2023年マイベストアルバム50選 | 「道草オンラインマガジンonfield」[別館]

「道草オンラインマガジンonfield」[別館]

個人HP「道草オンラインマガジンonfield」の別館です。独自ドメインの本館は2024年中に閉鎖予定です。良かった映画の感想はFilmarksにまとめています。https://filmarks.com/users/RockingOnfield

従来的なロックの枠組みに少し飽きてきたのか、今年は結果的に、上位には黒人アーティストの作品が例年になく多数並びました。自分でもビックリです。黒人アーティストといっても、ラップともR&Bともファンクとも言い難い複合ジャンルの作品揃いで、しかも海外では、これらがロックチャートで上位に食い込んだとも聞いています。そういう意味では、僕も流行変化の影響をなにげに受けているのかもしれません。個人的に、これらの作品を「ブラック・プログレッシブ」と呼んでみたいと思います。(海外ではサイケデリック・ソウルとも呼ばれているらしい)

1970年代のソウル、ファンク、1980年代後半以降のヒップホップの時代を経て、ブラックミュージックも新しい時代に入ったのかな。そんなことを考えた1年でした。ただ、思い返すと、1970年代にも一部にそんな動きはあったような気もするんですよね。具体的にいえば、Marvin Gayeの「I Want You」なんですが…。ともあれ前書きはこのくらいにして、まずは表彰式の写真から。

 

 

●1位~10位

 

1 リル・ヨッティ - Let's Start Here.

Lil Yachty - Let's Start Here.

アーティストの名前も知らなかったし、アートワークも珍妙だし、「何よ、これ」というのが最初の印象。そして聴き始めてジャンルレスな音にたまげました。どこにカテゴライズすれば良いのかさっぱり分からず、なかなか耳に馴染まないし、でも音は面白いし…。怖い物見たさで何度もめくって見るような感覚で聴き込むウチに、ある日を境にぐいぐいと楽しくなってきました。その圧倒的なインパクトの強さで、これを1位にしました。冒頭で触れた「ブラック・プログレッシブ」の一つがコレです。そういえば黒人女性ボーカルを起用したピンク・フロイドの「The Great Gig in the Sky」ぽい曲もありますね。

聴いているうちに、ふと思い出したのがマーヴィン・ゲイの1976年作品「I Want You」です。彼の代表曲が「What's Going On」であることは無条件で認めますが、音の衝撃という意味では「I Want You」に軍配が上がります。ちょうどあの時も「何よ、これ」と思いながらも魅了されてLPを買ったことを、よく覚えています。当時は「ニュー・ソウル」と呼ばれていましたっけね。

 

2 ジョン・バティステ - ワールド・ミュージック・レディオ

Jon Batiste - World Music Radio

自由奔放にジャンルを飛び越えた楽曲のバラエティがありながら、どれもジョン・バティステらしくて筋が一本通っている完成度が素晴らしい。ラジオ番組を模した点ではThe Weekndの「Dawn FM」と似たパターンですが、ジョン・バティステの場合はまさしく国境を越えた構成でした。これも「ブラック・プログレッシブ」の一つ。今年ライブ鑑賞を見送って、とても後悔しています。

 

3 ボーイジーニアス - ザ・レコード

boygenius - the record

インディーロックの分野に限定すれば、2023年に最も存在感を発揮したスーパーグループ、ボーイジニアスの初フルアルバムが頭一つ抜けた印象。将来にわたる愛聴盤になり得るという意味では、これが1位で全く異論はありません。ソロアーティストとして活躍する3人の連帯の強さに、今の時代を強く感じ取りました。コンサートの映像を見ると、バックを務める4人も全員女性で、コロナ禍直前に来日ライブを見たJay Somも楽しそうにギターをかき鳴らしている。彼女たちの演奏に力を得た女性は相当多いはず。いや男性の僕もそうなんですが。映画「バービー」公開も含め女性のパワーを感じた1年でした。

