以前にもちょっと書きましたけど
今年の1月27日から31日までの
NHK FM《古楽の楽しみ》では
ヘンリー・パーセルが
メアリー女王のために書いた曲を中心に
パーセルの劇音楽、アンサンブル曲
鍵盤作品などを紹介してました。
自分は寝てたか寝落ちしたかで
すべて聴けておりませんが
あとで公式サイトにアップされた
楽曲情報で確認したところ
鍵盤独奏曲は全部で6曲
流れたようですね。
そのうちの5曲が
グスタフ・レオンハルトの演奏で
全てフィリップス・レーベルの
ディスクから採られたものです。
その一部は
先にご案内のテルデック盤にも
収録されていますが
自分は幸い
フィリップス盤は全て
リリースされたときに
購入済だったので
放送された演奏を
聴くことができるのでした。
今回ご案内するのは
そのフィリップス盤になりますが
その前にまず、放送で流れた鍵盤曲を
以下にリスト・アップしておきます。
▶︎第2回(1月28日放送)
グラウンド ニ短調 Z.D222
〈Philips 426 352-2〉
シファーチェとの別れ Z.656
〈Philips 446 000-2〉
組曲 第7番 ニ短調 Z.668 からホーンパイプ
*この曲のみ演奏はコリン・ティルニー
〈ARHIV 447 154-2〉
▶︎第3回(1月29日放送)
新しいグラウンド ホ短調 Z.T682
〈Philips 446 000-2〉
レッスン組曲 ハ長調 Z.665 からジーグ
〈Philips 446 000-2〉
▶︎第4回(1月30日放送)
組曲 第2番 ト短調Z.661
〈Philips 446 000-2〉
山カギカッコ内は
取り上げた楽曲を収録した
CDの規格番号です。
コリン・ティルニーの演奏が
スピネットで弾かれている以外
全てチェンバロ(ハープシコード)による
演奏となります。
上のリストで
規格番号 Philips 426 352-2
となっているCDと同じCDが以下の
《アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳〜
バロック・チェンバロ・リサイタル》です。
(日本フォノグラム PHCP-9046、1993.5.26)
原盤のタイトルは
Harpsichord Recital ですから
《バロック・チェンバロ・リサイタル》
が原意に近い邦題になります。
フィリップス スーパー・セレクション
という日本オリジナル? シリーズの1枚で
明らかに再発盤ですけど
《古楽の楽しみ》の
サイトに書かれていた企画番号は
初リリース盤のものだと思いますが
そちらを見たことがありません。
「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳」
という副題がついているのは
そちらに載っている
ゴルトベルク変奏曲のアリアと
メヌエット ト長調 BWV.anh. 114
メヌエット ト短調 BWV.anh. 115 が
演奏されているからでしょう。
(anh. は「追加」という意味です)
本盤には他に
《ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのための
クラヴィーア小曲集》収録の
〈9つの小さなプレリュード〉から
BWV.924、927、940、929が
抄録されてますので
アンナ・マグダレーナばかり目立たせるのは
どうかと思いますけど
販売戦略としては分からなくもなく。
ちなみにバッハは他に
《平均律クラヴィーア曲集》第2巻から
プレリュードとフーガ ホ長調 BWV.878 が
収録されています。
録音は1988年9月12〜13日。
使用楽器は
ジョエル・カッツマン Joel Katzman
(Joel は「ヨエル」と読むのかも)
によるコピー楽器で
何のコピーなのかは不詳。
こちらの盤は
皆川達夫が『ルネサンス・バロック
名曲名盤100』(音楽之友社、1992)で
ヨハン・クーナウ作曲
〈ダヴィデとゴリアテの戦い〉の
ジャン=パトリス・ブロスの演奏を紹介した際
次のように書かれていました。
LPにはオランダの奏者レオンハルトによる《聖書ソナタ》全曲がありました。(略)演奏の質からいえば、レオンハルト盤の方がブロス盤よりはるかに上位になります。ただし《聖書ソナタ》の第六番〈ヤコブの死と埋葬〉だけは、レオンハルトの演奏をCD(『バロック・チェンバロ・リサイタル』、フォノグラムPCD二九)で聞くことができます。(p.207)
規格番号が異なることからも
ここで言及されているのが
初リリース盤だと分かります。
ちなみに
先日手に入れた第5刷本では
「フォノグラムPHCP3929」
と変更されてましたので
今回のスーパー・セレクション盤の前にも
再リリースされていたことが分かります。
スーパー・セレクション盤を買ったのは
皆川達夫がふれていたからなのか
ふれていたことを
覚えていなかったけれども
新譜で見つけて
レオンハルト推しだったから
即行で買ったのだったのか
今となっては記憶の彼方です。
ちなみに
この時点ではLPしかなく
それも廃盤だったレオンハルト盤は
1998年になってようやく
CD化されており
当ブログで以前ご案内済みです。
それはともかく。
今回の主役であるパーセルの曲は
グラウンド ニ短調 Z.D222〈祭壇を飾れ〉
グラウンド ハ短調 Z.D221
組曲 第6番 ニ長調 Z.667
の3曲が収録されています。
番号にDとあるのは
前回にも書いた通り
疑作であることを示しています。
グラウンド ニ短調は
メアリー女王の誕生日のためのオード
《この祭典を祝え》Z.321 第6曲目の
メゾソプラノ独唱アリアを編曲したもので
そのアリアのタイトル(出だしの歌詞)が
副題になっているわけです。
《古楽の楽しみ》のパーセル特集で
オード《この祭典を祝え》は
取り上げられませんでしたし
それを補足するという意味もあって
選ばれたということになりましょうか。
(実際のところは分かりませんけど)
ライナーには何も書いてありませんが
グラウンド ニ短調の作品番号に
Dが付いているということは
パーセル自身による編曲かどうか
疑わしいということでしょうかね。
やはりDが付いている
グラウンド ハ短調については
かつてはウィリアム・クロフト作曲
と思われていたものだそうで
現在ではおそらくパーセルではないか
と考えられているのだと
ライナーには書かれています。
(執筆はライオネル・ソールター。
翻訳は佐々木節夫)
他に
ルイ・クープラン
ドメニコ・スカルラッティ
ジョゼフ=ニコラ=パンクラス・ロワイエ
ジョセフ・ボダン・ド・ボワモルティエ
ピエール・フェヴリエ
ジャン=フィリップ・ラモーの曲が
それぞれ1曲ずつ
(スカルラッティのみ2曲)
演奏されています。
フェブリエを除けば
今の自分なら
そこそこ聴いており
知っている人ばかりなのですが
本盤を買った当時の自分にとっては
馴染みの少ない作曲家ばかりで
(特にフランス勢がそう)
各曲が短いということもあり
(1分半からせいぜいで7分。
クーナウだけ16分以上もあるw)
リピート率はさほど
高くなかったかもしれません。
でも、こうして
パーセル特集絡みで
記事が書けましたから
買っておいた甲斐があった
ということになりますかね。
長くなりましたので
《古楽の楽しみ》
パーセル特集で使用された
もう1枚のレオンハルト盤については
また記事を改めて
紹介することにします。
To be continued. . .