本日の朝6時からの
NHK FM《古楽の楽しみ》は
〈オリジナル・チェンバロの響き〉
という特集の第5回
(最終回)でした。
ナビゲーターは
チェンバリストの濱田あや。
今回のシリーズは結局
うつらうつらしながら
聴いてからは
第3回は寝坊して
途中から聴くことになり
第4回は起きられず
(国会図書館に行く用事を
控えていたので目覚ましも
セットしなかったんですけど)
第5回は目覚ましをかけて起き
なんとか聴き通すことが
できた次第です。
5回目の今朝は
ジャーマン・チェンバロに
焦点を当てていて
すべてバッハがらみの曲
というプログラム。
最初にかかったのが
グスタフ・レオンハルトの
半音階的幻想曲とフーガ ニ短調
BWV903 で
公式サイトでは規格番号を
セオン Seon: SB2K 60375
と記してましたけど
検索してみたところ
ソニークラシカルから出た
2枚組の再編集アルバムのようです。
自分はその盤ではなく
以下の盤で持っております。
〈オーセンティク・ベスト50〉24
《J・S・バッハ:
チェンバロ協奏曲 第1番
半音階的幻想曲とフーガ ニ短調》
(BMGビクター BVCC-1857、1992.5.21)
録音は
チェンバロ協奏曲が1981年11月で
その他が1976年12月ですから
こちらの盤も
明らかに違った時期のものを
再編集したものになりますけど。
使用楽器は
マルティン・スコヴロネックによって
修復された
クリスティアン・ツェル制作の
ジャーマン・チェンバロです。
番組ではこの曲に続いて
『アンナ・マグダレーナ・
バッハの音楽帳』に
書き込まれている
声楽曲とポロネーズが
ゲルリンデ・ゼーマン(S)と
バンジャマン・アラールの
クラヴィコードによる録音が
流れました。
これは、映画
(ストローブ&ユイレ、1968)の
一場面で流れているかのような
プライベート感あふれる演奏で
なかなか良かったです。
本演奏は
バンジャマン・アラールの
《バッハ:鍵盤のための作品全集》
第10巻に収録されているようですが
アラールの全集といえば
途中まで買っていたんですけど
挫折して第10巻は持っておらず
今回の放送を聴くと
残念でなりません。
そのあと
アーポ・ハッキネンの
1段鍵盤楽器による
平均律クラヴィーア曲集
第1巻の第17番と
バンジャマン・アラールの
3段鍵盤楽器による
同じ曲集の第23番が
流れました。
濱田は
バンジャマン・アラールが
まだ10代だった頃の演奏を
直接、聴いているそうで
あまりの名演奏であるため
どういうふうに弾いているのか
身を乗り出してしまった
(あるいは、詰め寄ったのかもw)
というエピソードを披露。
アラールとはその後
(かどうか分かりませんが)
言葉を交わすようになり
オルガンでチェンバロ曲を弾く際
どういうアプローチをするのか
聞いたことがあると
話してました。
続いて
同じくアラールによる
3段鍵盤楽器の演奏で
ブランデンブルグ協奏曲
第5番の第1楽章が
流れました。
史上初の
クラヴィーア協奏曲としても
名高い本曲は
バッハがケーテン宮廷にいる時
ベルリンまで
ミートケ制作の2段鍵盤楽器を
受け取りに行ったのをきっかけに
生まれたというのが定説です。
番組でもこのことが
話されていましたけど
それを3段鍵盤で弾くのはどうよ
と思わずツッコミを
入れたくなったのは
ここだけの話。( ̄▽ ̄)
ちなみに
アラールが弾く3段鍵盤楽器は
もともとはラファエル・プヤーナが
所有していたもので
死後、競売にかけられて
どこぞの博物館(だったかな)の
所有になったという話も
してました。
続いて
ゴルトベルク変奏曲の第30変奏を
ボブ・ファン・アスペレンが
ミヒャエル・ミートケ制作の
レプリカを弾いたものが流れました。
そして最後に
濱田自身による
ゴルトベルク変奏曲の終曲
アリア・ダ・カーポが流れて
今回の特集の最後を
飾っておりました。
濱田による
ゴルトベルク変奏曲の録音は
こちら。
(Evidence: EVCD 098、2023.10.6)
こちらの録音では
ジャーマン・チェンバロではなく
ルッカース制作の楽器
すなわちフランドル製の楽器が
使用されており
CDの解説(濱田訳)を読むと
2度改修されていて
2度目の改修者がパリ在住の
