ヘンリー・パーセルに興味を持ち
いろいろと録音を漁っていると
グスタフ・レオンハルトが
演奏したり指揮したりしているCDで
未入手のものがあることに
気づかされました。
先に当ブログで取り上げた
(メアリー女王のためのオード集)も
その1枚です。
レオンハルトは
1960年代後半に
テルデックのシリーズ
《ダス・アルテ・ヴェルク》で
パーセルを録音したLPを
2枚ほど出していました。
そちらはCD化された際に
輸入盤を買ったりもしてましたが
1990年代に出した3枚について
ほぼスルー状態。
その内の1枚は
鍵盤楽器のための曲集で
そちらは出た当時
買ってるんですが
残り2枚は声楽曲であり
出た当時は声楽曲に
今ほど関心が持てなかったので
スルーしてしまったかと思われます。
その声楽曲集の1枚が
《メアリー女王のためのオード集》
だったわけですけど
もう1枚が今回ご案内の
こちらのCDです。
(Sony Records: SRCR-9984、1995.11.22)
ソニー・クラシカルの
ヴィヴァルテ vivarte という
古楽専門レーベルから
リリースされた1枚です。
録音は1994年1月5〜7日に
オランダのハールレムにある
ドープスヘジンテ協会で
行なわれました。
原盤のリリースは
1995年の2月21日で
同年の9ヶ月後に
日本盤が出たことになり
当時いかに古楽ブームだったかが
偲ばれるように思います。
演奏は
グスタフ・レオンハルト指揮
ピリオド・インストゥルメント・アンサンブルと
ゲルハルト・シュミット=ガーデン合唱指揮の
テルツ少年合唱団。
ソリストは
デイヴィッド・コーディアー(A)
ジョン・エルウィズ(T)
ペーター・コーイ(B)
ハリー・ヴァン・デル・カンプ(B)で
器楽演奏者以外に
女性は1人もいないあたり
作曲当時の事情を
偲ばせなくもなく。
ピリオド・インストゥルメント・アンサンブル
というアンサンブル名には
この場限り感が漂いますけど(笑)
マリー・レオンハルトが
第1ヴァイオリンで
他のヴァイオリニストの中に
木村三穂子と山縣さゆりという
2人の日本人が加わっていて
皆川達夫的にいえば
注目されますね。
それにしても
テルツ少年合唱団といえば
レオンハルトがアーノンクールと共に
バッハ・カンタータ全集を
録音していた頃
起用していた少年合唱団で
メンバーは異なるでしょうけど
同じ合唱団との録音というあたりには
感慨深いものを感じさせられます。
原題の Anthems & Hymns を
タスキ(オビ)とジャケ背では
「アンセムと讃歌集」
と訳していますが
ライナー小冊子だと
「アンセムと宗教歌曲」
となっています。
佐藤章の解説によれば
Anthem については
「英国国教会の礼拝で歌われる、
英語の聖書または祈禱書の一部、
あるいは宗教詩を歌詞とする合唱曲」
と説明されていますが
Hymn[ヒム]について
はっきりした説明が見当たりません。
パーセルの Hymn のほとんどが
1688年と1693年に出版された
2巻に曲集にまとめられているそうで
そこでの説明をまとめると
主に家庭的な集まりで歌うために
作曲された宗教的な内容の歌曲
ということになりましょうか。
ですから
乱暴に意訳すれば
教会と家庭における宗教曲集
という意味になりますかね。
なお
現在、アンセムには
国歌は National Anthem といい
応援歌は Sports Anthem, Stadium Anthem
などということからも分かるように
特定の集団を讃える
というニュアンスもありますが
当時はもちろん
神や聖人に対する讃歌
ということになります。
アンセムは
管弦楽が加わるだけでなく
少年合唱も加わるので
聴きごたえがあります。
一方のヒムは
通奏低音のみの伴奏で
独唱ないし重唱で歌われ
歌詞の方もいわゆる
形而上詩人の詩に基づくので
実に渋い。
これらを
落ち着いた雰囲気を漂わせて
実に端正に聴かせるあたり
レオンハルトの真骨頂
といえるでしょうか。
レオンハルトは指揮の他に
マシュー・ロックの
〈3つのヴォランタリー〉と
作者不詳の〈2つのヴァース〉という
オルガン独奏曲も演奏しています。
これがまた
オルガンの響きが
落ち着いていて端正で
実にいいんですよね。
深夜に聴いていると
じみじみとして
敬虔な気持ちになりますが
リリース当時
新譜で買って聴いたとしても
さほど感銘を受けず
1度、聴いただけで
死蔵してたかも知れません。
その意味では
自分にとって
今が聴きごろの1枚。
レオンハルト推しとして
買い逃していたのは
遺憾ではありますが
いいタイミングで聴けて感謝
といったところです。