メッセージ 『笑えない 麦わら帽子さん』 | ワンライフプロジェクトのブログ

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平成18年(2006年)に 福岡県筑後市で 『ワンライフプロジェクト』 という活動を立ち上げました。
『たったひとつの命だから』この一行の言葉にあなたは何とつなげますか?
 

笑えない麦わら帽子さん


私も心を取り戻せますか?  

私も笑えるようになりますか?  私も・・・


4年前の秋、大好きだった彼が 私に照れた顔で 真剣な表情で「結婚しよう』と言ってくれた。

3年間、ずっと片思いだった高校生時代。

社会人になって 再会して 付き合うことんになった日は、親友が本当に喜んでくれた。


そして6年間 いつも横にいてくれた。

喧嘩をしても私のワガママを許してくれた。

こんな私をお嫁さんにしてくれるって言ってくれた。



 あの日は 私が海を見たいと言った。

 小さい波が打ち寄せる青い海をみながら、一生、そばにいて欲しいと言ってくれた。

 肌寒い夕暮れに、涙が流れてこんなに幸せでいいのだろうかと思った。


 一生のうちで、一番幸せを感じた その日。

 その帰り道、突然、前から大きな光が近づいてきた。「アッ~」という彼の声を聞いた次の瞬間から、私の記憶はない。



 目を開けると、ぼんやりと母の顔があった。

 私は全身を縛られていた。

 動こうにも手も足も動かない。

 状況を理解するまで 長い時間がかかった。


 そうだ、光が光が近づいてきたんだった。彼は?彼は?


誰も答えてくれなかった。皆が目をそらす。どうして?どうして?


彼の親友が私の見舞いに来てくれて、話してくれた。

居眠り運転の対向車と衝突して、彼は即死だったと。

左座席の私をかばうように、右座席の彼だけが、犠牲になったんだよと話してくれた。


私も一緒にいきたかった。

君だけは助かるようにと、左の電柱を避け、微妙なハンドル捌きで一瞬にして、君だけは守ったんだ!そう聞かされて、私が喜べるわけがない。

そんなもの、そんな思いやりなんか私はいらない。

生きた彼だけでいい。

あなただけでいいのに。



時がたってくると、お前は生きれ、お前だけは生きれと 彼の声がするのがわかる。


お願い、私を責めないで。

生きる目標を失った私は何をしたらいいの?


教えてください。

たったひとつの命 彼の命が戻る方法はないの?



夢があった。

子供は3人、みんなでサッカーをする。

いつか、近くに星が見える山に移り住んで 自給自足の生活をしたい。そんな夢・・・ささやかな夢。


全てを 忘れて どう生きていけと言うの?彼の代わりはいないのに。


たった一つの命と同じ、たったひとりの彼。


私は忘れることは出来ない。出来ない。


友人達が あるいは家族が 私を心配してくれている。


もう、もう、彼は戻らない。


わかっています。

記憶がなくなってくれたら、彼の笑顔と声とぬくもりを 忘れられたら、こんなに苦しくないのに。


 

 でも、無理をしなくていいと そう 聞こえる彼の声。

心を取り戻す・・よくわからないけど、彼がくれた 私の命。

時間はかかると思うけど、顔だけは あげてみます。


 ~笑えない 麦わら帽子~ 


『たったひとつの命だから』第2巻より