ジョルジュ・ドン | 人間の大野裕之

人間の大野裕之

映画『ミュジコフィリア』『葬式の名人』『太秦ライムライト』脚本・プロデューサー
『チャップリンとヒトラー メディアとイメージの世界大戦』岩波書店 サントリー学芸賞受賞
日本チャップリン協会会長/劇団とっても便利

先日Twitter上で友人と話題にしたジョルジュ・ドンの踊り。ベートーベンの7番にベジャールが振付けたもの。ルルーシュの『愛と哀しみのボレロ』より。



中学生の僕にモダンダンスの面白さを教えてくれたのはジョルジュ・ドンやけど、後にあの特権性が苦手になり、大学生時代は単に乾いた楷書体の技術者が好きになった。でも、大人になって分かったことは、無二の特権性の獲得には当然努力の積み重ねしかないということ。
今となっては、高校三年の時にドンの最後の日本公演「ニジンスキー神の道化」を見たのは財産。アンコールのボレロにも熱狂した。彼の後釜であるジル・ロマンも素晴らしいけど、たとえばマーラー5番に同じくベジャールが振り付けた「愛が私に語るもの」での両者の踊りを比べると、やはりドンは格別。とりわけ最後に、上手奥から下手前へ、シェネ・シェネ・シェネと連続でまわってしかし崩れるところとか、あの崩れ方はドン以外には出来ない。本当に「愛が私に語るもの」になる。
それにしても、楷書体の技術者が好きになったとかいいながら、大野一雄の最後の京都公演とか、プリセツカヤの上賀茂神社でのボレロとか、振り返れば特権性を追いかけてきましたが笑。
(ちなみに、『愛と哀しみのボレロ』はルルーシュにとっては凡作だろうけど、ドンの場面を見ると、バレエ好きなんやろなあ、と。撮り方を熟知しておられる。あと、ミシェル・ルグランの音楽もとても良いです。)