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4、2018年10月、社会の変動と、私の場合

※アメンバー限定記事です。

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●事前検査アレコレ


自分自身の次子を考えるにあたり、いろんなタイミングや、先生たちからの情報などを勘案し、ひとまず採卵をしておこう、となった2018年秋。


海外でのPGT-Mを仲介する施設に連絡を取り、話を聞いたりこちらの状態を話したりして、採卵前の事前検査を行いました。


ありがたいことに、卵巣嚢腫以外に婦人科系の不調がなく、

長男も、子供が欲しいと決めてから数ヶ月での自然妊娠だったため、まっっったく不妊治療の知識がない私。


それに加えて、遺伝子検査等、PGT-Mに必要な検査のこともあり、やること全てが未知の世界で、1つの単語を聞いてはGoogle先生にお世話になりました。


肝心の、私と長男の遺伝子変異型は、すでに妊娠前と出産後にそれぞれ検査して特定済み(遺伝発症なので変異部位は同じ)だったため、再度の遺伝子検査は不要でした。


あとは簡単な事前検査など、PGT-Mに関する手続きはごくごく簡単(キットの郵送などは海外の検査機関とのやり取りのため、時間はかかりました)。

検査機関からは「PGT-Mを実施できます」という返答がきて、申込書や同意書を作成、提出でおしまい。



●具体的なPGT-Mの方法とは?


世の中の不妊治療は、原因が特定できていない場合は、

まず、排卵を補助したり、その周期を把握し、それに合わせたタイミング法や人工授精(AIH)を試す、といった段階から始まるそうです。


それでも妊娠できない場合などに、高度生殖医療(ART)と呼ばれる治療に移行します。


ARTとは、本来は体内で受精する精子と卵子を、体外で人工的に受精させ、場合によってはそれを数日培養してから子宮に戻すという「体外受精(IVF)」のことを指します。



体外受精にも種類がありますが、女性は、ホルモン薬などで卵胞(排卵前の卵子)を育てて、

ちょうどいい大きさになったら、薬で卵胞を成熟させ、排卵する前に膣から卵巣に針を刺して採卵します。



その方法も、

①薬などをなるべく少なくして1個〜数個排卵を誘発する低刺激法や、

②通常、排卵は一度につき1個ですが、ホルモン注射などで、人工的に卵胞を大量に育ててたくさん採卵する高刺激法があります。



受精方法も、

①採取した精子を卵子に振りかけ、自力で受精させる方法と、

②採精した精子の中から活動性の高いものを1つ選び、顕微鏡で1つの卵子の細胞質内に直接注入することで受精させる顕微授精(ICSI)という方法があります。



これを聞くと、今の不妊治療って本当にすごいんだなーと。

日本産科婦人科学会の2016年の統計では18人に1人の子供が体外受精で生まれているとか。




では、RBを含む、遺伝子疾患のPGT-Mの場合はどういう手順になるか。


これは、もうほぼ1択です。

高刺激でできるだけ採卵し、顕微受精。

可能な限り多く胚盤胞まで育てて遺伝しているかの検査、となります。



遺伝性RBの場合、患者の13番染色体(2本ある)のうち、一本の染色体上に変異があります。


簡単に言えば、男性、女性に関わらず、卵子や精子などの生殖細胞になる時に、それぞれ2本ある各染色体のうち1本が引き継がれます。


それが受精卵になって、母親からの一本と父親からの一本が合わせて2本の染色体になる。

たぶんちょっと違うけど大体あってると思う(笑)


