監督:ノラ・フィングシャイト
出演:ヘレナ・ツェンゲル アルブレヒト・シュッフ

 

 どこにも居場所がない9歳の少女の姿を繊細かつ強烈な描写で描き、ベルリン国際映画祭アルフレッド・バウアー賞(銀熊賞)など数々の賞に輝いたドイツ映画。父親から受けた虐待のトラウマを抱えるベニーは攻撃的で、里親やグループホーム、特別支援学級など行く先々で問題を起こしていた。ベニーは母親の元に帰ることを望んでいるが、母親はベニーに愛情を持ちながらも接し方がわからず、施設に押しつけ続けている。そんな中、非暴力トレーナーのミヒャは3週間の隔離療法を提案し、ベニーと2人で森の山小屋で過ごすことに。最初は文句を言っていたベニーだったが、徐々にミヒャに対して心を開き始める。

 

 最初は自分の感情をコントロールできない癇癪持ちの女の子という印象。でも、幼い頃に父親に虐待された過去や、母親と一緒に暮らせない寂しさが理由だと分かると、不憫になった。親の愛情に飢えて、それが得られないと人はこんな風になってしまうんだ、と衝撃を受けた。

 

 ベニーは自分を愛してくれる人には心からの信頼を寄せる。社会福祉課の職員の女性はいつもベニーに寄り添い、ベニーも彼女には素直に接することができる。あまり出てこなかったけど、里親も愛情深い人に見えた。ミヒャに対しても少しずつ心を開く。だけど、その愛情が少しでも揺らぐと、また捨てられて一人になってしまうのではないかという恐怖心を感じて暴れてしまうんだろう。愛情欠乏症とでも言えばいいのか。これは大人になってからも続くような気がする。子育ては難しい。でも親にはその責任があると思う。ただ一緒に暮らすだけでいいのにと思ったけど、それが難しい親がいるのも現実だね。
☆☆☆☆(T)