英語の壁をどう乗り越えられる? <その4> | Olive Twigs

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さて、前回前々回その前と、数回にわたって英語の壁をどのように乗り越えられるのか、幾つかのヒントになるものを書いてみました。

結局英語の壁を乗り越えるには、思うに単語や文法や発音やらが日本語と全然違うという言語的な壁がすべてでないということです。英語の知識やスキルや経験とは関係ないところで、その壁は乗り越えられる可能性がたくさんあるなと思います。

さて、前回お年寄りの中国人の移民は英語が全くしゃべれないのに英語圏で生活していっているという話をしました。

この中国人のつながりで、もう一つ別の例があります。
これは実際の私の経験からの話です。

椅子から落ちそうになる程びっくりしてしまったのは、かなり中国ではしっかりと勉強されたという様子の、東洋医学の中国人の先生(実際は西洋医学も勉強されているので、実際は両方わかっている方)に、カナダのトロントで診てもらった時のこと。

はっきり言って、先生に英語が全然通じません。簡単な英語の単語を使っても首を傾げられたり、中国語でなにやら返答されたり。

それで仕方なく、紙とペンを貸していただいて、漢字を使っての筆談となりました。

かなり学識や経験のある先生だとは認識していたので、とても簡単な英語の単語もわからない様子に戸惑いました。でもきっとこの先生は最近中国から引っ越してきたばかりなのかな、と思っていました。

ところが、筆談も交えて話をなんとか続けていると、

「中国からカナダに引っ越してきたのは、25年位前だ」

と。。。

「は!?今25年前って言いましたか??」

と、耳を疑いました。自分の聞き取り違いかと。

25年も英語(とフランス語)が公用語のカナダで生活しているはずなのに、こんなに英語がわからないって、いったいどうやったらあり得るのだろうか。。。しかも、中国ではかなり高等な教育を受けて医師となり、その後医師としての経験も積んでいるのであるから、それなりに知性はあると思うのですが、全然英語がわからないという状態なのです。

確かに、彼のクリニックに入ると、たくさんの患者さんが次々に入ってきて、ビジネスは繁盛している様子です。みなさん待合室で待っているのですが、実際9割以上は中国人ばかり。つまり彼は25年以上ずっとほぼ地域の中国人ばかりを患者として受け入れてきたので、それで仕事も生活も成り立ってきたというわけです。

もちろん北米にいながら英語を学ばずに、英語に関わらずに生活を続けていくという選択もありだとは思います。前回も書きましたが、こういうしっかりとしたコミュニティーや十分なサポート体制があれば。それを違うと言うとか、責めるとかいう気持ちは全然ありません。

ただこの先生と出会ってわかったのは、英語の壁を乗り越えて、英語を話す世界という社会的なフォーマットで、そこにいる人々と交流し、繋がっていきたいのか、それとも英語を話さない世界の中にフォーカスし、そこでやっていきたいのか、そういう選択の種類もあるのだということでした。この先生は後者をご自分で選択なさったのだな、ということでした。

とにかく、この先生の潔い選択と価値観は、コペルニクス的な転回とも感じられました。

色々な価値観はあるかと思いますが、これもすごく意味のあるものだと思いました。次回もう少し深く掘り下げてみたいと思います。