(朝日新書、2026年2月28日発行)
副題「音楽史から解き明かす10章」
こちらは確か先週の金曜日
日本近代文学館経由
国立国会図書館行きの後
新宿の紀伊國屋書店に寄って
注文しといた本を
受け取りに行った際
文庫・新書の新刊コーナーで
目にとまった1冊です。
こちらも
『贅沢な戯れ』同様
自分には珍しく
あっという間
(その週の内)に
読み終えました。
オビにデカデカと
「バッハの「超有名作」は別人作?」
とありますけど
目次を見てみたら
「超有名作」というのは
トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
のことでした。
トッカータとフーガ ニ短調が
元々ヴァイオリン曲として
書かれたのではないか
という説があり
ヴァイオリン協奏曲や
ヴァイオリン独奏曲に編曲した
復元録音盤があることは
知ってましたけど
(以前にもこちら↓で書いています)
さらに
別人によるアレンジである
という説があることを
今回初めて知った次第です。
ちなみに
「この曲が日本で
ここまで有名なのは
嘉門タツオの「鼻から牛乳」の
おかげだろう」
と書いていて
いささか鼻白みますが
(洒落ではありませんw)
この記述からも分かる通り
地に足のついているというか
分かりやすく親しみやすいのも
あっという間に読めた理由かと。
自分の関心があるところでは
バッハの他
ヴィヴァルディの《四季》や
ヒルデガルド・フォン・ビンゲンの
〈おお、貴方の教会〉O Ecclesia
バダジェフスカの〈乙女の祈り〉が
取り上げられています。
〈乙女の祈り〉については
以前、必要があって
調べたことがあるのでした。
誰でも知っている有名曲
という扱いですけど
自分の場合
耳にすれば
知っている曲だと思うものの
旋律が頭にすぐに
思い浮かばないもので。(^^ゞ
あえて
一般的な名曲リストから
漏れるような曲として
ビンゲンのヒルデガルドの他
フレディ・マーキュリーの
〈ボヘミアン・ラプソディ〉も
取り上げられています。
〈ボヘミアン・ラプソディ〉も
自分にとっては
旋律がすぐに
思い浮かばない曲です。( ̄▽ ̄)
それはともかく
著者のあとがきを踏まえて
簡単にまとめれば
歴史音楽学の視点から
いわゆる「名曲崇拝」とは何か
ということを問い直した1冊
ということになりましょうか。
「名曲崇拝」というのは
クラシックだけでなく
ポピュラー音楽にも見られ
そうした「信仰」が
多様な受容のあり方を
固定化してしまう
ということを問題にしています。
むしろ
クラシックに見られる
(見られた?)名曲崇拝が
ポピュラー音楽を受容する姿勢に
転移してしまったところもあり
そこらへんは
なかなか興味深い
と思ったことでした。
ヒルデガルドを取り上げたのは
「女性作曲家、
エスニック少数派による作品」が
「つい最近まで
顧みられることのなかった
理由について
今一度考え直す契機を
意図している」からだそうです。
その問題提起の内容は
ある種の進歩史観的な考え方が
ヒルデガルドの楽曲を
一度は歴史の彼方に
埋もれさせたのではないか
ということのようです。
その妥当性や
説得力については措くとしても
進歩史観に物申す姿勢は
嫌いではない、というか
むしろ好きだったりします。
ちなみにバッハの章だと
偽作・疑作問題に焦点を当て
作者が誰かということが
私たちの判断に
影響を与えているのでは
という問題を提起しています。
個人的には
偽作・疑作である
と問題提起されることや
そうだと判明することに
ワクワクさせられるんですけど
それというのも
いわゆる名作だという意識が
自分には乏しいからかも。
こちらのブログでも
すごいと思った曲を
いくつか取り上げてますが
その際、自分がなぜ
その曲がいいと思ったのか
ということを意識しながら
書くようにしているつもりです。
そこらへんは
本書の問題意識と
通底しているのかもなあ
と、手前味噌ながら
嬉しくなったことでした。
バッハの章などは
フェルメールの偽作事件から
書き始められていて
クラシックにとどまらず
読物的に興味を惹き
読み手の注意を
そらさないような
書き方をしており
いろいろな蘊蓄が
散りばめられています。
そうはいっても
基本的に初心者向けの本だろう
と思っていたら
「ヴィヴァルディは
500本近い協奏曲を
書いたのではない。
同じ協奏曲を500回書いたのだ」
という発言について
ストラヴィンスキーだと
思っていたら、さにあらず
別の音楽家の名前があげられ
「一説にはストラヴィンスキー」
だと書かれていて
足元をすくわれた次第。(^^ゞ
ロンドン大学で
講義を担当しているだけあって
巻末の参考文献が
全て英語文献なのには
さすがというか
参りました感が強い(苦笑)
第2回音楽本大賞を受賞した
『ミュージック・ヒストリー』は
生協のカタログで見て買ったまま
放り出しているので
これから読んでみようかな
と思っております。
というわけで
長くなりましたけど
いわゆるクラシック通はもとより
そうでない人にも
おすすめの1冊かと
思う次第です。