つまり、患者の13番染色体のうち、正常な染色体Aか、遺伝子変異を持つ染色体Bのどちらが生殖細胞に引き継がれるかで、子供への遺伝が決まります。


RBは常染色体優勢遺伝といい、遺伝子変異のある染色体がどちらか1本あれば発症します。

なので、遺伝の確率はAかBかの50パーセント。



そして、遺伝しても必ず全員が発症するわけではないため、遺伝による浸透率(疾患を発症する確率)は49パーセントと言われています。


つまり、遺伝子変異を引き継いだ場合でも、100人に2人は遺伝していても発症しない場合があるということ(で概ね合ってるかな、たぶん)。

逆に言えば100人遺伝したら98人は発症するということになります。



遺伝の有無を調べるためには、卵子や精子などの生殖細胞は調べられないので、受精卵を体外で培養して細胞分裂を促し、胚盤胞という状態になってから、栄養外胚葉(TE)という、将来胎盤の部分になる細胞を採取し、そこから遺伝子を抽出して、遺伝の有無を調べます。


その後、遺伝していない胚があれば、子宮に移植し、着床したら妊娠、ということになりますが、

その着床前に全てを検査するので、「着床前診断」というわけです。



普通の不妊治療でも、胚盤胞まで体外で育てて移植する方法は珍しくありません。

PGT-Mの場合、検査期間がかかるため、胚盤胞は全て凍結し、結果が出て移植できるものがあれば融解して移植しますが、これも通常の不妊治療で一般的に行われています。



そして、もちろん。

体外受精のために誘発、採卵して、いくつか卵がとれたとしても、全て受精できるわけではありません。

また受精に成功しても、受精卵が全て胚盤胞になるとも限らず、

胚盤胞になったものを検査して、遺伝しているかしていないかは、単純計算で半分。


さらに、そもそも受精卵や胚盤胞には、RBの遺伝子変異を引き継いでいなくても、もともと他の染色体異常があり、着床しない、しにくい可能性も一定数あるはずです。

高齢になる程、卵巣機能は低下して、卵子の質も下がるため、染色体異常の確率も高くなります。



仮に、

10個採卵できて、

8個受精し、

6個胚盤胞まで育ったとしても、

それをPGT-Mで検査しても、RBが遺伝していない胚は3個あるかどうか。

そこからさらに、他の染色体異常があれば、着床率が下がったり、流産する可能性もあります。



わかっちゃいるけど決して、楽な道のりではない!

そして、やはり本来、普通の不妊治療では、体外受精かつ顕微授精は最終段階といっていいような高度治療となり、お金も桁違いにかかります。

(金額については後ほどまとめたいと思います)



私は経産婦だし、不妊だったわけではなく、採卵や着床の可能性は、普通の不妊治療より高いだろうとは思っていましたが、

一方で、卵巣嚢腫を摘出した右卵巣がきちんと排卵しているかや、単純に長男出産から3年近く経ち、加齢とともに卵巣機能も低下しているという心配もありました。




●クリニック初受診


そんな中で、2018年10月、仲介機関と連携して採卵をしてくれる、あるクリニック(Aとします)を受診しました。


某不妊治療の先輩(笑)のアドバイスを受け、確か生理3日目に受診。

なんかその頃じゃないと検査できない何かがあるらしい的な。



詳細は書きませんが、ひとまず採卵するまでは、普通の不妊治療の過程と同じなので、診察をし、採血をして、AMH(アンチミューラリアンホルモン、抗ミュラー管ホルモン)やその他必要なホルモン値などを測定したりしました。


ここら辺、よく知らないまま受けて、幸い数値に問題がなく、本当によくわからないまま通過してしまった。


本当は、採血の結果などが2週間後には出るので、そこでまた一回来てくださいねーという話だったのですが、

10月時点で、最短の採卵まで進むかはまだ決めきれていませんでした。


体外受精の説明会などもありましたが、ネット検索や友人からの情報で基本の流れはわかっていたし、

何が特定の不妊の理由があって体外に進む、というわけではなかったので、簡単なビデオを見た後説明用紙をもらってスルー。

料金表など一通り書類を受け取り、採卵時期が決まっていなかったため、申込書などはもらわずにひとまず帰りました。




そこから、実際に採卵周期に入ったのは、翌2019年1月末のことになります。