言われたことをきちんとできるだけの日本人から、自分にしかない個性を出せる日本人になる<3> | Olive Twigs

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前回の、言われたことをきちんとできるだけの日本人から、自分にしかない個性も出せる日本人になる<2>からの続きです。

日本には「出る釘は打たれる」という意識があちこちにあるので、自分を積極的に出すということがデフォルトのように敬遠されてしまいがちです。なので、そもそも自分にしかない才能や特別な技術や知識などといったものを見つけ出したり、それを大事にしたり、もっと成長させようとしたりということがなされにくいと思います。そういうことをするのは、他を抜きんでようとするずる賢い、狡猾なことのようにすら思われたりすることすらあるくらいですよね。

日本には昔から武道、武術、○○道、というものが多様にあり、様々な職人の技の世界も価値あるものとされてきているのがあって、特に何か特殊な技術を高めることや、技への鍛錬、修練、精錬ということに対しての一般的な興味や関心も深いですよね。

また一旦その道に入ると、それを追求していく期待も高いですよね。特に芸術的なことや、お稽古事、スポーツや学校での勉強などとなると、とてもそれを磨き上げることに熱心になります。そして、個人の持つべき特別な価値ある才能というのはそういうもののことばかりだと思われがちでもあります。

そんな中で、それ以外の分野や、もっとありふれた分野や、あまり人に注目されないような部分で自分にしかない才能を見つけ出したり、ということは馬鹿げていることに思われがちです。それらを大事にして、高めていったり、それは価値ある素晴らしいことなんだという確信を持ったり、自信を持って邁進するのは、「頭がおかしいんじゃないか」とか、逆に「才能の乏しい人の負け犬の遠吠えのようだ」とか思われたりしそうで、そんなのはむしろ時間とエネルギーの無駄と考えることも多いでしょう。

自分にしかない才能や技能や知識や力というのは、実は本当に多岐にわたってあらゆる種類のものが含まれたりすると思います。

なにもオリンピックで記録を出したとか、ノーベル賞をとったとか、国際コンクールで優勝したとか、世界的な大企業を経営しているとかそういうことばかりではありません。制服のスカートやズボンに、大人の手を借りなくてもきちんと自分でアイロンをかけられるとか、年下の子の相手をしたり赤ちゃんをあやすのが上手とか、体が強く他の人が苦労するような重い荷物も運べるとか、相手の言わんとしていることがうまく汲み取れるとか、家具を組み立てるのが器用で早いとか、瓶についたテープをきれいに剥がすのが上手だとか、お蕎麦やパスタをちょうど良い硬さに茹でられるとか、キャンプで火を一から起こせるとか、怪我をしたらどうやって応急処置をしたらいいのかわかるとか、実際ただ歩いてここからあそこへさっと移動できることだけをとっても、大事な特別な技量、力であって、誰にでもあるものではありません。

自分にしかない才能とか技能や力というのは、そもそも他と競争して勝つために磨くものでも、自慢するために身につけるものではなく、自分の努力で勝ち取ったものでもなく、むしろ無償で与えられてきているものばかりです。だから英語の単語を持ち出して言うならば、特別な才能や技量というものはgiftと言われるのです。ギフトは与えられた、贈られたもので、対価を支払って得るものではありません。なので、堂々と確信をもって、感謝こそすれ、自分の手の中にあるからといって傲慢になるものでもありません。むしろ積極的にそれを持って周りに関わったり、周りに貢献するために使っていくためにあると言えるのではないでしょうか。

そういう角度から自分にしかないものを見ていくと、きっと誰もがたくさん掘り起こせるものがあるのではないかと思います。それを持って周りをみたら、同じ職場の中でも、何かの集まりやサークルの中でも、コミュニティーの中でも、地域の中でも、たまたま何かで席が隣り合わせになった人との間にも、豊かに与えていける、あなたにしかない宝物があるのではないでしょうか。