自衛隊の課業の終わり、国旗を降ろすのであっても国旗掲揚と言う。菊池3尉は夕食を食べ、幹部官舎の自室で今日のことを考えた。
俺は何も連隊長に失礼なことはしていない。連隊長は俺に気づかなかったんだ。独り言は俺の幻聴だったのかもしれない。教えられないことは、知ってはいけないことだったりする。命令されないことは、してはいけないことだ。
貸与されている官品スマホを机の上に置いて、見つめる。ネトゲーに使ってもいいと言うことでもな。
この官品スマホは全ての幹部隊員に貸与されている。そして、幹部隊員が私用スマホを契約するのは禁じられていた。ネットショッピングをした場合の代金は別だが、通話やメール、ネトゲーにいくら使っても、国が費用を払ってくれるのだと言う。官品スマホを持たせて、私用スマホを持たせないのはセキュリティ対策を徹底的にするためだ。
親に電話するか? でも、使用状態はコンピューターのAIが監視しているのだろ。
と、考えていたら着信があった。同期の桜田からだ。ビデオ通話でかけてきた。
「俺、中隊長になる話がもうきているんだ。階級は1尉になる」
「なんで、戦死したわけでもないのに2階級特進するんだよ?」
「分からないけど、佐官になる話がきている奴もいるぞ。ただ、一番凄いのは水沢かも知れない。あいつのスマホはかけてきた奴の位地情報が分かるらしいんだ」
どういうことだろ?
「水沢は何か特別な部隊に入ったのかもしれない。⋯⋯。いや、何かの勘違いかもしれない。じゃあな」
電話を切られた。もう1尉になることを他の奴にも話したいのだろう。
中隊長になるって、連隊長なり大隊長なりが、どうにかなって中隊長がくりあがったからか? 連隊長クラスは佐官がなる。爆殺されたのだろうか? 昇進するのは桜田だけでないらしい。そんなに多くの幹部隊員が爆殺されているのか? 幹部隊員が足りなくなっているのか? 水沢は何か知っているか?
水沢に電話してみるか。出てくれた。だけど、背景が白くなって、どこでかけているか分からないようになっている。
「水沢、お前のスマホ、かけている相手の位地情報が分かるんだってな」
「俺の英語能力で情報保安隊とかに選抜されるわけがないだろ。俺の部隊は、演習演習で忙しくてな。またな」
電話を切られた。水沢は何か隠していないか? だとしても、教えられないことは知っていたらいけないことだ。