メーター内のバッテリーマークが点灯しご入庫の
X300型デイムラーさんです。
発電不良。X300型メーターナセル内電圧ゲージは結構正確です。
現在は約11Vの出力、
しかし場合によっては実測で10.5Vを切るときもあり実に危険。
10V前後まで落ち込むとエンスト~再始動不可になる
レッドゾーンまでもう少しの状態です。
一般的にはオルタネーターの疑いから入りますが
このジャガー最終V12エンジンの場合、
オルタネータープーリーをベルトで直接ドライブさせている
クランクシャフトプーリーの劣化を先に確認する必要があります。
なぜならば『クランクシャフトプーリー自体が空回りしている』、
つまりエンジンの力をクランクシャフトプーリーへ正常に伝えられず
その先にあるオルタネーターが発電不良を起こすことがあるからです。
パーツ図の【1】がクランクシャフト、
その先端に位置するのが【12】のクランクシャフトプーリー。
V12エンジンのクランクシャフトプーリーは
シングルプーリーの3段重ね。
全てのプーリーがズレず回らなければいけませんが
エンジン始動する前に付けた白い印が
セルを少し回しただけで約2cmほど位置が動いてしまう。
プーリー1段目がウォーターポンプ、
2段目がA/Cコンプレッサーとパワステポンプ、
3段目がオルタネーターに掛ります。
1段目と2段目は同一鋳造のためズレません。
ズレるのは3段目、オルタネーターのプーリーのみ。
取り外したクランクシャフトプーリー。
さらに全周の1/4ほどズレてしまっています。
プーリーの裏側。
亀裂がいくつか入っています。
そう、これはゴムの緩衝材。
1&2段目のプーリーと3段目の間は
ベルトやエンジンからのショックを押さえるための
ゴムダンパーにて接続されています。
しかし経年でこのゴムダンパーが裂け、3段目のみ空回りするようになり
よってオルタネーターが正常に動作しなくなるのです。
これはリビルドされたプーリー。
純正新品は、なぜかすでに生産終了。再生産の予定も無いようです。
部品構成で問題なのは2段目と3段目を繋げるゴムダンパー。
現在は傷んだプーリーの3段目を取り外し新しいゴムを封入、
再度3段目を圧搾取り付けしたリビルド品のみの対応です。
リビルドなので心配しがちですが
コアであるゴムのダンパー部は新品。
強度も回転クリアランスもしっかり取れた
新品同等品ですので安心なパーツです。