フィチン酸(phytic acid)って聞いたことありますか?
フィチン酸は、全ての穀物、豆、種(ナッツを含む)の皮についています。そう、全てです。
このフィチン酸は、体内でカルシウム、鉄分、マグネシウム、亜鉛、銅といった、あらゆるミネラル栄養素と強く結合してしまいます。これが問題なんです。
フィチン酸と結合したミネラル栄養素は、水に全く溶けなくなるものになってしまいます。
水に溶けない元素になる、ということは、腸からの吸収が完全不可能になります。
だから、せっかく体内に入れたミネラルも、吸収されずに体外に出されてしまいます。
その穀物(又は豆、種)が持つミネラルはもちろん、一緒に食べている他の食べ物が持つミネラルも吸収されません。
フィチン酸を取り除かないまま、穀物、豆、種を摂取し過ぎると、ミネラル不足になります。
よくあるパターンが貧血!
動物性のミネラル栄養素を避け、穀物、豆、種等の植物性のミネラルだけに頼っている方は、特に注意です。
貧血だけならまだいいですが、マグネシウムとカルシウム等が不足してしまうと、骨の状態も心配になりますね。
骨は大人になっても、しっかりと面倒を看てあげないといけないものなのです。
特に女性は!
では、ここで質問!
どうやってこのフィチン酸を取り除くことが出来るのでしょうか???
熱?
熱をいくらかけても、フィチン酸は全く消えません。
フィチン酸を取り除くのは、意外と簡単なんです。
そしてこの方法は古代から行われていました。
A.水に一晩浸ける。
B.発芽させる。
C.発酵させる。
の、どれか1つでいいのです。
これだけで、フィチン酸が中和されて、ミネラルと結合しなくなり、十分にミネラルが体内で吸収されます。
Aの水に一晩浸けるのは、超簡単。
穀物でも豆でも種(ナッツ)でも、これは手軽に出来ますね。
前もって、何を料理するのかを決めておく習慣をつけたら、マスター出来ます。
一晩浸けておいて、すぐに使わない場合でも、冷蔵庫で保管出来ます。(浸けたままでも、ざるに上げておいてもOK)
ナッツの場合は、ディハイドレーター等で45度以下で完全に乾燥させれば長期保存も可能です。
Bの発芽させる方法も簡単。
まずは水に一晩浸けておいておき、ざるに上げます。
そして、毎日最低でも2回は水で洗ってざるに上げる、というプロセスを室温にて2~4日繰り返します。(気温によります。)
この発芽のプロセスをする時、私は、キッチンのざるの数が少ない為、ガラス瓶を使っています。(ハエが心配ということも理由にあるのですが。)
ガラス瓶に発芽させたいものを入れ(体積が増えますので入れ過ぎないように)、瓶口にガーゼをつけてゴムで止めておき、一晩浸けた後、逆さまにして水を出す。
ガーゼがしっかり瓶口についているので、中のものは落ち出てきません。
そして、瓶口から水を入れ、適度に振って、また逆さまにし、水だけを出す。
それをそのまま、室温においておきます。
次に洗う時も、同じく、水を入れて、振って、逆さまにして、水を出す。これを1日最低でも2回行います。
気温にもよりますが、2~3日後ぐらいには、小さな芽が出てきます。
モヤシほど長くさせる必要はないです。
3~5ミリほど出ている感じで、十分発芽したことになります。
モヤシとして食べたい方はもっと伸びるまでプロセスを繰り返せばいいのですが…
発芽したものは冷蔵庫で3~5日は保管出来ます。
この発芽プロセスは、フィチン酸をなくすだけでなく、ビタミン栄養素(特にビタミンB)や酵素の量が3倍ほどアップします!
増やせるものは、どんどん増やしてしまいましょう!
ちょっと得した気分?
また、発芽された穀物や豆は、そのまま生でも安全に食べることが出来ます。
発芽すると、穀物も豆類も柔らかくなるんです。
発芽された穀物、豆、種は、酵素がたっぷりなので、熱を通した場合(酵素が死ぬ)より、生のほうがかえって消化しやすいことがあります。
ただし、ちゃんとしっかりと噛んだ場合ですよ。
沢山噛ことで唾液の酵素も増えます。
酵素は消化において欠かせないものなんですね~。
私はよく、発芽させたヒヨコ豆(chick Peas)や、レンズ豆(Lentils)を生のままサラダに入れています。
歯ごたえが合って、美味しい。
そして、しっかり発芽しているので、豆特有の「おならが出る」、ということがありません。
発芽したひよこ豆で生フムス(Raw Humms)も作ります。
熱を使う通常のフムスとはちょっと味がちがいますが…
発芽した豆をスナックとして食べることもありますよ。天然塩やスパイスをふりかけて…
また、発芽した大豆で納豆を作ったことが何回かありますが、発芽によって、大豆が既に柔らかくなるので蒸す時間がかなり短縮出来ました。
蒸す時の熱で酵素は一度なくなりますが、納豆菌で発酵する際にまた酵素が発生します。
穀物も表面の皮が付いていれば、ちゃんと発芽出来ます。
まだ穀物を頻繁に食べていた頃は、発芽した玄米、蕎麦、キヌア(厳密には穀物ではないですが)をサラダに入れることもありました。
最近は、発芽させたも穀物を乾燥させて販売されているものも見かける様になりましたね。発芽玄米とか。
発芽させた麦を、しっかり乾燥させて、粉にした場合、発芽全粒粉なんていうのも可能になりますね。これはまだ見かけたことがないですが、グラインダーがあれば、家で作れそうですね。まだ酸化されていない状態の新鮮な粉を使うなんて、とても贅沢~。
種(ナッツ類)も皮が付いていれば、発芽させることは可能です。
ただ、ナッツの場合は、発芽するスピードは遅いです。ほんのちょっと出ているかな?ぐらいでOK。
例えば、アーモンドの場合、1ミリ出てるか出てないくらいで十分なんです。
ナッツを発芽させた後は、ディハイドレーター等で完全に乾燥させることをお勧めします。長期保存しやすいです。(45度以上の熱はかけないように注意しましょう。)
豆も、発芽した後は、乾燥させることが可能ですよ。
一つだけ注意!