しかし国内盤CDが出ないなんて許しがたいな(アナログ盤で国内盤は出た。品質不良だったけど)。→追加情報。グラミー賞ノミネートのおかげか、2014年1月31日にようやく国内盤CDが発売されました。

 

4 Yves Tumor - プレイズ・ア・ロード・フー・チューズ・バット・ウィッチ・ダズ・ノット・コンシューム(オア・シンプリー・ホット・ビトウィーン・ワールズ)

Yves Tumor - Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)

Yves Tumorは前作の評価が高かったことを覚えていますが、よりポップになった新作で初めてお気に入りになりました。フジロックでのパフォーマンスと衣装(というか最後は裸にエプロン状態)にも好感を覚えました。これも「ブラック・プログレッシブ」の一つです。

 

5 ウィルコ「カズン」

Wilco - Cousin

新調した靴にすぐには馴染めなくて、でも履き馴らしていくうちに身体の一部になっていく。彼らのアルバムもこれと似ています。ウィルコはアルバムごとに新しい顔を見せてくれる不思議なバンド。今回はケイト・ル・ボンのプロデュースで、メンバーたちが秘めていた引き出しから新しい要素が取り出され、ウィルコワールドの世界感をまた一つ広げてくれました。2024年の来日がとても楽しみです。

 

6 Wednesday - Rat Saw god

Wednesday - Rat Saw God

インディ・オルタナのロックでは、Wednesdayが新人バンドとして一番の収穫だったかな。カントリーテイストも併せ持ったグランジは、Big Thiefの弟分という印象も。2024年の単独初来日公演は見送りますがフジロックに期待しています。

 

7 オリビア・ロドリゴ - ガッツ

Olivia Rodrigo - Guts

新人の若い女性シンガーがまた登場したのね…当初はそんな冷めた印象でしたが、2作目の当アルバムを聴いて印象が一変。各方面に鉄槌を喰らわすような歌詞の面白さとロックなサウンド、タイトル通りガッツ溢れる曲の数々に「新しい潮流」の到来を感じ取りました。曲作りも巧い。

 

8 Kelela - レイヴン

Kelela - Raven

5年4か月ぶりの復活作。前作デビューアルバムから大幅に進化、魔宮の世界に誘われたかのようなトリップ感に魅せられました。

 

9 サム・スミス - グロリア

Sam Smith - Gloria

2023年2月のグラミー賞でKim Petrasと共に舞台に上がったSam Smithのインパクトが脳裏から離れません。彼がゲイであることはデビュー当時から薄々知られていたような印象がありますが、当時はまだ自己アピールは抑制的だったかな。それがまあ、グラミー賞の舞台で臆面もなく堂々と「私はゲイだ、私は私だ」とアピールする様を見て、とてつもない開放感が感じられました。

 

10 Caroline Polachek - Desire, I Want To Turn Into You(輸入盤のみ)

Caroline Polachek - Desire, I Want To Turn Into You

当初からアートワーク先行で気になっていたアルバムですが、楽曲の良さと伸びやかなボーカルにどんどん魅せられていきました。ライブの動画やフジロックでのステージを観て、歌の巧さも実感しましたね。テクノポップバンドChairliftの元ボーカリストというのは、後から知りました。

 

●11位~20位

 

11 Mitski - ザ・ランド・イズ・インホスピタブル・アンド・ソー・アー・ウィ

Mitski - The Land Is Inhospitable and So Are We

Mitskiならではの意外性に富んだ変化球アレンジがとても面白い。演劇的な要素が一段と強くなったと感じます。

 

12 Sufjan Stevens - ジャヴェリン

Sufjan Stevens - Javelin

大好きな2020年作「CARRIE & LOWELL」の路線でセンチメンタルな作風に魅せられました。

 

