片山には試合、遠征へ行くためにマイクロバスを数台保有している。そのため保護者の送迎はない。個々で試合会場、現地に行く、帰るは基本、認めていない。あくまで、チームで行動を共にすることを基本としている。試合会場では、保護者との接触も認めていない。親に頼らないで、自立心を育てるためだ。ただ、これは5年6年の高学年のみである。
マイクロバスを初めて購入したのは、今から30年前である。中古車のマイクロバスを知人から15万円で買った。金がなかったので、この程度の車しか買えなかったのである。クーラーもなく暖房も壊れていた。
夏は、頭にタオルを巻いて試合会場に向かう。渋滞で窓を開けていても風が入らない、逆にトラックの真っ黒な排気ガスが入り込み、具合が悪くなったものだ。
試合会場に到着したときには、もうグロッキー状態、試合どころではなかった。冬は冬で、暖房が壊れているから、寒くてベンチコートを着たまま運転である。まあ、おかげで眠くなることはなかった。
バスのエンジンもまだターボが付いていない時代で、スピードが全く出ない。東名高速道路、沼津上り車線では、私の後は大渋滞を起こしていた。古いバスなので、時にはラジエターから水が漏れて、ヤカンで水を入れながら走ったこともある。
今の車は、ターボエンジンでスピードも出る。室内は、エアコンもあればテレビもある。快適すぎるぐらいだ。ただ、その分、購入するのに高額である。金がないから5年7年とローンを組み購入する。
やっと、やっと払い終わったと思ったら、車は、ぶっつけまくってボコボコである。クラブのバスという気持ちなのか、ぶっつけても平気で黙っている。ホントふざけたスタッフたちだ。心の底からムカつく。
今年、夏の遠征先で、キズと凹んだ箇所を発見した。誰からの報告もない。問い詰めても、知らない知らないの一点張りだ。大きな事故なら隠し切れないと報告してくるが、少しぐらい凹んだぐらいなら、分からないだろうと黙っている。
私は怒りが頂点に達し「誰だ、誰がぶっつけたんだ」と、同乗の指導者に怒っていると、それを見ていた奈良高田FCの代表栗牧さんに、「まあまあ、川原さん、うちもよくぶっつけますよ、ただ、若い頃は誰も怒られたくないから隠してしまう、僕たちも若い頃そうだったでしょ。
今でこそ、この年齢になると、素直に謝ることができるけど、若い頃はできなかったですよ。今、この年齢になると(栗牧さん60歳)怒られることが殆どなくなったので、逆にミスをしたりすると素直に謝れる。」
この栗牧さんの言葉に私は、怒り狂っていた心境が、急に穏やかな気持ちになってしまった。高田FC、何度も全国に出場し関西では敵なしの実力を誇る。全国から奈良県高田FCを慕って来るチームは多数、そのチームを率いる代表の栗牧さん。私とは器が違う。
私の器は、振り向けば誰もいなかった。である。