監督:マーク・タートルトーブ

出演:ベン・キングズレー ハリエット・サンソム・ハリス

 

 孤独な老人が隣人たちと共に奇想天外な騒動に巻き込まれながら人生の喜びを取り戻していく姿をユーモラスにつづったヒューマンドラマ。小さな町に一人で暮らす79歳のミルトン。ある夜、正体不明の飛行物体がミルトンの家の庭に墜落し、宇宙人と遭遇する。周囲に訴えても相手にされず、ミルトンは同年代の隣人サンディーとジョイスと秘密を共有することになる。それぞれ孤独を抱えていた3人は忘れかけていた人生の喜びを取り戻し、これからの人生と向き合っていく。

 ミルトンの家の裏庭にUFOが墜落。中から宇宙人が出てくる。弱った宇宙人を数日間、お世話をして元気になったら帰って行った。それだけなんだけど、なんとなくほっこりした。それまで、毎日テレビを見るぐらいしかやることがなかったミルトン。同じく一人暮らしの女性サンディーとジョイスも巻き込み、3人は協力して国家安全局から宇宙人を守る。秘密を守ることで3人に連帯が生まれた。宇宙人が帰った後も特別なことは起きない。でも、仲良くなった3人でこれからは楽しく過ごすんじゃないかな。


 ちなみに、宇宙人は人間の姿に似ているけど、緑色の皮膚で、顔もいわゆる宇宙人顔。だけど最後まで一言も話さない。それが年寄りにはいい話し相手になって良かったのかも。
☆☆☆(T)

監督:フィル・ロード クリストファー・ミラー

出演:ライアン・ゴズリング ザンドラ・ヒュラー

 

 アンディ・ウィアーのベストセラー小説を映画化。滅亡の危機に瀕した地球の運命を託された中学の科学教師が、宇宙の果てで同じ目的を持つ未知の生命体と出会い、共に命を懸けて故郷を救うミッションに挑む姿を描く。太陽のエネルギーが奪われる原因不明の異常現象が発生。11.9光年先に唯一無事な星が発見され、宇宙船でその星に向かい、謎を解くことになる。宇宙に送り込まれたのは、優秀な科学者だった中学教師グレース。地球から遠く離れた宇宙で、彼は同じく母星を救おうと奮闘する異星人ロッキーと出会う。2人は科学を共通の言語にして難題に立ち向かい、その過程で友情を育んでいく。

 

 宇宙人と遭遇すること自体、現実味がないし、さらに言葉を理解し合うのは無理があると思ったが、それでも2人の友情が美しくて感動した。最後にグレースは自分の意思ではなく、無理やり、麻酔を打たれて宇宙船に乗せられたことを思い出す。身勝手な地球人よりも、自分が死んでも助けようとしてくれたロッキーの方がよっぽど義理堅いと思ってしまった。最後は地球に帰還するかと思いきや…。でも酸素とかどうするんだ?夢のまた夢みたいなお話だね。

☆☆☆(T)

監督:マイリス・ヴァラード リアン=チョー・ハン

声の出演:ロイーズ・シャルパンティエ ヴィクトリア・グロボア

 

 1960年代の神戸を舞台に、日本で生まれたベルギー人の女の子アメリの成長を描いたアニメーション映画。アメリー・ノートンによる自伝的小説「チューブな形而上学」を原作に、2歳のアメリから見た生命と色彩、そしてウィットに富んだ彼女の言葉が織りなす情感豊かな世界を描き出す。外交官の家に生まれたアメリは異国日本で無敵の子ども時代を過ごしていた。大好きな家政婦のニシオさんや家族と過ごす日々は冒険で、新たな発見に満ちていた。ところが、3歳の誕生日、彼女の全てを変えてしまう出来事が起こる。アヌシー国際アニメーション映画祭で観客賞を受賞。

 

 日本生まれのベルギー人ノートンの自伝的小説を映画化。生まれてすぐは、おとなしくて、植物だと言われ、殻に閉じこもり、カプセルに入っていたアメリ。あるきっかけで自分を神だと思うようになる。表現方法が多彩でユニークだ。そしてそれを可愛らしく色鮮やかに描いていて、素敵だった。

 