13 Anohni And The Johnsons - マイ・バック・ワズ・ア・ブリッジ・フォー・ユー・トゥ・クロス

Anohni And The Johnsons - My Back Was a Bridge for You to Cross

同じくセンチメンタルなメロディと、儚げな歌声、ギター中心のアレンジが効いています。とくに1曲目のエリック・ゲイル風のギターの音色が好きですが、ノイジーな音とも相性が良いですね。

 

14 Arlo Parks - マイ・ソフト・マシーン

Arlo Parks - My Soft Machine

前作デビュー作ほど印象的な曲は少ないものの、何故かずっと流しっぱなしで心地よいアルバム。彼女の人柄がそのまま音に表れているような気がして好感。

 

15 ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ - カウンシル・スカイズ

Noel Gallagher's High Flying Birds - Council Skies

弟びいきの僕ですが、今回はお兄ちゃんの美メロに感服しました。弟リアムとの音楽の方向性がどんどん開いていくのでOasis再結成は永遠にないかもな、と思い始めています。ちなみにリアムのライブ盤「ネプワース22」は愛聴盤でベスト30内に入れていましたが、Oasis曲が多すぎるとの判断で対象外にしちゃいました。

 

16 ヨ・ラ・テンゴ - ディス・ステューピッド・ワールド

Yo La Tengo - This Stupid World

前作に比べて少し弱いかなと思いつつも、セッション風の生々しいサウンドとノイジーなうねりに魅せられていきました。

 

17 Young Fathers - ヘヴィー・ヘヴィー

Young Fathers - Heavy Heavy

これも「ブラック・プログレッシブ」の一つ。ともかく音が面白い。

 

18 フー・ファイターズ - バット・ヒア・ウィ・アー

Foo Fighters - But Here We Are

実母の死去とバンドメイトの死去という辛さをバネに、デイブ・グロール率いるフーファイが過去作を上回るほどの完成度の高いアルバムを発表してくれたことを嬉しく思います。

 

19 ブラー - ザ・バラード・オブ・ダーレン

Blur - The Ballad Of Darren

ブラーのアルバムを年間ベストに選出するのは初めてのような気がします。ちなみにGORILLAZの新作も初めてベスト50候補に入っていました。

 

20 ローリング・ストーンズ - ハックニー・ダイアモンズ

The Rolling Stones - Hackney Diamonds

現役バリバリのサウンドと歌声が嬉しい、ストーンズの近作では上出来の完成度。ガガの参加も寄与していますね。

 

●21位~30位

 

21 Rhiannon Giddens - You're the One(輸入盤のみ)

Rhiannon Giddens - You're the One

リアノン・ギデンズ、大好きな名盤「フリーダム・ハイウェイ」以来のオリジナルアルバム。アメリカン・ルーツ・ミュージックをベースにしながらも現代的なアプローチがさらに前進したように感じます。

 

22 Daniel Caesar - Never Enough(輸入盤のみ)

Daniel Caesar - Never Enough

フジロック、夕焼けに演出されたチルタイムが最高に気持ちよく、このアルバムを聴くたびに当時の光景が目に浮かびます。

 

23 Cleo Sol - Heaven(輸入盤のみ)

Cleo Sol - Heaven

評判の高かった前作よりもJazzyな雰囲気を打ち出した労作。

 

24 Janelle Monae - The Age of Pleasure(輸入盤のみ)

Janelle Monae - The Age of Pleasure

 

25 The National - First Two Pages of Frankenstein(輸入盤のみ)

The National - First Two Pages of Frankenstein

 

26 Melanie Martinez - Portals(輸入盤のみ)

Melanie Martinez - Portals

 

27 THE NOVEMBERS - The Novembers

THE NOVEMBERS - The Novembers

 

28 Maisie Peters - ザ・グッド・ウイッチ

Maisie Peters - The Good Witch

エド・シーラン主宰の〈ジンジャーブレッド・マン〉からデビュー。ソングライティングに傑出した才能を感じます。

 