いくら発芽させていても、食べないほうがいい豆があります。
Kidney Beans(そら豆)です。
これは、熱を通さないと消えない毒素があるので、注意です。
最後のC、発酵させてフィチン酸を取り除く、という方法は、ちょっと手間が掛かりますが、これは、一番いい方法!
というのも、発酵することによって、消化しにくいたんぱく質(特にグルテン)を含むものがかなり消化しやすくなるからです。
特に過剰にハイブリッドされたオーストリア産の小麦粉!
オーストラリア産の麦は、強い日光でも育つようにと、(もともと麦はオーストラリアでは存在していませんでした。)かなりハイブリッドされ、現在のものが作られたのです。
結果として、オーストラリア産の麦はグルテンの量が異常に多くなっています。
これは、オーストアリア産の小麦粉ではお腹が膨れて痛くなるのに、他の国の小麦粉は大丈夫な場合が多かった私が、調べに調べた結果、やっと分かったことです。
発酵をすることで、この消化しにくいグルテンがある程度分解されます。
グルテンアレルギーやグルテン不耐症(gluten intolerant)の人が、発酵されていない小麦粉で作ったパンやケーキを食べると不調を起こすけど(特にオーストラリア産のものは)、発酵された小麦で作った酵母パン(sourdough bread)やケーキ等は結構大丈夫、というパターンが多いのも、発酵のお陰なんですね。
ただ、敏感な方だと、いくら発酵されていても、しっかり長期で発酵されたものと、適当に短期間で発酵されたものとの違いが分かりますね。
発酵させるのにはいろいろな方法があります。
場所や文化によっても違います。
私は発酵しやすい物を水と一緒に入れて浸けておく方法をよく使います。
例としては、乳清、手作りヨーグルト、手作りビネガー、酵母菌、麹塩、漬物の汁、キャベツ汁等。
また、発芽させたものを、発酵することも可能です。
フィチン酸は、中和させてから摂取する。
出来るところから、是非始めてみて下さい。
ミネラルをしっかり吸収出来る体を作るだけでなく、消化力もアップします。
消化については、試しに、何もしていないそのままのナッツと、中和させた(水に一晩浸けていた、又は発芽させた)ナッツを食べ比べてみて下さい。
お腹へのもたれが全然違うことに気づくと思います。
穀物、豆、種(ナッツ)をどうしても水に一晩浸けることも出来なかった場合は…
その時に一緒に摂取しているミネラルは無駄になっているので、別の時で、フィチン酸がないものを食べている時に、しっかりとミネラルを摂取しましょうね。
植物性のミネラルだけに頼るのもちょっと注意してみて下さい。
フィチン酸は皮の部分にたっぷりついていますので、玄米や、玄米粉、全粒粉で作られたパンやパスタは意外にも落とし穴です。(発芽や発酵されているものはOK)
食物繊維が摂れるからとか、便秘予防にいいからと言って、麦糠(Bran)やPsylliumがよく使われていますが、フィチン酸を中和させないままで摂取するのはミネラル不足の原因になります。これらが朝食シーリアルになっていたりもしますね。
これらのものを、どうしても食べる場合は、最低でも水(又はその他の液体)に一晩つけておきましょう。
便秘の本当の原因は水分不足と運動不足。
植物繊維は穀物ではなく、野菜から、が基本ですね。
フィチン酸については、医療関係の方でもあまり知識がない方が多いようで、たまにびっくりしてしまします。
「食物繊維を摂るためにPsylliumや麦糠(Bran)を毎日食べて下さい!」
なんて勧めて、フィチン酸を中和化させる必要性を説明しないのには、毎回疑問を持ちます。
古代の人は、穀物、豆、ナッツのフィチン酸を、きちんと中和させてから食べていた。(フィチン酸自体の知識はなかったにもかかわらず)
お米が主食の日本でも、まだ精米がなかった頃の昔は、玄米を必ず一晩水に浸けてから、炊くのが当たり前だったそうですね。
現代では、穀物や豆を一晩水に浸ける、なんてことはあまり聞かないですし、最新テクノロジーの炊飯器で玄米を炊いたり、圧力鍋で穀物や豆を調理したりして、とにかく「短時間で柔らかく!」が重視されているように思えます。
でも、これではフィチン酸は残ったままです。
面倒臭がらず、きちんと中和させてからお料理しましょう!
先祖の人達から学ぶことは多いですね。