 アメリは日本で生まれ、日本の家屋、風習、食べ物を自然と受け入れ、いつも近くにいてくれたニシオさんをこよなく愛する。日本での生活はその後、ベルギーに帰国してからは味わえない体験ばかりで、大人になって思い出しても懐かしく、ノスタルジックな記憶として刻まれたのだろう。子どもの時は不安や悩みがなく、悲しいことがあっても本当に悲しめるのはある程度年齢がいってからだ。アメリの毎日は楽しく、みんなを愛し、みんなからも愛されていた。それが壊れることがアメリには一番怖かったのだろう。それは、ニシオさんとの別れ。私たち日本人が見ても灯篭流しや、「恋のバカンス」や夏のスイカなど懐かしい描写が温かく描かれていた。
☆☆☆☆(T)

監督:ティム・ミーランツ

出演:キリアン・マーフィー エミリー・ワトソン

 

 クレア・キーガンによるベストセラー小説「ほんのささやかなこと」を映画化。アイルランドに実在した「マグダレン洗濯所」の人権問題を背景に、社会が長く黙認してきた現実を知ってしまった者の葛藤と決断を描く。1985年、小さな町に家族と慎ましく暮らす石炭商人のビルはある日、地元の修道院でそこに身を置く少女から「ここから出して」と懇願される。若い女性たちが行き場もなく苦しんでいる現実を突きつけられた彼は、見て見ぬふりをすることが賢明だと理解しながらも良心の責めに悩み、ある決断を下す。エミリー・ワトソンがベルリン国際映画祭で最優秀助演俳優賞(銀熊賞)を受賞。

 

 アイルランドに90年代まであった「マグダレン洗濯所」の人権問題にスポットを当てた作品。これはアイルランドやイギリスではかなり有名な事件みたい。過去に映画化もされているらしい。そういう施設や問題があったことすら知らなかったからちょっと分かりにくい部分もあった。カトリック系の修道院が運営する女性の更生施設という建前だったが、実際には未婚で妊娠した女性など、犯罪者ではない人も多く収容され、無給で洗濯仕事をさせられ、外に出ることも許されなかったらしい。映画では妊娠中の女性が炭置き小屋に閉じ込められていたり、明け方から多くの女性が働いていたりする様子が映っていたが、実際にはもっとひどいこともされていたんじゃないだろうか。

 そして主人公ビルは取引先である修道院長から、脅しともとれる言葉を言われて、見て見ぬふりをするかどうするか悩む。この修道院に逆らったらどうなるのか、そのあたりもよく分からなかった。アイルランドではカトリック教会の権力は大きく、修道院長に逆らって女性を助けることは相当勇気が要ることだったんだろう。もう少し丁寧に描いてほしかった。
☆☆☆(T)

監督:アンドレアス・ハートマン 森あらた

 

 日本の「蒸発」という現象を題材に描いたドキュメンタリー。日本では毎年約8万人が失踪し、そのうち数千人は完全に姿を消してしまう。彼らは「蒸発者」と呼ばれ、人間関係のトラブルや借金苦、ヤクザからの脅迫など理由は様々だ。いわゆる「夜逃げ屋」の支援を受け、別の場所で新しい生活を始める者もいる。知られざる「夜逃げ屋」の仕事や、蒸発者と残された人々の心の葛藤や和解を描き、日本特有の社会現象の実態に迫る。ミュンヘン国際ドキュメンタリー映画祭で最優秀作品賞を受賞した。

 

 様々な理由から蒸発する人は後を絶たない。映画では、逃げたい人を手助けする「夜逃げ屋」、借金苦や暴力団から逃げた人、突然行方不明になった家族を捜し続ける人、行方不明になった人を捜す探偵などを映す。以前見た「千夜、一夜」という映画では、蒸発した男性は「特に理由はなく、何となくふらっと家を出た」と話していたが、今回のドキュメンタリーでは、ヤクザに追われて、借金苦、彼女からの拘束が理由の人だった。1人の男性は逃げてから30年以上、身を隠していたみたいだけど、さすがにもうヤクザは追ってこないでしょと思った。もっと早く家族と連絡とっても良かったんじゃないかと思うけどね。住んでいる西成は居心地良かったんだろうか。恋人同士で逃げた2人は結婚もできないし、子どもを持つこともできない。不自由だよね。

 突然息子がいなくなってしまった母親は居場所を捜しているけど、個人情報保護が壁となって全く情報が得られない。逃げた側の人を見ていたら、何か理由があったのは分かるけど、残された人は何とか落ち着いて生活しているのだろうと考えるしかないのかもしれないね。逃げた、本当の理由も気持ちも会わないと分からない。いろんな人生があるんだなと実感した。
☆☆☆☆(T)