『ミュージック・ヒストリオグラフィー』

(ヤマハミュージック

 エンタテインメントホールディングス

 2023.6.10/2024.1.1. 第2刷)

 

副題「どうしてこうなった? 音楽の歴史」

 

以前、同じ著者の

『名曲のたくらみ』

ご紹介した際に

「生協のカタログで見て

 買ったまま

 放り出している」

と書いた本です。

 

放り出していたのは

生協のカタログで見て注文し

届いたのが上記の通り2刷でして

その後、塾の会議のために

秋葉原に行った際

同地の書泉ブックタワーで

初版を見つけてしまったため

読む気を阻喪したという

しょーもない理由なんですけど

それはともかく。

 

 

以前の記事で

本のタイトルを

『ミュージック・ヒストリー』と

間違えたことに

さっき当の記事を見直して

気づきました。

 

正しくは

『ミュージック・ヒストリオグラフィー』

です。

 

ヒストリオグラフィーというのは

「はじめに」によれば

元々、ヒストリー(history=歴史)とグラフィー(- graphy=書くこと)が合わさってできた言葉で、そのものずばり「歴史を書くこと」を意味しました。そして近年では「歴史がどのように語られてきたのか、これまで歴史家が過去の出来事をどのように解釈し、どのように評価してきたのか」を論じる学問を指す言葉となっています。(p.15)

とのことです。

 

そういう内容の本ですが

非常に読みやすく書かれており

「学問」臭さを感じさせず

あっという間に

読まされてしまいました。

 

 

自分はもともと

グスタフ・レオンハルトの

チェンバロ演奏をCDで聴いて

バッハをはじめとする

バロック音楽や古楽演奏に

ハマってきた人間です。

 

それもあって

古楽演奏について書かれている

240ページ以降の記述を

興味深く読みました。

 

240ページ以降では

音楽史における女性作曲家や

女性演奏家についても

言及されていて

そちらも興味深く

読ませていただきました。

 

著者が参考文献であげている

ブルース・ヘインズ『古楽の終焉』や

小林緑(編)『女性作曲家列伝』は

自分も読んでいましたので

全く知らないことばかり

書かれているわけでも

ないんですけど

改めて知識を確認できた

といったところでしょうか。

 

もちろん

知らないことも書かれていて

勉強になった部分も

たくさんあったりします。

 

 

ちょっと例をあげれば

ウェンディ・カルロスの

『スイッチト・オン・バッハ』は

自分も聴いてますけど

「ウェンディ」なのに

演奏者が女性だと

全く意識しなかったというか

全く気づいてませんでした。

 

本書の251ページに

ウェンディ・カルロスの

伝記の表紙が載っていて

ポートレートを

見ることができますが

それを見た途端

ちょっと衝撃を受けたり。

 

なぜ女性だと思わなかったのか

ということを考えてみるのも

面白そうですけど

それはまた機会があれば

ということにして。

 

 

作者は「あとがき」で

以下のように書いています。

 昨今(略)歴史軽視が見られるように思う。その背景には物事を「役に立つか立たないか」だけで判断し、「役に立たない」と判断しようものなら速攻廃止論に向かう、大変近視眼的としか言いようのない風潮があるように感じられてならない。(略)世知辛いことにそのような「役に立つか役に立たないか」はたいがいの場合、「即お金になるかならないか」なのだ。(略)しかしながら歴史というものは、そのような即物的な尺度でもって無くすとか無くさないとかいうようなものではない。私たちはともすると歴史を「昔々の事象を扱うこと」だと勘違いしがちだが、歴史とはモノの見方の指標、視座にほかならない。(pp.296-297)

つまり本書は

なぜ「音楽」に対して特定の

「モノの見方の指標、視座」が

生まれたのかを

問い直すことを目的としている

というふうにいえましょうか。

 

ある種の楽曲が

「名曲」だといわれ

そう信じられるようになったのは

どういう背景があるのか

ということを考える本

といってもいいかと思います。

 

 

というわけで

クラシック音楽に

普通に関心のある方には

お勧めです。

 

まあ、詳しい人なら

こんなこと知ってるよ

というようなことが

多いかもしれませんけど(笑)

 

もっとも

音楽史という方法論が扱うのは何も、何百年もの前のヨーロッパのクラシック音楽だけではない。ジャズもロックも、日本の演歌もJ-POPもすべて歴史という方法論で語ることができ、語ることが必要なのである。(p.287)

という作者が

書くものですから

クラシックに詳しい人も

知らない記述だって

あるかもしれず。

 

たとえば

146ページからの

《ボギー大佐》という

曲をめぐる受容史などは

その好例かと思います。

 

いずれにせよ

クラシック音楽には価値がある

と漠然と考えている方に

(そう考えていない方であれば

 なおさら、といえるかも)

お勧めの1冊かなあ

と思った次第です。