夢の事象の物語『COLORS』

 

今回は今年の6月、

大山に向かう前夜に見た夢のお話です。

 

因みに登場人物は主人公を除いて

すべて有名な俳優・芸人さんでした。

どんな方が夢に出てきたのか

想像を膨らませながらお楽しみください。

 

第一話 ことのはのちょっとエロい夢

第二話 バベルの囚人

第三話 桜の精

第四話 売れない作家の集まる店

 

 

世界から日本という国が

一瞬のうちに消えてしまったと聞いた。

 

海底深く沈んだとも。

遥か上空へ上昇していったとも。

 

美しき国の人々へ

僕は今、精一杯にバグパイプを吹いている。

 

 

あれは僕が7歳の頃、

発語に障害があると診断されたある日、

遠く日本に住む祖母方の親戚の家に預けられた。

 

くるくるのおばさんパーマに

厚化粧のママが僕の口に小芋を運んでくれる。

 

「ほら、たんと食べなさいね」

 

次は人参、その次はさやえんどう。

 

せっせと僕に世話を焼いては

にっこりと微笑んでくれる日本のママ。

 

昼間は平気だったはずなのに

夜になると決まって寂しくなる僕の

お腹の上にポンポンと手を置いて

いつも魔法をかけてくれた。

 

「ねんねんころりよ おころりよ」

 

あの優しい温もり。

 

ママが口に運んでくれた人参を

もぐもぐしながら、キッチンを見遣ると、

豊兄ちゃんがタバコをふかしているのが見えた。

 

端正な顔立ちにパーフェクトなスタイル、

そしてなぜかボンテージ姿。

 

豊兄ちゃんのお気に入りのこの一着は

ご丁寧に股間の部分が開いていて、

大人のそれが放り出されている。

豊兄ちゃん曰く、

この服を最も美しく着こなすために

辿り着いた答えらしい。

 

とても奇妙だけれど、

確かに理に適っていると僕は思う。

だって腰元のラインがすごくきれいだから。

 

キッチンの窓から外を眺めて

豊兄ちゃんがふーっと煙を吐き出す。

 

「今は世の中の方がよっぽど奇妙なんだ。」

 

いつか豊兄ちゃんが

ぽつりと言った言葉を思い出す。

 

「内側にある美しさを見つめてごらんよ。」

 

そう言ってくしゃくしゃに笑ってくれた。

 

キッチンのテーブルいっぱいに

化粧品を並べるのは未華子姉ちゃん。

 

髪と化粧の仕上がりが気に入らなくて

朝からずっと不貞腐れているけれど、

僕にはどこが気に入らないのか

さっぱりわからない。

どの角度から見てもきれいなお姉さんだ。

 

僕がじっと見つめているのに気付いて

ニコッと笑顔を作った後、

バッグからスマホを取り出すと

勤め先に電話をかけ始めた。

 

未華子姉ちゃんがウィンクする。

 

どうやら今日はみんなで過ごす

素敵な1日になりそうだ。

 

そしてもう一人。

この家の居間には金庫があって

その上に3枚の座布団が積まれた一角。

そこに金髪の神様がいることを

誰も知らないみたいだったけれど。

 

神様はいつも僕に言うんだ。

 

「なんや言うて、この家族が好きやわ〜」

 

僕は神様のその言葉を聞くのが好きだった。

僕も同じ気持ちだったから。

 

 

 

世界から日本という国が

一瞬のうちに消えてしまったと聞いた。

 

海底深く沈んだとも。

遥か上空へ上昇していったとも。

 

発語は今も上手くいかないけれど、

涙が溢れて止まらないんだ。

 

Don't.... leave me.... alone.....

 

ここエディンバラから

内側に流れる1/4の故郷に向けて

僕はただ精一杯に音色を奏でる。

 

手嶌葵 / 散りてなお

 

※画像はすべてネットからお借りしました。