女性2人のうち1人はその場におらず、階段を上がっていくシルエットが男のものでなかったから、消去法でアッシュブロンドの持ち主だと思ったため、首から垂れたマフラーを長いアッシュブロンドと見間違えた」
上記のボビイのセリフが謎のなかの一つではあるが、それに対する回答が納得いかない。
いかに混乱していた現場だとはいえ、マフラーと長い髪を見間違えるだろうか…
人格転移が起こっていたor余震が続いていた、ということも考えられるが、それならば「フォルムが間違いなく女だった」という目撃証言も怪しいものとなる。
それならばよほどジャクリーン(ランディ)が怨恨or暴行目的で殺害した、という回答の方が納得がいく。
「七回死んだ男」を読む前であれば、「『マスカレード』が順番を飛ばしたんだ!もしくは逆回りをしたんだ!!」と考え、最後にあっと驚いたかもしれないが、西澤保彦の書く作品でそのような卑怯なことをするわけがないと確信していたから、推理の方向性が定まったが、その分驚きが減った。
出来ることなら、「七回死んだ男」を読む前にこの作品を読みたかった。
読んでよかった度 :☆☆☆
もう一回読みたい度:☆☆
ジャクリーンに人格転移したい度:☆☆☆☆☆