電子書籍のうれしい点・残念な点 | 感じる科学、味わう数学

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科学は、自然そのものというより、モデルです。数学は、関係性を捉える枠組みです。
だから、正しいか否かより、大事なのは視点です。

 まず初めに電子書籍の残念な点は、本を読みながらどれくらい読み進んだか、あとどれくらい続くのかがわからない点。だから、本を読んだときの達成感が弱い。これが紙の本と比べて、電子書籍のほとんど唯一にして最大の残念な点。
 反対に電子書籍のうれしい点は、かさばらない点。持ち運ぶにしても保管するにしても、紙の本よりもずっと小さい。他には、リンクを張れる点。関連する項目でも言葉の意味でもすぐに飛んでいける。そして、栞が要らない点。中断して読書を再開するとき、次の読むページが勝手に開く。何冊かの本を並行して読んでも読みやすい。

 ところで、電子書籍の最もうれしい点は他にある。「50ページ、100円」の本が売り買いできること、これが電子書籍の最もうれしい点である。
 紙の本は大体200ページほどで、値段にすると千数百円ほど、これくらいが標準だろう。これくらいの値段でないと、本屋は扱ってくれない。けれども「200ページ、千数百円の本」は書く方にとっても読む方にとってもハードルが高いのである。かたや「50ページで100円」なら、書く方にとっても読む方にとってもお気楽だ。
 その値段なら読者がお金を払いやすいだろう。買って読んでみて、もし面白くなくても、まぁ許せる。そう思えば、気楽に買えるだろう。もし面白ければお買い得だ。短時間で読めることは、せっかちな現代人にはそれもむしろうれしい。
 ところで著者の利益はというと、実は電子書籍は悪くない。紙の本の場合、流通経費や本屋の取り分があるので、著者の取り分は意外と少ない。売り上げの10%ほどが相場だ。それに対して電子書籍は単価は安くても、流通経費がほとんどかからないので、著者の取り分はむしろ多くなる。
 電子書籍での著者の取り分を25%として計算してみよう。200ページで1500円の紙の本が1冊売れたとして、著者の取り分はその10%の150円。50ページで100円の本が10冊売れたとして、売上合計1000円のうち著者の取り分はその25%の250円。
 アマゾンの場合、条件によって著者の取り分が70%になる。その場合は「200ページで1500円」の紙の本を1冊売るのと、「50ページで100円」の本を2冊売るのとで、著者の取り分がおよそ同じという計算になる。こうして読者も著者もうれしいのである。

 さて、実はいま仮題「感じる科学、味わう数学」を電子書籍にしようという話が持ち上がっている。私はすでに紙の本1冊分の分量をすでに用意しているのだが、その話が具体化したら次のように提案しようと思っている。
 ・・・ 70ページずつ3冊に分けて「1冊あたり300円、3冊まとめて500円」で売り出そう、と。
今はまだ儲かる儲からないを気にするような立場ではないが、戦略としてはありかな、と考えているところ。