先日、横浜で
塾の会議があって
それに遅刻したことは
前にも書いた通りです。
その時
開始時間を勘違いしてて
まだ余裕があると思い
御茶ノ水のディスクユニオンに
立ち寄ってたんですが
その際に見つけたのがこちら。
(RVC株式会社 R32E-1052、1987.7.21)
録音は1985年11月、
スイス・ローザンヌ地区の自治体
エパランジュ Épalinges の
大ホール Grande salle で
行われました。
演奏は
ミシェル・コルボ指揮
ローザンヌ市立歌劇場合唱団
ローザンヌ器楽アンサンブル。
ローザンヌ器楽アンサンブル
という名称の後に
わざわざ「(古楽器)」と
補足されていて
びっくりしたんですが
Wikipedia によれば
いつも必ず古楽器を使用するとは
限らないようです。
ソリストは
ディドー:テレサ・ベルガンサ
エネアス:ペル=アルヌ・ヴァールグレン
ベリンダ:ダニエル・ボルスト
第2の女:フランソワーズ・デタンベール
女魔法使い:グレニス・リーニス
第1の魔女・精霊:ティティアナ・ソジャ
第2の魔女:アレクサンドラ・パパドジキアコフ
水夫:ライナルド・マチアス
ダニエル・ボルストは
キャップ(オビ、タスキ)を見ると
「ホルスト」とありますが
これは誤植です、念のため。
それにしても
ベルガンサの名前を
ここで見るとは
思いもよりませんでした。
本盤は
皆川達夫『ルネサンス・バロック名曲名盤100』
(オンブックス、1992)の最初の版にあたる
『バロック名曲名盤100』第14刷(同、1988)で
アンドルー・パロット指揮盤(旧盤)に
準ずるものとして
あげられている1枚です。
『バロック名盤名曲100』
初版(1977)の時点では
本盤はまだ出てませんでしたから
のちに加えられたものですね。
ちなみに
『バロック名曲名盤100』第14刷では
リリース元がBMGビクターと
なっていますけど
RVCはBMGビクターの前身です。
Wikipedia によれば
1987年にBMGビクターに
事業を譲渡したそうですけど
1987年にすぐさま発売元表示が
変わったわけではないようですね。
いずれにせよ
翌1988年には発売元が完全に
BMGビクターになっていたでしょうから
『バロック名曲名盤100』の表示は
間違いではないわけです。
コルボといえば
バロックの声楽曲の演奏で
よく知られている指揮者ですし
当ブログでも何回か紹介しましたが
まさかパーセルのオペラを
指揮しているとは
思いもよらず。
というか
当方がパーセルに
関心が向いている時
ちょうど見つけるとは
思いもよらず
びっくりでした。
もうひとつ
紹介した記事でも書いた通り
第2幕第2場の最後の音楽が
伝承譜では欠けてるんですけど
それをどう処理しているかという点で
コルボは演奏せずに済ませていて
これにはびっくりでした。
楽譜がないのだから
想像で補うわけにはいかない
という立場なんでしょう。
それはそれで
ひとつの見識ではありますし
追加音楽がなくとも
話のつなぎに不自然さは
感じませんけれども。
演奏自体は
近年の古楽器演奏に慣れていると
古めかしく感じられます。
特にベリンダが
おおむね、どの歌でも
ゆっくりと歌っているあたり
個人的にはどうも肌に合わない。
ことに
第2幕の森の場面で
嵐が近づいているから城へ
と歌うところは
タメがありすぎでしょう。
ベリンダは
ディドーの落ち込みがちな気を
引き立てる役割もあるので
もう少し軽快さがほしいところです。
ベルガンサのディドーは
ベルガンサだと構えて
聴くためでもありましょう、
さすがだというか
なかなか落ち着きがあり
いい感じだと思った次第です。
最後のディドーのアリアは
Remember me の
2度目の Remember の繰り返しが
ちょっと力みすぎかも
と思いましたけど。
というわけで
古楽器演奏に慣れた人には
物足りなさを覚える演奏
ということになるかと思います。
ベルガンサのディドーが聴きたい
という人であれば
オススメかもしれません。
ライナー解説と対訳は佐藤章で
第2幕第2場の処理がどうの
といったような記述はなく
通り一遍のことしか
書かれていないのが
物足りないところです。
演奏者の紹介も
ベルガンサだけで
コルボについて
一言も書いていないのは
現在の目からすると解せません。
コルボが指揮した
モンテヴェルディのオペラや
マドリガーレ、宗教音楽の録音などは
当時すでにリリースされていたかと
思うんですけどね。