2、息子への遺伝①ー遺伝すると知ってー

2,息子への遺伝②ー遺伝子検査ー

 

●遺伝するかもしれないということについて

 

遺伝子検査をして、網膜芽細胞腫を引き起こした遺伝子エラーが分かった。

 

これによって何か手が打てるのか。実は、今の日本では何もできません。
両眼性は100%遺伝性です。少なくともそうでない例を私は知りません。その場合、子に遺伝する確率は1/2。子どもが生まれてから同じ遺伝子検査をすれば、遺伝したかしていないか確定診断ができる、ということくらいです。


前述しましたが、日本では産婦人科学会の指針により、遺伝疾患に関しては、「重い遺伝病」以外の着床前診断は認められていません。

検査を受けた2015年当時、アメリカの一部の州、イギリスなどでは網膜芽細胞腫の着床前診断が認められていることを調べ、渡米、渡英も頭をよぎりました。仲介業者(遺伝疾患に限らず、性別の産み分けとかやってる)から資料を取り寄せたこともありましたが、やはり現実的には考えられず。

 

もし私がまだ20歳とかなら考えましたが、悲しいかな、すでに30代に足を突っ込んでいた年齢で、仕事もある程度分かり多忙に過ごしており、「じゃあのんびり渡米を考えよう」という時間もあまりないように思えました。

 

 

 


悩んだ結果は、「やはり子どもは欲しいよね」という結論でした。遺伝したとしても、早期発見で早期治療にかかることができる。生存率も高い。私だって、こうして元気に生きている。遺伝子検査で確定診断もできる。そもそも、1/2なら遺伝しないかもしれない。

 

 

今、振り返って思うと、その認識は甘かったかもしれません。実際、長男には遺伝が見つかり、治療は1年半に及んでいます。この先、経過観察には入れたとしても、再発や二次がんへの懸念は一生つきまといます。

 

ただ、産んだことを後悔したことは一度もない。私に起因した疾患を遺伝させてしまったこと、それを申し訳ないと思うのは事実ですが、遺伝したから産まない、という結論は最初から私の中にはありませんでした。

 

 

新生児から治療が始まり、辛い思いもさせています。これから自分の病と向き合うたびに、悩むことも多いと思います。遺伝しなければよかったのに、ともちろん思います。

 

でも、陳腐な表現しかできませんが、世界一可愛い息子と過ごしている1日1日は、ただただ大切で、愛しくて、日々の成長がただただ嬉しくて、それは何事にも変えがたい事実です。

 


自分の体験をこうやって公で字に起こすにあたり、躊躇したのは、「遺伝するかもしれないと分かっててどうして子どもを作ったのか」「子どもがかわいそうだ」という批判や中傷があるだろうな、ということでした。「私(俺)なら、生まない、作らない」と考える人もいると思います。網膜芽細胞腫などの遺伝疾患の方でそういう道を選んだ人もいるかもしれません。

 

今は、他人の決断に、私が踏み込む権利はないように、私たち家族の決断に、他人が踏み込むこともできないと思っています。

 

 

1万5000人に1人の発症。両眼性は1/3、遺伝する確率は1/2、生存率は9割、一般的に妊娠初期で流産する確率は15%、羊水検査での流産率、30代妊婦の胎児の染色体異常の確率、眼球温存の可能性、化学療法での再発率、放射線治療の再発率、二次がん発生率…。

 

長男の妊娠、出産、治療を通して、確率や統計に振り回され続けてきました。今もです。

 

 

統計は社会的に全体を見るという意味で正しいと思いますが、その人の身に起こったことは、統計上の1、ではなく、一生涯の事実です。

たとえ1パーセントの確率でも、起こった本人にとっては100%。そこに統計や確率の意味はないと思っています。