ドイツ人だったそうです。
だから問題ない
という説明が
放送ではされず
バッハの楽曲は
必ずしもドイツ製の楽器に
よらなければならないこともなく
楽曲によって適切な楽器を
選ぶことが求められる
というような前説がありました。
まあ、特集の最後を
ゴルトベルク変奏曲の
最終曲で終える
という趣向にしたかった
という気持ちも
分からなくはないですけどね。
ちなみに
濱田の演奏は
全ての楽章に記された
ダ・カーポに従い
全ての楽章について
繰り返し演奏をしています。
ですから録音時間は
80分を超えます。
2022年2月12日に
京都で行われた
というコンサートの映像は
なんと90分にも及んでます。
以下に貼り付けておきますが
気軽に聴き通すというわけには
いかないかも(苦笑)
例によって
アドレスも貼り付けておきます。
この時の楽器は
ミートケ制作の楽器に基づく
コピーのようで
録音で使ったルッカースと
甲乙つけ難いくらい
なかなか良い響きです。
番組で使用された
アリア・ダ・カーポの
音源もありましたので
お急ぎの方はこちらをどうぞ。
例によってアドレスでも。
昔の録音であれば
グレン・グールドはもちろん
レオンハルトも
繰り返しを
省略していたものですけど
最近は全て繰り返す録音が
多く見られるようになりました。
以前
曽根麻矢子が
ゴルトベルクを再録音する際
楽譜通りに全て繰り返した演奏を
したにもかかわらず
初録音の時より
テンポが遅くなっていたらしく
1枚に収めるのは無理だった
という結果になったことがあります。
そのとき
全部でどれくらいだったのか
気になるところですけど
80分超えのCDが出せる今なら
収められたのかなあ
とか考えちゃいますね。
今回の5回にわたる特集では
濱田がところどころで
このチェンバリストと会った時に
こういう印象を受けたとか
こういう話をしたという
エピソードを語るのが
印象的でした。
後半しか聴けなかった第3回では
アンドレアス・シュタイナーの印象を
語っていましたし
今回も
最初にチェンバロを購入する際
どこの国のにすべきかを
ピエール・アンタイに相談した
というエピソードを披露していて
おおっ! とか思ったり。
アンタイの答えは
ジャーマン・チェンバロが
ドイツはもちろん
イギリスの曲にも合うので
最初に買うものとして
おすすめだというような
ものだったかと記憶します。
さすがにフランスの曲については
ジャーマンだと今ひとつ
というところもあるようですね。
(と濱田が語ってたと
記憶しているんですけど)
アンタイは
レオンハルトに師事してますから
やはりレオンハルトに師事した
スキップ・センぺの
レッスンを受けている濱田にとって
アンタイは兄弟子に当たるのかなあ
なんて思いながら聴いておりました。
ちなみに
ボブ・ファン・アスペレンも
レオンハルトの直弟子
だったりしますが
バンジャマン・アラールは
レオンハルトとは別系統の新世代
ということになるんですかね。
ラファエル・プヤーナは
ランドフスカの弟子なので
ひとつ上の世代
ということになりましょうか。
なお、先に名前を出した
曽根麻矢子が師事したのは
スコット・ロスです。
ただ今回、曽根の
ゴルトベルク初録音のCDを
引っ張り出してきて
ライナーに目を通していたら
なんと、アドバイザーで
スキップ・センぺが
関わっていたと書かれており
この記述は忘れていたため
びっくりさせられました。
意外な人物が意外なところで
関係しているあたり
まるで山田風太郎の書く
明治ものの小説を
彷彿させなくもないですね。
ところで
濱田の公式サイトの
「マンスリー・ニューズ・レター
Vol.182」には
今回のオンエアで使った
CDのジャケットを
並べた写真が載っています。
自分は
視覚的な情報をもとに
つまり
ジャケットのデザインを記憶して
CDを探すことが多いので
これは実にありがたい。
当方が手持ちのCDは
先に第2回の感想でもふれた通り
濱田とフォルンスハイムの他
クリストフ・ルセの
ルイ・クープラン盤だけなのが
ちょっと悲しい。
それから
なぜ聞き逃し配信がないか
ということも説明されており
なんとなく想像していましたが
大人の事情が背景にある
というのは
切ないものですね。


