0221 吉行淳之介「某月某日」近ごろ、物忘れが烈しい。先月も手帳の六月十七日の項に、午後六時とだけメモがあり、それが何であるか思い出すのに五日間かかった。思い出せないくらいなら、どうせ大した用件ではあるまいと考えるようになったとき、突然それが北杜夫との対談の約束だったことを思い出した。(吉行淳之介「某月某日」番町書房)