どういうきっかけだったか

憶えていないんですけど

ロック・シンガーのスティングが

ジョン・ダウランドの

リュート歌曲を歌っている

アルバムがあると知り

興味をそそられて

中古で入手してみました。


スティング《ラビリンス》

(ユニバーサル クラシックス&ジャズ

 UCCH-1018、2006.9.27)

 

原題は Songs from the Labyrinth

(ラビリンスからの歌曲集)で

邦題は《ラビリンス》です。

 

レーベルは

ドイツ・グラモフォンで

スティングの他に

リュート奏者の

エディン・カラマーゾフが

演奏に加わっています。

 

 

元盤ライナー小冊子を見ても

邦盤ライナー小冊子を見ても

録音がいつどこでされたのか

ということは書かれていません。

 

それでいて

エディン・カラマーゾフの

使用楽器については

何年に誰が製作した何コースの楽器で

どういうオリジナルのコピーなのか

ということが記載されています。

 

そこらへんは

ドイツ・グラモフォンらしい

というべきなのかどうか。

 

ちなみに

スティング自身も

アーチリュートを手に取って

カラマーゾフと共に

〈ウィロビー卿ご帰還〉という

ダウランドのリュート二重奏曲を

演奏しています。

 

 

曲間で

原盤ライナー小冊子に

写真が掲載されている

ダウランドが

ロバート・セシル卿に送った手紙の

一部が朗読されており

独特の雰囲気を醸し出しています。

 

こちらの記事によれば

 

 

ダウランドの手紙の

朗読を挿入することは

賛否両論あったようです。

 

個人的には

日本に紹介されることがない

と思われる貴重な資料(史料)が

その一部とはいえ読めるなんて!

という驚きと嬉しさがありますね。

 

 

収録曲は

全てダウランド

というわけではなく

1曲だけ、ロバート・ジョンソンという

同時代のリュート奏者の曲が

歌われています。

 

スティングはライナーで

私は、ダウランドがこの歌曲を好んだかどうかについての意見を何ももっていないが、私は好きだ。(今谷和徳訳)

と書いていますけど

これではこの曲を入れる経緯が

よく分かりませんね。

 

 

ロバート・ジョンソンは

宮廷リュート奏者

ジョン・ジョンソンの息子で

父親の歌詞に息子が曲をつけた

ということらしい。

 

ジョン・ジョンソンが亡くなった際

自分が宮廷リュート奏者になれる

とダウランドは考えたようですが

なぜか選ばれませんでした。

 

そういう経緯というか

因縁があることと

何か関係があるのかも

しれませんけれど。

 

 

自分は洋楽には疎く

ラジオから流れてくる曲を

耳にしてきた程度なので

スティングについてはもちろん

彼がヴォーカルを担当していた

ポリスについても

よく知りません。

 

スティングの声についても

まったく無知だったわけですが

今回のアルバムを聴いて

濁声だったのでびっくり。

 

スティングの声域は

テノールだそうですけど

クラシックの方のテノールと

大きく異なります。

 

だから違和感を覚える

といえば覚えるんですけど

ただし2回目からは

慣れちゃいました(笑)

 

 

2回目に聴いて気になったのは

ギター演奏でよく

キュッと鳴るのを聴きますけど

あの音(フィンガーノイズ、

フィンガリングノイズ)がすること。

 

リュートも撥弦楽器とはいえ

アコースティックギターのように

キュッと鳴る演奏を聴いたのは初めて。

 

あえてフィンガーノイズを拾うように

録音したということでしょうけど

なんだか不思議な感じが

したことでした。

 

 

有名な〈流れよ、わが涙〉も

スティングのソロ

カラマーゾフのリュート伴奏で

歌われています。

 

 

「動画を再生できません」

と出ますので、念のため以下に

アドレスも貼っておきます。

 

 

スティングが歌うのを聴いて

男声のソロで歌われる

〈流れよ、わが涙〉は

珍しいんじゃないかと思い

YouTube で検索してみたら

カウンターテナーが歌っているのを

たくさん見つけたのでした。

 

 

ちなみに

今回のアルバムのジャケ写を

どこかで目にしたことがあるなあ

と思って確認してみたら

『レコード芸術』の

2021年6月号でした。

 

『レコード芸術』2021年6月号

(音楽之友社、70巻6号、通巻849号)

 

越境古楽の資料がないかな

と思って検索して

買ったものですけど

買った当時はダウランドに興味がなく

そういうのもあるのかあ

と思った程度だったのが

今となっては微笑ましい。( ̄▽ ̄)