正直、現在香港の音楽界(広東語市場)はあまり良くない。香港返還後、香港でも北京語が普及し、多くの歌手が香港に進出した事、広東語の音楽ビジネスと北京語の音楽ビジネスがあまりにも違う事が理由に入るだろう。中国の人口13億人+在外架橋である北京語市場に対し、広東語市場は800万人と非常に狭い。2万枚売れれば上出来という香港ではアルバムの稼ぎだけでは少なく、多くの歌手が映画に出たり、1年に数枚のアルバムを出す。そのアルバムもタイアップの曲+捨て曲が大半で、1年に1枚満足のいくアルバムを出す北京語市場とは大きく異なっている。
近年の香港の流れとしてはChet 林一峰(チェット・ラム)、Pongnan 藍奕邦(ポン・ナン)といったシンガーソングライター系シンガーの出現だろう。彼らは、作曲活動で稼ぐので映画には出なくても“基本的には”活動できる。また、曲を提供している歌手には香港のみならず、北京語市場の歌手も含まれる。林一峰は、Yan-Z 孫燕姿の「遇見」、Elva 蕭亞軒の「開始愛」「自己人」を始め、Gigi 梁詠琪、Eason 陳奕迅、Sammy 鄭秀文、Aaron 郭富城など、Pongnan 藍奕邦は、Fish 梁静茄の「Fly Away」を始め、Candy 盧巧音、Milliam 楊千☆[女へんに華とかく](ミリアム・ヨン)、Jacky 張學友、 Joey 容祖兒、Sandy 林憶蓮などに曲を提供している。共に代表される提供曲が北京語曲である事が、香港音楽界の今後への光であろう。

このアルバムは、Chet 林一峰(チェット・ラム)が昨年出したライブ盤「Chet Lam Traveling Live 2004 林一峰遊樂會」 このアルバムやライブDVDはBMAというレコード会社から出ているが、基本的に彼はLYFEといったインディーズのレコード会社からリリースをしている。林一峰は幼い頃から子役として活躍し、大学卒業後はラジオDJ、舞台劇、作曲、エッセイ作家など香港らしくマルチに活躍している。歌手としては03年に「床頭歌」でインディーズながらデビュー。
このライブはある意味香港の音楽界にとって衝撃的だ。インディ-ズながら大掛かりにコンサートを行い、ライブCDやDVDを発売してしまうのだ。まぁ香港の大きさが九州くらいの広さだからインディーズでも大掛かりに出来るという利点も生かしている。
内容は旅行好きの林一峰らしくスチュワーデスのアナウンスから始まり、機長の挨拶で終わる。ちなみにこのライブには「CL411. A Flight serves MUSIC CLASS only」といったサブタイトルも付いている。Candy 盧巧音のライブといい、香港の人はこの手の演出が好きである。「突然独身」「冷熱之間」といったヒット曲、彼の提供曲の代表である「遇見」、Billy Joelの「Piano Man」、Joni Michellの「A Case Of You」といったカバーのほか、ゲストにはI Love you Boyz, Jade 關心妍(ジェイド・クァン)、妹のいるat 17がゲストとして参加している。
内容は香港の華やかなポップスではなく、アコースティック。香港発のライブ盤にしては珍しく、上げ上げな曲も特にない。しかし、この路線がそこそこ売れてしまうのだから香港の音楽界もまだまだこれからだと思うのである。