絵本を選ぶこと・・・ | つながっていこう~オンライン版絵本で支援プロジェクト【公式ブログ】

こんにちは!


東京で家庭文庫子どもの本の家ちゅうりっぷを主宰しているかこです。



今日は5月5日、そう「こどもの日」ですね。

 

1952年(昭和27年)に制定された「国民の祝日に関する法律」では、「こどもの日」「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」日と決められています。

 

 

こどもだけでなく、そこに「母に感謝する」と明記されているのがちょっとうれしいですね。

 

 

 

このブログ、ずっとその時々に合わせて絵本を紹介してきました。もちろん手渡されるこどものことを第一に考えて選んできました。こども時代はあっという間に過ぎてしまいます。毎日絵本を1冊ずつ読んでもらったとしても6歳まで2190冊しか読んであげられないのです。もちろんこどもは繰り返し「読んで!」というでしょうから、毎日違う絵本ではなく、繰り返し同じ本を何度も読むとなると、子ども時代に出合う本は意外に少ない。だからこそ、こどもが「この絵本に出合えて幸せラブラブ」と感じられる本を選んであげたいですよね。

 

そこで、今回は「絵本を選ぶ」とはそういうことかについて、書いてみますね。

 

 

絵本は毎年1500点以上出版されています。国際子ども図書館のサイトで、各年の児童書出版点数が公表されています。現在2020年までのデータですが、毎年ですよ・・・こんなに出版されている国はほかにはないはずです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以前、カナダの子どもの本について板橋区立中央図書館で行われた講座に参加したときに、カナダ大使館・文化担当官の清水玲子氏がカナダでは年間250冊ほどだとお話されて、その違いにとてもびっくりしました。

 

そしてそれらの本は、カナディアン・チルドレンズ・ブックセンターや、49thshelf(カナダで出版された本が全部見られる)で見ることができるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



つまり日本では、まるで洪水のように毎年たくさんの絵本が出版されているのですが、さまざまなところで絵本の選書をしたり書評を書いている私であってもそのすべてを知ることはできない、すべてを読むことができない量だということなのです。

 

これ、ほんとうに問題だと思っています。絵本の初版は2000冊と言われています。2000冊を売り切ると増刷されます。しかし増刷されないものは、出版社の倉庫に入るのですが、今は倉庫代も高く、そもそも蔵書として保管すると財産と見なされてしまうため、売れないとわかると断裁されてしまうのです。絵本はすべからく良いもの?と思っている絵本好きな方には残酷な言い方ですが、これ、すごい環境破壊なんです。紙の無駄遣い・・・


巷では絵本を通してSDGsを考えようというムーブメントも盛んですが、そこからきちんと考えていく必要があるなと思っています。

 

 

そんな洪水のように出版される絵本の中から、我が子にぴったりの絵本を選ぶなんて、とても難しい。

だから、本を手渡す人・・・それは図書館司書だったり、学校司書さんや、学校や幼稚園の先生、保育士、そして絵本の読み聞かせ活動をしているボランティアの人たちも含めて、きちんと選書の基準を学ぶ必要があるのです。基準がないのに、本を選ぶなんて出来ないじゃないですか!


もし、自分の好みだけで、とか、知っている作家さんが出したからとか、テキトーに選書しているとしたら・・・それは問題だと思っています。

 

いや、カナダみたいに年間250冊、出版する時点でかなり選ばれているのなら、それでいいのです。

 

 

でも日本みたいに月とスッポン、いやほんとうに珠玉混交、良いもののほうが稀な中で選ぶことがいかに至難の業か。

 

 

 

そこで私がお勧めしたいのは、まずは基本図書を抑えてほしいということです。

 

そして日本で現在手に入る信頼できる基本図書の目録は、東京子ども図書館から出ている『絵本の庭へ』(東京子ども図書館/刊 2012)です。



 

 

 

 

 

 



ここに取り上げられている絵本は、いわゆるロングセラーです。最近出版された絵本は入っていません。でも、『絵本の庭へ』に取り上げられている絵本を読んでいれば、今、目の前にある新刊絵本がその水準にあるかどうかの判断が出来ます。


オンライン絵本会では新刊の絵本を読むこともありますが、私が読み手でいたころは、そこを意識して選書していました。今はどうかな~?

 

願わくば、そこを意識して選書し続けてほしいと思っています。ただし、ロングセラーの出版社は、オンラインで読むことを前提としてないためか許諾が取れないのです。なので、ロングセラー絵本は読んでないとしても、その基準に達している絵本を選んでほしいと、思っています。そこは大人の責任でもあります。



今年から絵本専門士講座で「絵本コンシェルジュ術」を担当することになりました。絵本なら何でも良いではなく、やはり手渡される相手の立場にたって一番相応しいものを選ぶとすれば、やはり確固たる基準を持っていなければ選べない、手渡せない・・・と、こうした観点で講座を組み立てる予定です。


さてさて、『絵本の庭へ』の「はじめに」にこんな風に書かれています。

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「1950年から60年代には、戦後の希望を子どもたちに託し、多くの作家・画家たち、編集者たちが心血を注いで児童書出版の再興に取り組みはじめました。各国の古典的名作や新時代の創作文学、絵本、興味をそそる科学読み物などが続々と刊行され、子どもたちのための本棚を豊かにしてくれました。70年から80年代には、各地の図書館も児童サービスに力点をおくようになり、これらの本が行き渡るシステムも整ってきました。


 しかし、その後の電子ゲームやニューメディアの登場による生活スタイルの変化や受験競争の加熱などにより、子どもたちがゆったりと読書をする時間は限られるようになりました。少子化による購買層の減少も影響し、出版社は過去に生み出した良質な本を品切れ・絶版にせざるを得ないケースが増えています。一方、すぐれた文化遺産を蓄積して提供することが使命である図書館も、運営・雇用形態の変化により、作品の質を見極め、子どもたちに手渡す専門職員が技能を磨くには望ましくない環境が広がっています。


 このような状況であるからこそ、私たちは、すぐれた絵本とはどのようなものかを具体的に示し、記録にとどめたいと考えました。子どもたちと一緒に読んでいると、環境が目まぐるしく変わる今日でも、子どもたちが絵本に求めるものは昔と変わらないということを確信します。子どもたちを惹きつけるのは、生き生きとした絵とわかりやすいことばが一体となって繰り広げられる心躍る物語です。長い年月読み継がれてきた珠玉の絵本には、個性豊かな登場人物、はらはらする冒険、自然の中での素朴な遊び、温もりのある安心感、心地よいことばの響きなど、子どもたちを夢中にさせる要素がつまっています。日常の生活に彩りを添え、世界を広げてくれるオリジナリティ溢れるこれらの作品を、刊行年が古いからという理由で子どもたちから遠ざけるのはあまりにももったいないことです。子どもたちは新作ばかり追う必要はありません。なぜなら子どもたち自身が日々成長する新しい存在だからです。」
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こどもたちの未来を考える時に、絵本をどう選ぶかも重要なことだと思います。

 

今回は、ちょっと堅いお話になりましたが、「絵本を選ぶ」ということについて書きました。

 

最後まで読んでくださってありがとうございますニコニコ