[元気のひけつ:笑顔に近い顔で発声
声帯の老化を防ぐ声のアンチエイジング]
(朝日新聞 2012年9月18日)
声も老化するってご存じでしたか。
だいたい50歳ごろになると、人は自分の声の衰えを意識し始めるそうです。だったら、「声のアンチエイジング」というのも、あるのでしょうか?
「声帯は筋肉です。だから、足腰と同じように衰えます」と、新宿ボイス
クリニック院長の渡嘉敷亮二さん(東京医科大耳鼻咽喉科兼任教授)。
加齢とともに声がかすれたり、弱くなったり、高い声が出にくくなったり
するのが「声の老化」にあたる。
男性は声が高く、女性は低くなるのが一般的という。
声帯は、気管の一番上の空気の通り道にあり、主に筋肉と粘膜でできている。
左右に開閉して空気を通し、その際に起きる振動で、声の音程が変わる。
声帯がたるんでゆっくり振動すると低い声、ピンと張って速く振動すれば
高い声が出る。
体格で声帯の大きさは変わるので、通常、背の高い人ほど声は低い。
渡嘉敷さんによると「声帯のアンチエイジングも、スポーツと一緒」。
まずは日々、声を出して声帯を使うことだ。
ただのおしゃべりより、1日5分くらい歌うのがいい。
強弱、高低があるからだ。
「だらだら歩くより、ウオーキングの方が体にいいように、適度な負荷が
必要」
加湿のための水分補給も重要なポイント。
老化で筋力が衰えると、声帯を覆う粘膜が乾いてくるからだ。
歌い続けているプロの声楽家でも、声につやがなくなってくるのは、
このせい。
「だからプロは加湿器を持ち歩く。お風呂場で歌うのは、理にかなった声の
老化防止ですね」
歌手の楠瀬誠志郎さんが開くボイストレーニングスタジオ「ブレイ
ヴォーパラ」には、ビジネスへの効果を期待する男女が多く通う。
楠瀬さんは「いい声は、人の心をとらえる。コミュニケーションの始まりが
声なんです」と力説する。
レッスンがきっかけで、昇進した人も結婚した人もいるとか。
同スタジオでは、声帯を酷使せず、体全体に響かせて声を出す「胸振発声法」
を提唱する。
練習法を1つ、教えてもらった。
お風呂場などで、舌の力を抜いて、息を吐くと同時に低い声を出す。
これで声帯をゆるめることができるという。
東京工芸大工学部助教(音声工学)の森山剛さんは、「いい声」とは
要するに、人間の耳がとらえやすい声だという。
母音では「い」が最も周波数3キロヘルツが強く、耳にクリアに届くという。
「お、う、は、この帯域が弱いので、聞こえにくく感じる。話すときに口の
両端を少し上げて、全体的に『い』に近い発音をすると、相手に伝わりやすく
なります」
口の両端を上げてしゃべると、つまり笑顔に近い表情になる。
「いい声で話そうと努力すると、笑顔でコミュニケーションをとることに
なる。
声以外のアンチエイジング効果もあると思いますよ」と森山さん。
(冨岡史穂)
<インフォメーション>
いい声を研究する「声総研」の調査では、有名人の「モテ声」男性1位は
福山雅治、声の良さで「得している」のはお笑い芸人ケンドーコバヤシ。
東京工芸大の森山さんは「低めの声は、落ち着いて大人っぽい印象を与える。
だが低すぎると、大きい動物の鳴き声のようにかえって警戒心をあおって
しまう」。
http://www.asahi.com/health/hiketsu/TKY201209170120.html