「いいな、お前はしたい時に仕事して、休みたい時に休めて」
夏樹兄さんは池田さんの家に上がりこんで部屋に入るとなんとなくそう口にした。
「だけど、決まった給料がないのは辛いものだよ」
池田さんの部屋には登山靴とかなんか登山グッズが置かれていた。
「お前に山に行く趣味があったのか?」
「ああ、写真を撮りたくてね」
「ふーん」
なんとなく、夏樹兄さんが部屋の本棚をみると、パソコン通信の過去LOGのファイルが目についた。
「ちょっと、PC-VANのLOGを見せてくれないか?」
「いいよ」
夏樹兄さんはPC-9801シリーズのパソコンは買ったものの、あまりパソコン通信をする時間がとれなかった。なんとなくUFOサロンと書かれたファイルが目について読んでみた。
で、ヒデと書かれたメッセージを見つけた。IDを見て、ぼくが書いたものだと分かった。
夏樹兄さんは母がぼくがカメラをもって、窓の外を見ているようになったと言ったりしたのを思いだした。
ファイルを遡って読んで、池田さんが唯というニックネームで4月1日付で白神山地にUFOの基地があるという記事を見つけて笑いが出た。が、書いたのが池田さんとだと考えて池田さんの顔を見て、血の気が引いた。だが、はじめからよく読んでそれが4月1日に書かれたメッセージだという意味に気づいた。
「ああ、エイプリルフールか」
「ぼくが白神山地にUFOの基地があると書いたメッセージか。あまりうけなかったようだが」
夏樹兄さんは池田が取りたい写真って、UFOの基地か? とか思い浮かんだ。そして、ぼくが写真をネットにあげてほしいと言ってきたことを思いだした。
部屋に置いてあったテレビが親の金を盗んで、関東から自転車で逃げてきた高校生が秋田で補導されたというニュースを流した。
「自転車って、ホームセンターで1万円以下で売られるようになったな」
夏樹兄さんはぼくの母がぼくに2万円を渡したことを思いだした。で、頭で考える前に言葉が出た。
「大うけだよ、池田。UFOサロンのヒデはぼくがお前に相談していた従弟の村山秀和だ。お前のメッセージを読んで自転車を買って白神山地へ行ってしまったんだ」