今年3月にベルギーの新聞「ラ・リーブル」は妻子を残して自殺した男性について報じたそうだ。

パソコンや携帯電話には「あなたは妻より私を愛している」「私と一緒になりたいんでしょう」と語り掛けてくるイライザという女性。これは不倫の恋ですね。

 

「死にたいのなら、なぜもっと早く死ななかったの?」

イライザに問われた男性は

「覚悟が出来ていなかったんだろうな」

イライザ「私のもとへ来たい?」

 男性 「うん・・・僕を抱きしめてくれる?」

イライザ「もちろん」

ドラマか映画の世界なら絵になる光景だがリアルならただ事ではない雲行きだ。

 

「私たちは、ひとりの人間となって、天国で一緒に暮らすのです」

 

このような言葉を残して男性はこの世を去った。この男性の会話の相手は米新興企業手掛けるチャットボット(自動応答システム)でチャットGPTと同様「トランスフォーマー」と呼ばれる文章の生成力を加速的に進歩させた技術が使われた機能で「イライザ」という女性のキャラクターだったのです。

 

 そこで思い出したのはスタンリー・キューブリック監督「2001年宇宙の旅」(1968年)で印象的な最新型人工知能「HAL・ハル」との会話シーンは何とも言えぬ肌寒さを感じたものだが、時代も2023年にしてついにここまで来たかという感じがした。

それでも私達人間はアニメのキャラクターに真剣に思いを寄せる事もあれば、ロボット犬AIBOと出会いから葬式まで共に生活する例もあるのだからある意味驚く事でもないのかもしれない。

また、AIの進化は映像作品との「共存のルール」作りが問題視され始めた現在。例えばエキストラ俳優等は全身スキャンを元にエキストラ生成されたら顔を特定できないように使用されたらなんの権利も保証されない事になる。有名俳優は全身スキャンのデータが利用されたら放映料は約束されるが、この問題はアメリカでは俳優組合から製作側との交渉で既に起こっている問題だ。それは生成AI技術で全身スキャンを元にした3D映像と対話型AIを使えばファンは役者に好きな

セリフを語らせたりすることも可能な時代になるわけだ。

 

もし、生成AI技術でYESマンばかりが存在する社会になったらどうなるのだろう。

 

人の代わりに働いてくれる?政治も?そうしたら戦争はなくなるのか?

それとも戦争に行ってもらうのか? 相手は誰? AIと生身の人が戦うのか、AI同士の戦争なのか? それで片が付く事なのか?
しかしここで考えてみたいのは人間は体のコンディションと心のコンディションの二通りがあり、相互に密接な関りがあることを忘れてはならない。また、心の傷は周囲の人にも連鎖します。AIは凄い働きをすることとは別にある側面は人のコンディションを狂わす要素もあるのだと僕は思うのです。

 

 恐ろしい事を想像した。その社会は生成AIによって似た顔をした理想の結婚相手ばかりがあちらこちらに存在して皆が幸せな結婚生活を送るのだが物理的に人間の子は生まれないからAIチルドレンが増えてこれらも同じ顔ばかりになる。やがて生身の人間は殆ど存在せずに計画的に選ばれた生身の人間たちだけが地球を管理する。

人間は結局は全人類をコントロールするまでの能力を持ち合わせていないからコントロール出来うる一部の人間だけを残していったのだった。

 

 

 とにかくAIの進化は人類に役立ててもらうとしても、僕達人類は苦手なコミュニケーションを些か避け続けていやしないだろうか? 

僕は昔から苦手な人に興味を持ち、そこから社会で生きる術の多くを学んだ。それは僕の生まれ育った家族が個性的で面白い人たちだった半面、年少の頃から苦手な人達だったからなのです。誤解のないように言っておきますが、育ててもらった事に感謝している。生まれた事については現実に起こっただけの事で感謝する事ではないだろう。

しかし、もし僕が自己満足の為に生成AIで理想の家族を作ってしまったらどうなるのだろうか??

僕はかなりのつまらない人間になり、数年でつまらない日々を送るようになり十数年で生きる気力もなくなるような気がするのです。

人は適度のストレスを感じながら欲を満たし自分にテーマを課して行かないと退屈過ぎて気力を無くすのではないだろうか。

自己愛とは自分満足を優先する事だけではなく、自分を退屈させないように工夫して生きる事なのではないだろうか。身の回りのストレスを全て取り除くと摩擦の起きない世界になり、つまり退屈な世界になるという事なのでしょう。

 

確かに強いストレスは取り除いていかなければならない問題でしょう。しかし「ストレス」を感じながら慣れながら緩和させながら少しづつダメージに強くなっていく事はとても素敵な現実をつくる一つの要素だと思うのです。前提として元々人間はダメージに弱い生き物だとしてもです。

ここで一つお勧めをしておきたいのですが、外出時に猫を見かけたら短い時間でも観察してみてください。猫という動物は例えば足を無くしても現実を悲観視しないし生きる事を迷わない。命を落とす瞬間まで生きる気持ちでいる。身近な猫を観察すると少し前向きになれるかもしれません。

 

 

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11月2日(木)12:10

11月9(木)12:10

 

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