英雄の証明 | 3代目大村屋

3代目大村屋

映画・ダンス・旅行を中心に、日々感じた事を…

監督・脚本:アスガー・ファルハディ

出演:アミル・ジャディディ モーセン・タナバンデ

 

 SNSやメディアの歪んだ正義と不条理によって、人生を狂わされる男の姿を描いた作品。ラヒムは借金の罪で投獄され、服役中。ある時、婚約者が17枚の金貨を拾う。ラヒムはその金貨で借金を返済すれば出所できると考えたが、罪悪感を感じ、結局、落とし主に返す。それがメディアに報じられ、「正直者の囚人」として祭り上げられていく。ところが、 SNSを介して広まったある噂をきっかけに、状況は一変。大きな事件へと発展していく。2021年第74回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した。

 

 良かれと思った善行だったのに、嘘つき呼ばわりされて逆効果になってしまった。金貨入りのバッグを拾ったのは婚約者だったんだから、彼女が落とし主に返せば良かったんじゃないか、と思うけど、イスラム社会だと女性は目立ちたくないのかな。日本だと、遺失物は警察に届けるもんだけど、イランではそういう事はしないのか。あんなに派手に美談として扱われてやっかみもあっただろうし、元義兄はとにかくラヒムのことを嫌っていて、ラヒムは思った通りにことが進まなくていら立ち、何としても自分は返したということを証明しようとやっきになる。そしてバッグの持ち主をねつ造してしまう。これが一番アカンね。息子まで巻き込んで嘘をつかせるのは最悪だよね。

 

 SNSという現代のツールで誰もが被害者になり得る恐怖を感じた。そもそも、最初にこの美談が嘘だって書き込んだのは誰なの?ラヒムとは縁もゆかりもない人かもしれない。「囚人がちやほやされる」とねたむ人や、「囚人なんだから嘘ついているに決まっている」と偏見を持っている人もいるだろう。SNSは誰でも書き込めて、嘘でも広まれば本当のように思われてしまうから怖いよね。でも、些細な事でも嘘は良くないっていう、誰もが身につまされる教訓として受け止めた。

☆☆☆☆(T)