あじさい | ただ、過ぎに過ぐるもの



あじさいの咲くころ
思い出すのは
永井荷風の短編小説
「あじさい」
でも、この本のどこにも
あじさいのことは
書かれていない




あじさいや 雨にうたれて 毬おもく



義太夫の三味線ひき宗吉

下谷の芸者君香の物語
いちずに君香を愛する宗吉
男遍歴が絶えないため
かっての恋人に殺される君香
荷風独特の匂いのするこの話は
お芝居にもなっている


あじさいは色を変えるので
七変化ともいわれ
花言葉の一つは移り気
男性遍歴の激しい女性のことを
花柳界ではあじさいと呼び
この小説のタイトルも
ここに由来している


じめじめした梅雨を
明るい気分にしてくれる
あじさいの花と
君香のような女性
結びつくようでもあり
結びつかないようでもあり
不思議な花だなと思う