アルス・ノヴァ演奏の
ピエール・ド・ラ・リュー
《レクイエム》を紹介した際に
『ルネサンス・バロック名曲名盤100』
(音楽之友社、1992)における
皆川達夫の評言を引きました。
ド・ラ・リューの項目で皆川は
アルス・ノヴァの演奏に続いて
次のように書いています。
クレマン・ジャヌカン・アンサンブルによる演奏は誠実に歌ってはいますものの、すこし粗く不自然な表現が目立ちます。この連中は腕、いや喉は十分にたつのですが、あまりにも喉にものを言わせすぎて、あざとくオーヴァーな音楽を作ってしまう嫌いがあります。時おりオルガンの伴奏を付しているのはこの《レクイエム》の音域からいって当然の処置でしょう。
このように
皆川先生の不興? を買った
ディスクがこちらです。
《ラ=リュー:
ミサ「ロム・アルメ」/レクイエム》
(ANFコーポレイション ANF-2135HMA、1990)
原盤レーベルは
ハルモニア・ムンディ・フランスで
録音は1988年11月です。
邦盤リリース年については
別冊解説書のマルCに拠りましたが
リリース月日までは書かれてません。
これまた
ANFコーポレイション盤あるある
だったかも(苦笑)
なお
「ラ・リュー」ではなく
「ラ=リュー」というふうに
ダブル・ハイフンになってますけど
Pierre de La Rue と
La の頭が大文字であれば
慣例としてダブル・ハイフンにする
というルールがあるのかどうか
自分的には初めて見たかと思うので
ちょっと判断がつきません。
宿題ということで。(^^ゞ
本盤は昨日(木曜日)
横浜での採点の帰りに寄った
同地のディスクユニオンで
見つけたものです。
水曜日にも
目にしてたと思うんですが
その際には気にとめず
スルーしたようですね(苦笑)
皆川達夫は
「すこし粗く不自然な表現が目立ち」
「あざとくオーヴァー」だと
書いていますけど
どこがどう不自然でオーヴァーなのか
素人耳にはよく分からず。
ですから
普通にさらっと聴き通せます。
クレマン・ジャヌカン・アンサンブルは
フランスの男声アンサンブルで
メンバーの一人に
カウンターテナーというか
本盤ではオート=コントル hautes-contre
と記される、古楽ファンにはお馴染みの
ドミニク・ヴィスがいます。
ぼーっと聴いていると
女性がいるんじゃないか
と思うくらいですが
オート=コントルについては
こちらのブログが参考になりました。
ロム・アルメ L'homme armé
というのは「いくさ人」
(これは皆川の前掲書での訳)
すなわち「戦士」(こちらは本盤の
別冊解説書の今谷和徳訳)という意味で
当時の世俗歌曲のタイトルです。
同曲の旋律をパラフレーズして
多声部のミサ曲に仕立てているため
「〈ロム・アルメ〉の旋律に基づくミサ曲」
という意味合いで
Missa "L'homme armé"
という通称になるわけです。
歌詞は普通のミサ曲と同じで
キリエ、グローリア、クレド
サンクトゥス、アニュス・デイという
五つの通常文で構成される
いわゆる通作ミサ曲となります。
それにしても、ここにきて
『ルネサンス・バロック
名曲名盤100』に紹介されている
ド・ラ・リューの古楽演奏盤が
一気に揃ったというのも
感慨深いものがありますね。
皆川本にあげられている
ド・ラ・リューの残り1枚は
モダン楽器によるもので
しかもLP盤。
どこかで見たのか
これも確かCDになっていたような
そんな気がするんですけど
勘違いでないのだとしたら
そのうちまた見かけるかも。
ただ、それがまた
「幾星霜」ということに
ならなければいいんですけどね。( ̄▽ ̄)