29 Lewis Capaldi - ブロークン・バイ・ディザイア・トゥ・ビー・ヘヴンリィ・セント

Lewis Capaldi - Broken by Desire to Be Heavenly Sent

粒ぞろいの楽曲が揃っていて、ソングライティングの巧さに感心しました。初来日はキャンセルされたけど、いつの日か。

 

30 The Lemon Twigs - エヴリシング・ハーモニー

The Lemon Twigs - Everything Harmony

美メロ路線に特化した新作。

 

●31位~40位

 

31 Daughter - ステレオ・マインド・ゲーム

Daughter - Stereo Mind Game

 

 

32 Andy Shauf - Norm(輸入盤のみ)

Andy Shauf - Norm

 

33 Sparks - 涙のラテ

Sparks - The Girl Is Crying in Her Latte

妙にクセになるサウンドとメロディ。彼らのドキュメンタリー映画を見てから、一気にファンになりました。

 

34 Queens of the Stone Age - イン・タイムズ・ニュー・ロマン…

Queens of the Stone Age - In Times New Roman…

 

35 King Gnu - THE GREATEST UNKNOWN

King Gnu - THE GREATEST UNKNOWN

 

36 d4vd - ペタルズ・トゥ・ソーンズ

d4vd - Petals To Thorns

 

37 Buck Meek - ホーンテッド・マウンテン

Buck Meek - Haunted Mountain

 

38 Julie Byrne - THE GREATER WINGS

Julie Byrne - The Greater Wings

 

39 Jamila Woods - ウォーター・メイド・アス

Jamila Woods - Water Made Us

 

40 Albert Hammond Jr. - Melodies on Hiatus(輸入盤のみ)

Albert Hammond Jr. - Melodies on Hiatus

ストロークス感がモロに出ているのは当たり前か。彼の存在が大きいことを教えてもらいました。

 

●41位~50位

 

41 The Hives - The Death Of Randy Fitzsimmons(輸入盤のみ)

The Hives - The Death Of Randy Fitzsimmons

 

42 Niall Horan - ザ・ショー

Niall Horan - The Show

 

43 Gabrielle Aplin - Phosphorescent(輸入盤のみ)

Gabrielle Aplin - Phosphorescent

 

44 Yeule - Softscars(輸入盤のみ)

Yeule - Softscars

 

45 Blondshell - BLONDSHELL

Blondshell - Blondshell

 

46 Jessie Ware - That! Feels Good!(輸入盤のみ)

Jessie Ware - That! Feels Good!

 

47 The View - エクソシムス・オブ・ユース

The View - Exorcism Of Youth

 

48 カネコアヤノ - タオルケットは穏やかな

 

49 Miss Grit - Follow the Cyborg

Miss Grit - Follow the Cyborg

 

50 Uriah Heep - 獄彩色

Uriah Heep - Chaos & Colour

古くさい音ではあるんだけど、これだけ現役感を醸し出している古参バンドって他にどれだけありますか? 唯一のオリジナルメンバーであるミック・ボックスの存在感は控え目にして、他のメンバーの活躍場面を引き出している印象です。

 

●ベストライブ●

 

〈フェス・イベント〉

Foo Fighters(フジロック@グリーンステージ)出し惜しみのないオールタイムベストのメドレーに狂喜乱舞

Caroline Polachek(フジロック@ホワイトステージ)多幸感で昇天しそうな時間を満喫(トンボ込み)

Yeah Yeah Yeahs (フジロック@レッドマーキー)赤い小屋から飛び出すほどの熱狂

〈単独公演〉

Bjork(cornucopia)@東京ガーデンシアター 3月28日 豪華絢爛絵巻に息を呑んだ

Sam Smith@Kアリーナ横浜 10月13日 サービス精神満開のエンタメステージ

Sparks@LINE CUBE SHIBUYA 7月25日 終始楽しすぎて笑顔が止まらなかった