新緑の古都と絵本の仲間たち | つながっていこう~オンライン版絵本で支援プロジェクト【公式ブログ】

道産子のめめさんです。

先週末4/20~22まで新緑の京都へ行って参りました。

*桜の季節が終わり青紅葉の季節

 

今回の目的は、「絵本専門士によるまるごと絵本研究会」略して「まる研」の初となる総会をキャンパスプラザ京都で開催することでした。そして総会の参加メンバーと昨年から【絵本専門士による絵本まるごと研究会書店】と題して貸棚にチャレンジさせて頂いている新田辺にある山城書店を訪問してきました。

*絵本専門士5期の同期が営む山城書店

 

*まる研のメンバーと貸棚に挑戦しています。

*1冊ずつポップが付けられて面置きしている絵本

 

新田辺駅から徒歩2分の所にある老舗の書店ですが店内は、新刊をゆっくり手に取れるコーナーが設けられていたり、一冊一冊にポップを付けた絵本が面出しで並べられていて店主さん(森武さん)の絵本愛を感じました。

まる研の総会の方は、全国に会員が点在するため慣れないハイブリッド形式での開催でしたが、リアル会場の方々とZoomからの参加の方と終始和やかに進み、2023年度収支報告、2024年度の活動計画案も承認され、私は引き続き事務局としてお手伝いすることになりました。

 

 

総会の前日は「オンライン絵本会」「ミッキー絵本探究ゼミ」のメンバーと阪急嵐山駅で待ち合わせ。京都在住のくぼちゃんとみどりさんと私で5人となりました。)いつもオンラインでご一緒する機会は沢山ありますが、リアルに勝るものはありません。

*路地を一本曲がると面白い場所がありました。「キモノフォレスト~600本の京友禅の光林~」
 

みどりさんがご予約してくださった老舗の「桜宿膳・錦」で早めの夕食を取った後は、阪神淡路大震災後に温泉が湧いたという「風風の湯・ふふのゆ」で汗を流しました。絵本を真ん中に出会った人たちは不思議なくらいすぐに何十年来の友のような関係になるのです。人生の後半に出会った大切な友達が全国にいることは幸せなことです。

*風情ある老舗の和食に舌堤

 

青紅葉が美しいこの時期に京都に訪れたのは5年振り、初々しい新緑の美しさに心が洗われ、心通わせられる友人との時間から新年度のスタートのエネルギーを頂きました。

 

 

今月の絵本紹介は、新緑から私が連想した絵本です。今年2024年3月に永眠された駒形克己さんの『かぜがはこぶおと』(駒形克己:作/2004年ONE STROKE)です。

 

  <駒形克己さんのご紹介>

 

1953年静岡県生まれ。造本作家/グラフィックデザイナー

(株)日本デザインセンターを経て、1977年渡米。ニューヨークCBS本社などでグラフィックデザイナーとして活躍後、1983年帰国。1986年に自身の事務所ONE STROKEを設立し、以降「LITTLE EYES」、「紙の絵本」シリーズなど多数の絵本を出版。紙の素材をいかした創作絵本、知育玩具など、独自のモノづくりが世界的に評価を受けている。

1989年長女のあいさんが誕生した以降、多数の絵本を出版。1990年後半以降は、ワークショップ活動や、視覚障がい、聴覚障がいのある人に向けた絵本づくりなど、少数の人達に向き合う取り組みにも力を注いでいる。ニューヨーク近代美術館のミュージアムショップでの発売を機に世界的な活躍をしている。2012年急性白血病を発病し、骨髄移植を受け復帰し、国内のワークショップを精力的にこなしていたが、今年心不全のため永眠。

 

 

  私の出会った駒形克己さんの作品

 

私が駒形さんの作品に出会ったきっかけは、札幌市内にある「ちいさなえほんやひだまり」でした。店主の青田正徳さんがとても大切そうに1ページずつページをめくりながら見せてくださった『Little tree』駒形克己作/ONE STROKE(駒形さんが2010年ボローニャ国際児童図書展でガッツィ賞を受賞した作品)小さな一本の木が季節の移り変わりの中で美しく姿を変えて成長していく様に目を見張りました。本のノドの部分に立体的に立っているその1本の木から影が生まれ、紙の絵本を見ているという感覚が全く消え、駒形さんが添えた短い言葉から静かに物語が始まり、光と影の世界が立体的に表現されることに感動を覚えました。こんなにシンプルで美しい絵本がこの世にあるということに衝撃を受けました。

 

 

それから次に出会ったのは『ぼく、うまれるよ!』(駒形克己:作/1995年ONE STROKE)

この作品は、駒形さんの娘のあいさんの出産体験から「胎児はへその緒を通して陣痛のサインを出し自らの意思で生まれてくる。胎児は受け身ではなく、むしろ積極的に生まれようとするメカニズムがあり、陣痛を引き起こすホルモンは胎児よって作られ、それがお母さんに送られる。」と知り、赤ちゃんが卵子の時代を「たくさんの星」と表現され、子宮の中で胎児が成長する様子から生まれ出る瞬間まで命の神秘を伝えてくれます。母体と繋がっているおへそのパイプが伸びる仕掛けになっていて、私は、わが子との繋がりの深さに改めて感動を覚えました。この絵本に出会ってからもう何人もの人達にこの絵本をプレゼントしています。最近は86歳を迎える方のお誕生日会で読ませて頂きました。

 

 

 

駒形さんはLITTLE EYESというシリーズも出しています。こちらは赤ちゃんが生まれて初めて目にするファーストブックを科学的にデザインし、色々な仕掛けを駆使した美しい絵本と絵カードです。駒形さんが造本作家/グラフィックデザイナーとして小さな命に捧げる深い思いが溢れています。こちらもひとりでも多くの方に届けたい絵本です。

 

 

  嵐山の緑から連想した絵本は・・・

 

今日は先週末に目に焼き付けてきた嵐山の緑のコントラストから連想した駒形克己さんの絵本を紹介します。

紙の絵本シリーズ『かぜがはこぶおと』駒形克己/2004年初版 ONE STROKE

表紙も裏表紙も黄緑色。表紙は♫を型抜きしています。それがこの絵本のタイトル。表紙をめくるとそこから奥域のある緑が生い茂る山が連なっています。山を1ページずつめくっていくと隠れていた鳥やリスのシルエットが現れ、山から丘へ下るとそこには牛や豚のシルエットが現れます。17枚の紙が一枚一枚全て色も質感も違います。色も形も違うものが重なり合って世界ができていることに私は気づかされました。読み手の想像力を最大限に引き出してくれる新しい感覚の絵本です。風の心地よさを感じながら森や草原、雲、空、川を味わってみてください。

 

 

今回は、京都の新緑の美しさから駒形克己さんの繊細で美しい作品を思い出し、皆さんにお伝えしました。駒形克己さんの最後のとなった作品は『とっくん』(福音館こどものとも0.1.2の2月号)でした。赤ちゃんから大人まで多くの人に伝えたい作品が数多くあります。是非、駒形克己さんの作品を手に取ってくださいネ。そしてオンライン絵本の会の仲間と繋がる日本全国絵本のぶら旅は続きそうです。次はどこで誰と会えるかな?